第36話 無邪気さは時に、自分の感情すらも隠してしまう
こんにちは!すいません!
明日葉晴です!
毎回頑張ると言いながら、毎回遅れる時間が長くなるのは如何なものかと思います。
自分のことですがホントごめんなさい。
今回も一話完結です。
久しぶりにシリアス面があります。
前半と後半で落差が結構あるのでご注意を。
それでは本編をどうぞ!
私は昔から幽霊が視える。
「アリさんこちらっ!手の鳴る方へーっ!」
いや待て。なんだそれ。
「おー…!いいぞいいぞぉ!どんどん運びたまえー!」
出鼻挫かれた感が半端ないけど、なんか元気な女の子の幽霊っぽい子が公園でめっちゃはしゃいでる。はしゃぎ方がおかしい気がするけど、とりあえず声を掛けなきゃ始まらない。
「ねぇ、そこの君、生きてる!?」
「死んじゃった!」
「元気だね!?」
◯
公園だと人の目が気になるから、ひとまず神社に移動してもらおうと説得に取り掛かった。その際にひと悶着あって、結局アリがエサを運び終わるまで待つことになった。幸いにも、公園には私達以外誰もいない。
「その…アリ見てて楽しい?」
「すっごい楽しいー!」
わぁ…すっごい良い笑顔…
神社に連れて行こうとした時は物凄い潤んだ目でアリを見たいと言われた。今はそんな様子は見る影もなくて、楽しそうな様子でアリを見てる。
アリ見て楽しいかな…?私が子供の時は、する事無さすぎて見てた記憶あるけど…思い出したら悲しくなってきた…
「何が楽しいのかな?」
「ちっちゃいところ!」
まぁ確かにちっちゃいこの子を見てるのは、かなり面白いけど…
「ちっちゃくてー、一生懸命でー、なんか邪魔したくなるところ!」
「ん…!?」
おっと?ちょっと待って?最後不穏なことが聞こえたけど、聞き間違えかな?
「ごめん、最後なんて言った?」
「ろ!」
うん。そうじゃない。
「アリを見てて何が楽しいか、もう一度聞いていいかな?」
「ちっちゃくて、一生懸命で、なんか邪魔したくなるところ!」
「そ…そっかぁ…」
聞き間違えじゃなかった…
物凄い良い笑顔で宣言した女の子。無邪気な分、怖いのは気のせいだろうか。多分気のせいじゃない。
ただの不思議ちゃんかと思ったけど…とんだ危険人物予備軍だよ…普通の子供の頃って、みんなこんなもんなの…?
子供の時に普通じゃなかった自覚のある分、普通の子供の基準がわからない。だからこの子が普通かわからない。けど野放しにするのは危険な気がする。
いや…幽霊だから今さら何が出来るわけでもないけどさ…でもつい思っちゃったよね…
私が最近の子供の事情について考えていると、その間にアリの観察が終わったのか、女の子がトテトテと私の方に歩いてきた。少しだけびくっとして一瞬身構えたのは内緒だ。
「ばっさー!ってやってもなにも起きなかった…」
「………………神社行く?」
「うん…」
『ばっさー!』の詳細は聞かずに、私は女の子に神社に行く提案をした。決して怖かったわけじゃない。時間がもったいなかっただけ。信じて欲しい。
まぁ…少しだけ何かされるかも…?とは思ったけどさ…
そんな私の内心はさておき、私は女の子を連れて神社に向かうのだった。
◯
神社に連れてくる間に機嫌を直したらしい女の子と、私は視線を合わせるように向かい合った。ちなみに来る途中、何かにつけて女の子がふらふらしていてそれを止めるのがかなり苦労した。
「えっと、そしたらまず君のお名前を教えてもらっていいかな?」
「杵島菜希!」
「私は三葉茜。よろしくね、菜希ちゃん」
「うん!茜お姉ちゃん!」
まずは自己紹介を促すと、菜希ちゃんは元気よく答えてくれた。曇りのない良い笑顔なんだけど、公園での発言を考えるとなんとなく身構えてしまう。次にどんな言葉が出てくるか予想がつかないからだ。
「綺麗な名前だね!」
「うん、ありがと。菜希ちゃんもかわいい名前だよね」
「菜希、赤とかそういう色好き!」
「そ…そうなんだ」
なんだろ…ちょっとだけ菜希ちゃんの言葉を素直に受け取れない。公園の発言を引っ張って、何となく裏があるように勘繰ってしまう。
「それで…菜希ちゃん、あそこでなにかしたかったのかな?」
「んー…死んじゃった後に、気付いたら公園にいたんだー。暇だったからアリ見てたら茜お姉ちゃんすぐに来たんだよー」
てことは、幽霊になってすぐってことか…まだ一応余裕があるみたいだね…
私がそれとなく未練の有無を聞くと、菜希ちゃんは私の意図とは少しだけずれたことを言った。それでも収穫はあった。まだ幽霊になって間もないのなら、考える余裕は充分にある。
「じゃあ、菜希ちゃんは何かお願い事とか、どうしてもしたいこととかあったりするかな?」
「んー…菜希、お外で遊びたかったから、お願い事叶ってるし…」
「え…?」
なんか今、さらっとヘビーな雰囲気じゃなかった?
菜希ちゃんの呟きに私は戸惑った。未練が分からないタイプかって思うよりも先に、菜希ちゃんの事情が深刻なものなんじゃないかって言う心配の方が大きい。かと言って深く掘り下げるのも、傷付けてしまいそうで踏み出しにくい。
「だから…んー…菜希、いっぱい遊びたい」
「菜希ちゃん…わかった!私とたくさん遊ぼっか!」
「うんっ!」
ひとまず、菜希ちゃんのこの輝く笑顔にどんな事情があろうが関係ない。なんであれ幽霊なのだから、成仏させないわけにはいかない。それを思い出した。
「それじゃあまず、何して遊びたい?」
「うー…ん…おにごっこっていうのやってみたい!」
「おにごっこかぁ…」
私は菜希ちゃんに何をして遊びたいかを聞いた。すると菜希ちゃんは少し考えたあとで、オーソドックスな遊びを提案してきた。それに対して私は少しだけ悩む。
菜希ちゃんは私に触れないし、私も菜希ちゃんに触れないから難しいなぁ…
「菜希ちゃん、おにごっこって相手にタッチしないと出来ないんだけど、私も菜希ちゃんも、お互いに触れないから難しいよ?地面も立ってるようで実際には触ってる感じしないでしょ?」
「う?んー…ホントだ」
私が説明すると、菜希ちゃんは公園で『ばっさー!』を出来なかったのを思い出したのか、地面を見つめながら足踏みしていた。それで実際に地面に立っているわけではないと早くも理解したみたいだ。
「みてみてー!もぐらっ!」
「ぶっ…!」
地面を見ていた菜希ちゃんが、ハッとしたような顔をしたと思ったら、突然地面に顔半分を出した状態で埋まった。その光景に私は思わず吹き出してしまう。幽霊が壁とかを通り抜けられるのは知っていたし、多分他の幽霊も菜希ちゃんみたいに出来るんだろうけど、地面も通り抜けられる発想は見るまで思いつかなかった。
私もまだまだ常識に縛られているとこあったのかぁ…
そんな新たな発見をしみじみと思いながら、菜希ちゃんの様子を見ていると、菜希ちゃんは完全に地面に埋まっていった。
「おー…!なんにも見えない!」
「そっかー…」
なんのためらいもなく地面に埋まっていった菜希ちゃんに、驚きと言うか、呆れと言うか、微笑ましさと言うか、なんとも言えない感情が渦巻いた。ついでに言えばまた新しい発見をさせてくれたことに感心もある。
地面に埋まってても、普通に声が届くんだなぁ…
聞こえないわけでも、籠っているような声でもない、普通にクリアな音声だ。多分声の届き方も違って、霊的ななんかなんだろう。でも私が考えたところで答えもわかんない。そもそも幽霊に常識が届かないから、私はそこで考えることを止めた。
「ばぁ!」
「うぉぅっ!?素でびっくりした…」
「あははっ!大成功!」
私が考え事を止めると同時に、見計らったように私の足下から私に重なるように菜希ちゃんが顔を出してきた。流石に心臓に悪い。その後にすすすっと私の後ろに向かって浮上してきた。
なんだろ…今までの誰よりも幽霊っぽい動きしてる気がする…
「どお?驚いた?」
「お化け屋敷より驚いた」
「やった!」
なんの疑問もなさそうにふよふよと周囲を飛び始めた菜希ちゃん。適応力が高すぎる。そう言えば幽霊がちゃんと飛んでるところって、双子ちゃんとOLさんだけだ。そう考えると女性の方が適応力が高いのだろうか。
何て言うか…幽霊をエンジョイしてるなぁ…
菜希ちゃんと今までの幽霊が一番違うとこは、幽霊になった悲壮感と言うか、死んだことに対して表面上なにも思っていなさそうなところだ。そこが一番気になる。
厳密には研究家の人もそうだったけど…けどだからこそ、なんであれ未練は必ずある。
「ねぇねぇ、幽霊しかできない遊び、茜お姉ちゃん他になにか知らない?」
「幽霊しか出来ない遊び…?うーん…」
私が菜希ちゃんについて考え事をしていると、菜希ちゃんは飛ぶことに慣れたのか飽きたのか知らないけど、ゆったり飛んだまま私に近付いてきた。私は菜希ちゃんの要望に応えたいけど、ついさっき自分にまだ常識があったことに驚いていたとこだ。幽霊にしか出来ない遊びはパッと思いつかない。
多分…菜希ちゃんの方が思いつきやすいだろうな…
「私は幽霊になったことないから、ちょっと思いつかないかな。菜希ちゃんはなにか思いつかない?」
「んー…あっ!」
「お?」
私は菜希ちゃんに自分はお手上げだと言ってから尋ねた。菜希ちゃんは少しだけ考えた様子を見せると、なにか思いついたようにハッとした。そして浮いたまま丸まって、揺れながら上に登って行った。ずいぶんと器用な。
「風船ごっこ」
「……楽しい?」
「………思ったより楽しくなかった…」
「残念だったね」
しばらく揺れながら上昇した後、すぐに体勢を戻して私の近くまで降りてきた。本気で楽しくなると思っていたのだろうか、感想を漏らした菜希ちゃんは少し落ち込んだ様子だ。ちょっとかわいい。
でもなんとなく方向性は見えたかも…
幽霊しか出来ない遊びは、幽霊しか出来ないことを中心に考えればなんとなく思いつくのかもしれない。そう思って、私は少しだけ考え込んだ。
「浮ける…すり抜ける…後は…」
「透明になれる!」
「なれるの!?」
「なれないの?」
「いや…知らないけど…」
私が考え事を呟くと、菜希ちゃんがそれを拾って驚くことを言ってきた。私の知らない幽霊の能力があるのかと思って驚いたけど、どうやら菜希ちゃんの当てずっぽうだったみたいだ。いろんな方向で心臓に悪い。
「むむむぅ…」
「えっ…?やるの…?」
「むむー…!」
「おおっ!?」
幽霊が透明になれるのか、私が知らないと言うのを菜希ちゃんが理解すると、突然唸り始めた。私が戸惑っているうちに、菜希ちゃんが震え始めた。まさか本当に出来ると言うのだろうか。
「むーっ!!…どおっ!?」
「……普通に視えるよ」
「そっかー…」
「残念だったね」
思い切り気合の入った声の後に、ドヤ顔で私に声を掛けてきた菜希ちゃん。残念なことにばっちり視えている。そもそも普通は視えない幽霊なのだから、今更透明になれない気がする。そこまで思って私はふと仮説が一つ思い浮かんだ。
「透明になれるんじゃなくて、普通の人にも視えるようになるとか?」
「え?菜希、茜お姉ちゃん以外の人に視えないの?」
「えっ?知らなかった?」
「うん…知らなかった…」
そう言えば、菜希ちゃんは幽霊になったほとんど直後に私に会ったんだった。神社に来る道中も幸い人には会わなかったし、勘違いするのも無理はないかもしれない。
「むむむ…!」
またやるのか…
私の言葉を聞いた菜希ちゃんは、再び気合を込めるような雰囲気を出した。
「むーっ!……どおっ!?」
「いや…分からないかな…?」
「そっか!じゃあ確かめる!」
「確かめるって…ちょっ!?」
またしてもドヤ顔で聞かれても、私には違いが全く分からない。そう言うと菜希ちゃんも納得した後に駆け出した。と言うか飛んでいった。私は理由も聞けず、止めることも出来ずに菜希ちゃんをただ追いかけるのだった。
◯◯◯
菜希ちゃんを追いかけるためにすぐさま神社を下りたけど、思いの外早く菜希ちゃんが見つかった。通行人に向かって必死に手を振っている姿を見つけることが出来た。なんとなく、人に構って欲しそうにする犬のように見える。可愛い。
けど、他の人がいる中で菜希ちゃんに声掛けるわけにもいかないしなぁ…
しょうがないから神社に上がる階段のところで、ぼおっと菜希ちゃんの様子を見つめていた。通行人が来る度に次々に手を振っていく。諦めずに何度もトライしているけど、一人目がダメな時点で普通に視えないんだと思う。私の仮説はどうやら無理だったらしい。
「ダメだった…」
「よしよし。一回神社に戻ろっか」
「うん…」
ようやく諦めがついたらしい菜希ちゃんが落ち込んだ様子で私の方に歩いてきた。私は周りに人がいないことを確認してから菜希ちゃんを慰めて、また神社に戻るように促した。
「さて、じゃあ何して遊ぼっか?」
「んー…」
神社に戻って、私は殊更に明るい声で菜希ちゃんに質問した。けれど、菜希ちゃんはまだ実験が失敗したのを引きずっているのか、あまり元気がなさそうだ。
うーん…すぐに切り替えると思ったけど…他の人に視えないのが余程ショックだったのかな…?
「菜希ちゃん、どうかしたの?」
「悲しいの…」
「何が悲しいの?」
「みんな菜希に気付いてくれないのが、悲しいの…」
「菜希ちゃん…?」
思いつめた様子の菜希ちゃんに私は理由を尋ねると、今までで一番落ち込んだ様子で菜希ちゃんが呟いた。
「みんな気付いてくれない。菜希がおうちで何をしても、誰も助けてくれない。おうちにいても、幽霊になってお外に出ても、なにも変わんない…」
「……」
菜希ちゃんの呟きに私は簡単に返事が出来なかった。ここで私がいるって言うのは簡単だけど、さっきまで人に無視され続けていた菜希ちゃんに、そんな簡単な言葉が届くとも思えなかった。
「菜希ちゃん、少しだけ休憩してお話しよっか」
「う…?」
私は賽銭箱のあるとこの階段に座って、菜希ちゃんを呼び寄せるように隣を叩いた。とりあえず意味が通じたのか、菜希ちゃんはゆっくりと歩いてきて隣に座った。
「私もね、小さい頃、沢山の人に無視されてたんだ。家族にも、同い年の子達にも」
「茜お姉ちゃんも…?」
「そうだよ」
私は軽く深呼吸をした後に、ゆっくりと自分の話をし始めた。同い年の子達にいじめられていたのは、美和は知っているだろうけど、家族に無視されていた時期があるのは多分知らない。このことを知っているのは二人。うち一人は幽霊で成仏していった。
「昔はね、幽霊と普通の人の区別が全然分からなくて、家族から見たら私がなんにもないとこに向かって話しかけてるから気味悪がってさ、そのうち相手にされなくなっちゃった」
一度病院にも連れていかれたことがある。その時の診断は、子供特有の精神病みたいなものと診断されて、時間が経てば治ると言われたのも覚えている。だから多分、両親は私が治っていると思っているだろう。
「そんなときにね、私を助けてくれたのは神様だった」
「かみさま…?」
「そう。まぁ自分で言ってただけだし、本当は幽霊だったんだけど、私にとっては神様だった」
さっき言った私の過去を知っている幽霊のことだ。私の目の前で成仏していった最初の幽霊。自称神様で私にとっても神様だ。
「だからね?今度は私が幽霊を助けたいの。私は菜希ちゃんも助けたい。だから絶対に無視することはしない」
「茜お姉ちゃん…」
「それに、もしも菜希ちゃんが生きていたとして、菜希ちゃんが酷い目に遭ってるって知ったら、私は絶対に助けに行くよ」
幽霊が視えるとか変な能力もないのに、無視されるのは理不尽だ。そんなの許しちゃいけない。ちょっと好奇心旺盛過ぎて、発言に闇を感じるけど、そんなの何もないとこに向かって会話を始めるよりよっぽどまともだ。
「もしも生まれ変わって、助けて欲しいって思った時、私を呼んで?絶対に助けに行くから」
「茜お姉ちゃんっ…!うわぁぁぁん!!」
「よしよし。大丈夫、大丈夫。もう一人じゃないよ」
私が宣言すると、菜希ちゃんは私に抱き着くように体勢になって泣き始めた。触れることはできないはずなのに、本当に抱き着かれているかのような位置だから驚いたけど、私も撫でるような仕草をした。そのまま、菜希ちゃんの身体が透け始めていく。
「茜お姉ちゃんっ!菜希、寂しかったっ!悲しかったっ!」
「うん。一人は寂しいし悲しいよね。頑張ったね」
「うんっ…!頑張った…頑張ったの…!」
「菜希ちゃん、お疲れ様。また、絶対、遊ぼうね」
「茜お姉ちゃん!ありがとっ!また、遊んでね!」
泣いている菜希ちゃんを慰めて、また遊ぶ約束を交わす。それに菜希ちゃんは、笑顔で答えてから光になって消えていった。それを見届けると、私は一息ついた。
はぁ…寂しい…かぁ…神様、別れもやっぱり寂しいですね…
最初の時から一向に慣れない、幽霊がいなくなった後の寂しさを感じつつ、私は家に帰るのだった。
第36話を読んで頂きまして、本当に感謝の念が絶えません!
今回は久しぶりに幼女です!
ついでに騒ぐだけのいつもとちょっと違って、前半騒いで後半はしんみりしました。
最近はしゃぎ過ぎていたのでクールダウンですね。
それと喋れない幽霊、千草ちゃんの話に出てきた神様について少々触れました。
正体は自称神様です。
まとまった話はまたいつか、小出ししつつ、そのうちどどんとしたいなって感じですね。
ここしばらくは遅れてばっかりなのに読んで頂いてる皆様には、限りない感謝を。
信用はないと思いますが、それでも次回は頑張りたいと思います。
ブクマして頂いてる皆様!
そうでない皆様!
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
信用なくても予告しますが、次回は6/21予定です!
気が向けばでいいので、次回もお付き合い頂ければ幸いです!




