第26話 狭き門を通ろうとする人は、それだけで心が強いと思う
こんにちは!
明日葉晴でっす!
ひっさしぶりのっ!日常?回です!
長編書いてたら一話完結の書き方を若干忘れてました…
ついでに言ってしまえば、前回とのギャップがエグイですね。
そんなわけで、本編をどうぞっ!
私は昔から幽霊が視える。
「あー、あー。んんっ…」
今も、ツインテールで小顔のかわいらしい同い年くらいの幽霊らしき女の子が、なんか喉を気にしてる。
「あー。あー!あー…」
風邪かな…いや、幽霊に風邪ってあんの…?
まぁこうして様子を視ているだけじゃ何も進展しないから、声を掛けてしまおう。
「あのっ!そこの人っ!生きてるっ!?」
〇
確認は良好。案の定幽霊だった女の子を連れて、ひとまず神社に移動した。道端で一人で話している危ない人にはなりたくない。
「さて、私は三葉茜。あなたは?」
ひとまずの自己紹介。そういうのは早い方がいい。ファーストコンタクトはしっかりするべきだ。そう思って尋ねると、女の子は二度ほど咳払いして姿勢を正した。
「はいはーい!君にときめき、わたしにきらめき!思いを届けるマンスリー!煌月朱鷺でーす!」
「ぶっ…!!」
片手は挙げて、逆はマイクを持つように明るく自己紹介をした煌月さん。似合ってはいるけど、初対面で、いきなり、ハイテンションでやられたから思わず吹き出してしまった。
この子…思ったよりヤバい…?
「あー!笑ったなー!?ひどーい!ぷんぷん!」
いや、ぷんぷんって…実際に言う人いる?
久しぶりにキャラが濃いのに当たってしまったみたいだ。もうこの時点でかなり苦労することが予想できてしまう。主に人で。
「えっと…本名…?」
「本名だよ?」
コテンと首を傾げた煌月さん。可愛いんだけど、自己紹介のインパクトが強すぎてヤバい人にしか視えない。名前の件も疑わしいけど、そこを掘り下げても意味ないからもう無視しよう。
「えと…じゃあ…煌月さん…」
「だめだめっ!わたしのことは…ときりんって呼んで?」
「おっとぉ…!?」
もう…あれだね…うん…帰りたい…
予感は的中しそうだ。てか想像を超えそうだ。話が通じるのか心配になってきた。
「あー…あう…あ……とき…りん」
「はーい!」
「~~~っ!!」
羞恥心を押し殺して希望通り呼んであげると、元気よく甘えた返事をしてきた。私はそれに言いようのないムズムズした感覚になって、思わず身悶えてしまった。
これはなんだろう…?こう…わっかんないけどっ…!なんなんだっ!?
今までにない感情が胸の中で渦巻いた。強いて言うならバレてはいけない趣味がバレて恥ずかしい、みたいな感覚だ。いやそんな趣味はないんだけど。
そうか!わかった!これがイタいってやつか!
私は感情の正体がわかると少しすっきりした。だからと言ってムズムズ感が消えるわけではなかったけど、とりあえず理解出来れば何となく気持ち悪さは減ったからいい。
「えと…それでね、ときりん。聞きたいことがあるんだけど…」
「なーに?なんでも聞いて?あ、スリーサイズは恥ずかしいからダメだよー?」
「いや聞かないよ!?」
誰が得するのよ!私が聞く意味ないでしょ!?
「そー?こんな人気のないとこ連れて来るからー…てっきり告白とかされるのかと思っちゃった!きゃー恥ずかしー!」
大丈夫かこの子…
だとしたらホイホイ付いてくるのはどうかと思う。幽霊だから平気とか以前の問題として。
いや…多分これはこの子なりの冗談…そう…冗談なんだ…
もはや素でこのキャラならヤバい。作ってると思いたい。私は切実にそう願った。
「じゃあじゃあ、何が聞きたい?勘違いしちゃったお詫びにー…今ならなんでも答えちゃうよー?」
おぉ…なら是非とも、その一回溜める話し方は何なのか聞きたいね…
もう違う文化で育ったんじゃないかと思える。いやもういっそ世界が違うんじゃないだろうか。
「あぁ…うん。じゃあ単刀直入に聞くけど、ときりんの未練って何かな?」
疑問は尽きないし聞きたいことも沢山あるけど、それらは一切関係ないし、ただただこの子に付き合う時間が長くなるだけだ。ならもう早く終わらせることを私は優先したい。
「未練…?そんなの決まってるよー」
「ホント!?マジで!?何かな!?私に出来ることなら手伝うよ!?」
わたしにそんなのないよっ!なんて言われなくてよかったっ!
半ば言われる覚悟をしていたけど、最悪の状況は避けられた。その事には安堵しかない。
「それはねー………」
「…っ!」
てかその溜めを止めて!?
「わたしがアイドルになって、皆に笑顔を届けられなかったことだよー!」
「……………は?」
私は思考が止まった。
◯◯
私が考えてた最悪の事態は避けられた。だけどまさかそれ以上に意味不明でかなり不可能な事態が来るとは思わなかった。
いやだってまさかでしょ…アイドルになれなかったのが未練って…
そんなことが予測出来る人がいるなら是非とも紹介してほしい。求人サイトにいるだろうか。
はぁ…とりあえず現実を見よう…なんとか成仏させないと…
混乱から何とか回復した私は、再びときりんに向き合った。見た目はとても可愛い。確かにアイドルでも通用しそうな見た目だ。
「あっ!気付いた?わたしの可愛さに愕然としたのかな?かな?」
うん。この言動もアイドルになりたかったゆえなのだとしたら、納得できる。はず。多分。自信なくなってきたな。
「ごめん、それはない」
「えー!ひっどーい!わたしこんなに可愛いのにー?」
おっと。思わず素で返してしまった。だけどメンタル強いな、この子。そこは尊敬するわ。
「うん、可愛いとは思うよ?女子の私から見ても。でもね?私、女子だから」
「えっ!?可愛い!?やたっ!!うれしー!!」
「いや、聞いて?最後まで聞いて?」
凄いな。都合のいいとこしか聞いてないよ。私の後半の言葉ガン無視されたよ。
「やっぱり、わたしの可愛さは女の子でさえも魅了しちゃうかー!」
「待って、聞いてよ」
自分の世界に飛んじゃったよ…凄いなこの子…なんかハートマークが飛んでるように見えてきた…
「でもでも、わたしはみんなのときりんだからー…一人占めはできないんだよ?」
現状、私しか視えないから一人占めなんだけど…まぁなんも嬉しくはないけど。
「あっ…!でもアイドルとしてじゃなくてー…一人の女の子としてのお友達ってことなら個人的に仲良くしてもいいよ?」
「お友達…」
友達…友達かぁ…
私はときりんの意外な言葉に少しだけ考えた。例えばこの子が友達だったとしたら、どんな感じだろう、と。
今は幽霊としてヤバい子だと思ってたけど…生きてた時に会ったら…あれ?意外と愉快…なのかも…?
「そっか…友達…友達…うん。いいね」
「ほんとっ!?」
「うん。友達になろう!」
私が言うとパッと花を咲かせたように笑顔になった。さっきまでの笑顔とはなんだか違う気がする。本当に喜んでいると言うことなのかもしれない。
「じゃあさ、ときりんじゃなくて、朱鷺って呼んでいいかな」
正直、ときりんって言うのは恥ずかしかった。これを機に訂正させてほしい。
「いいよー!まぁ、ときりんでもいいんだよー?」
あ、それも素で言ってるんだ…
と言うことは、そもそも素でこの性格なのだろう。だとしたら人によっては受け入れられないかもしれない。私も、幽霊としてだけど、最初はかなり面倒くさそうだと思ったくらいだ。
もしかしたら…友達もあんまりいなかったのかな…私もだけど…
だからこそ、私はこんなにぎやかな子が友達だったら楽しかっただろうとも思う。朱鷺に言われるまで気付かなかった。反省しなきゃいけないかな。
「朱鷺の方が呼びやすいから」
「そっかー…まぁどっちでもいっかー!」
うん、素直だ。多分、素直になりまくった結果のこの性格なんだろう。意外と舞と気が合うかもしれない。舞も自分に凄い素直だし。
「あっ!わたしはみっつんって呼ぶねー?」
「みっつん…」
お…おう…なんか…なんだろ…
「嫌…?」
私がちょっと考え込んでいたからだろう。朱鷺は不安そうな表情で上目遣いに覗き込んできた。なんだか悪いことをしている気分になる。
「いや…嫌じゃなくて…なんか…新鮮…っていうか、初めて呼ばれたから戸惑っただけ。別に嫌じゃないからいいよ」
「やたっ!!」
私が正直に感想を言うと、またもや嬉しそうにする朱鷺。こんなささいなことでも喜んでもらえると私まで嬉しくなってくる気がする。
「でもでもー…みつみつとか、あーちゃんとか、あかりんも捨てがたいなー」
「最後のは名前変わってない?」
あかりんは確実にあかりって名前の人じゃなかろうか。まぁ、あかねんは確かに微妙だろうけど。てかその呼び方が思いつくだけでもだいぶ朱鷺に毒されてきてるかもしれない。
「わたしがときりんだし、いっかなーって」
こだわり強いな!?
「流石に名前の原形は変えないで?」
「あっははー!ごめんねっ!」
あっけらかんと謝る朱鷺。なんだか許してしまおうって気になってしまうのが不思議だ。朱鷺に対する見方が変わってきている気もしてくる。
「まっ、呼び方はなんでもいいよ。特に気にしないし」
「おけおけー!よろしくねっ!みっつん!」
さて、良い感じに打ち解けたことで本題に入るべきだろう。まぁその本題が問題なのだけれども。
アイドル…だもんなぁ…
「朱鷺はさ、なんでアイドルになりたいの?」
「んー?アイドルになりたい理由?そんなのわたしが可愛いからだよ?」
「お…おう…」
そこに迷いはないのか…
朱鷺は笑ってそう言い切った。確かに朱鷺は可愛い。それこそ、アイドルでもおかしくない。小顔で目は大きくて愛嬌があるし、どことなく応援したくなる雰囲気も持っている。私はアイドルには興味ないし良くは知らないけど、なんとなくいるような気がする。
昔から可愛いって言われて育ったんだろうなぁ…
それが自信であり、この性格なんだろうと思う。でもなんだかそれだけじゃないような気がする。私と友達になるって言った時の笑顔とは違う気がしたからだ。
「まぁ…幽霊になっちゃったわけだし、アイドルには流石になれないよねぇ…」
それに一番の障害はそこだ。例え本人がアイドルになれるポテンシャル持ってても、幽霊からアイドルへのジョブチェンジは不可能だ。
「うん…わかってる…よ?それは…でもでも…それが悔しいんだー…」
「あ…うん。ごめん」
私がうっかり口にすると、朱鷺は落ち込んだように呟いた。成仏させるのが私に出来ることなのに、落ち込ませたら意味がない。
「ならとりあえずさ、歌を聞かせてよ」
「歌ー?」
「うん。歌」
話題を変えるのと、気を紛らわせる為に思いついたことをひとまず口に出した。本音を言えば、アイドル目座そうって人の歌唱力も気になった。
「道端でやってたのって発声練習でしょ?アイドル云々より、先に知って起きたい」
「なるー…わかったっ!じゃっ、ちょっと歌ってみよっか!」
朱鷺はそう言って少し私と距離を取ってから、私の方を見た。
「んんっ!」
そして、二度程咳払いをして姿勢を正した。なんだか様になっている。気がする。
これでアイドルの…候補だけど…歌が聞ける!
「みんなー!今日はー…わたしのライブに来てくれてありがとー!!」
そっからやるんかい!
手を振り飛び跳ねながら言った朱鷺の一言に、私はツッコまずにはいられなかった。
◯◯◯
出だしはツッコミを入れたものの、二人きりのライブは粛々と進んだ。
「あなたの~おねがい~聞いてあげる~!」
歌うま…
下手だったら下手でどうしようかと思ったけど、超歌上手い。プロのレベルがどんなかは差がわからないけど、少なくとも普通の人より上手い思う。
このルックスで歌上手いんじゃ、普通にアイドルとしていそうだなぁ…
なんならもう、普通に朱鷺がテレビに出てるとこ見たかった。朱鷺の性格なら、一周回って受け入れられるだろう。素直だし。
「ねーねー!どうだったっ!?」
「お世辞抜きに上手くて驚いた」
「ほんとー!?やたっ!」
なんだかんだ三曲歌って、感想を求めてきた。素直に思ったことを言うと、朱鷺は嬉しそうに飛び跳ねた。
「てか全然知らない曲だったけど、他のアイドルの曲?」
「ん?わたしが作った曲だよー?」
マジかぁ…
普通にいい曲だと思ってしまった。絶妙に耳に残る感じだった。なんなんだこの子。そっち方面に才能全振りでもしてるのか。
「変だったー…?」
「いや全然。むしろ良かったよ」
真面目に聞き入るくらいには良かった。ホント、朱鷺がアイドルじゃないのが、冗談抜きで悔やまれてきた。
あーあ。そしたら私がファン一号だったのになぁ…
友達だったら尚更だ。応援したいし、嬉しい。そう思って、私は朱鷺のことを、だいぶ受け入れていることに気付いた。
「ホント!?ホントにホントっ!!?」
「ホントにホント。聞き入ったしね」
「わー…わー!ほんとに嬉しいっ!でもちょっぴり恥ずかしいっ!」
頬に手を当てながら跳び跳ねる朱鷺。さっきから飛び跳ねてばっかりだ。犬か。
あぁ、でもなんか犬っぽい。尻尾とかめっちゃ振ってそう…
そんな感想を抱きつつ、微笑ましく朱鷺を見た。こんな友達がいたら、毎日がもっと楽しくなっただろう。
「あー…惜しいなぁ…朱鷺がアイドルだったら、私ファン一号なのになぁ…」
「えっ…?」
私が思ったことを呟くと、朱鷺動きをピタリと止めて、大きな目をさらに丸くして私の方を見た。
「いま…なんて?」
「え?だから、私がときりんのファン一号になってたって言った」
「ファン…一号…?」
「うん、そう。だってアイドルになる前から友達なんだよ?ファン一号確定でしょ?」
私が理由を説明すると、さっきまで忙しく動いていたのに一切動かなくなってしまった。瞬き一つしない。まるで銅像のようだ。こんなにも制止しているのは逆にすごい。
「ふぇ…」
「ふぇ?」
「ふぇえぇぇぇぇぇんん!!」
「えっ!?ちょっ!?なに!!?」
マジで!?なんで!?どうした!?
と思えばいきなり泣き出してしまった。一体なんだって言うんだろう。
「だってぇ!だってえぇぇ!!」
「どうしたの!?私なんかした!?」
「したよぉ!嬉しいのぉぉぉ!」
嬉しいって…はい…?
「ファンだって言ってくれるしぃぃ!お友達って言ってくれるしぃぃぃ!!そんなこと言ってくれる人、今まで誰もいなかったんだもぉぉぉぉん!!!」
朱鷺の叫びが神社に木霊する。肺活量が関係あるかは幽霊だから謎だけど、かなりの声量だ。耳が痛い。だけど、私はこの叫びを受け止めなきゃいけない。
「ずっとぉ!ずっと一人で頑張ってぇぇ!!でも誰も認めてくれなかったのぉぉぉ!!!」
「私が認めるよ!私がその頑張った結果を知ってるよ!!」
きっと、頑張ったから歌が上手いんだろう。必死に曲を作ったのだろう。認めてもらうために。
「みんな、アイドルなんて無理だってぇ!簡単になれるものじゃないってぇぇ!でもそんなの知ってるんだもぉぉぉん!だから頑張ってたのにぃぃ!!」
「私はなれるって思うよ!朱鷺ならなれる!友達として保証する!ファンとして応援するよ!!」
「わあぁぁぁぁん!!!」
幽霊には触れない。だけど、私は朱鷺を、ときりんを抱き締めるような体勢をとった。私の気持ちが伝わればいいと思って。そして、朱鷺はそのまま泣き続けたのだった。
〇〇〇〇
やがて朱鷺が泣き止んだ。私はそれと同時に姿勢を解いて、朱鷺と向かい合った。
「落ち着いた?」
「ぐすん…ぅん…」
「よかった」
私は朱鷺に笑いかけた。上手く笑えているだろうか。わからない。何故なら朱鷺の体が透け始めていたから。
けど…なんで…?
「ありがとぅ…ぁはは…泣いてすっきりしちゃったのかなー…なんか満足しちゃったみたい…かなー…?」
朱鷺は弱々しい笑顔を見せた。だけど確かにすっきりしているようには見える。それでも、それだけが理由じゃない気もする。
「あの…あのね?わたし…わたしさー…お友達がいなかったんだー…」
「そう…なんだ…」
「だからね…みっつんにお友達って言われて…すっごい嬉しかった…」
「うん…うん…!」
「それに…ファン一号だって言ってくれて…ほんとに…ぉんとうに…嬉しかった…!」
「うんっ…!」
「わたしっ…ずっと誰かに認めて欲しかったのっ!受け入れて欲しかったのっ!!」
「うんっ!!」
朱鷺が心の内を紡いでいくと共に、身体が宙に浮き始めた。
「ありがとー!ほんとにっ!ありがとー!!」
「私こそ!素敵な歌をありがとうっ!」
「さよならっ!わたしの大事な友達っ!!たった一人の大切なファン!!また…またわたしのライブに来てねー!!!」
そうして、ときりんこと朱鷺は、光になって消えていった。
「絶対…絶対行くよ…ファンの務めだもん…ね」
いつ果たせるかわからない、だけど絶対に果たさなきゃ約束を口にして、家に帰ることにした。私しか知らないアイドルの曲を口ずさみながら。
第26話を読んで頂きー…ありがとー!
調子乗りました。すいません。
さて今回は久々の一話完結でした!
ときりんですね。ネーミングセンス(笑)って感じですよね。
ちなみに煌月朱鷺は本名です。
私的にはツインテールは一押しです!
特にサイドからで細く長いのがいいですね!
まぁただし二次元に限る、ですが。
男の子で髪長いんだったらポニーテール一択ですかねー。
まぁただしry)
てわけで今回はここまで!
ブクマして頂いてる皆さん!
そうでない皆さん!
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
次回の更新は私用につき2/9にさせてもらいます!すいません!
引き続きお付き合い頂ければ幸いです!




