第24話 覚悟と尊重。向き合ってわかること
こんにちは!
明日葉晴です!
最初に言っておきますが今回では小夜ちゃん編を終われませんでした!
ごめんなさい!
今回はオール小夜ちゃん視点でお送りします!
前回は過去をさらした小夜ちゃんですが、私は過去に囚われるって悪いことじゃないと思うんです。
まぁ言い方は悪いですが…
そんな私の意見はさておき、小夜ちゃんの過去から今へ、どう繋がるか、ですね!
それでは本編をどうぞ!
私は弱い。
「どんなに強く見せてようとしても…本当に強くなれるわけじゃない…」
虚勢はいつか崩れる。その結果が今の私。
「お母様は…どうして最期まで…」
分からない…きっと…弱い私では…なにも…
〇
自室に閉じこもってからどれだけ時間が経っているのか。呼吸だけをしている状態は時間の感覚を無くしてしまうわね。カーテンすら閉め切っているから陽の加減で推し量ることも出来ない。
「はぁ…学校も休んでしまったわね…」
お父様が勝手に連絡を入れているでしょうから、多分支障はないのでしょうけど。
「せめて茜と美和には連絡すれば…いえ…それは甘えね…」
連絡してどうしようと言うのかしら…?心配して欲しい…?慰めて欲しい…?寂しがって欲しい…?
どれも当てはまるようで、結局のところどうやっても甘えてしまいそうね。それでも無断で休んでいるのだから、どのみち心配は掛けていそうな気もするけれど。
「あら…ふふ…」
そこまで思って不意に笑ってしまった。まさか私が他人をこんなにも気にするなんて、新しい発見ね。閉じ籠るのも、存外悪くはないのかもしれないわね。
「さて…新事実を見つけたことだし、そろそろ覚悟を決めるべきかもしれないわね」
最期に二人に挨拶できないのは残念だけれども、新しい自分を見つけられたことに感謝して、この気持ちを胸に次の学校に行けるのなら、耐えられる気もする。
それでは…資料を…
コンコン…
そこまで思って、不意に部屋にノックの音が鳴り響く。
舞かしら…ちょうどいいわね…舞にも心配を掛けたで…
「小夜、いるんでしょ?私、茜」
「え…?」
舞だと思ったけれど、扉の奥から聞こえてきたのは予想もしなかった声だった。
「あ…かね…?」
「あたしもいるよ、小夜」
「美和も…?」
なんで…?
「ちゃんとウチもおるよ」
「私は舞だけだと思ったわ」
「ウチだけ驚きあらへんのやな…」
少し不満そうな舞の声でちょっとだけ落ち着いたけれど、それでも解せないわね。二人がいる事にも、舞が仕事の姿勢じゃないことも。
「まずは謝るね?ごめん。阿澄さんに小夜の家、教えてもらったんだ」
「そう…阿澄さんが…それはいいけれど…何故…?」
「わかんない?あたしはメッセージ送ったのに、返事なかったら心配するってわかんない?」
「ごめんなさい…でも大丈夫よ。私は元気」
やっぱり心配掛けてしまってたみたいね。悪いことをしたわ…
私はなるべく明るく努めた。心配を掛けたまま別れを告げるのは忍びないものね。それでも扉は開けないのだけれど。
今二人に会ってしまったら…せっかく決意したのに…
「嘘だってさ」
「嘘なんだ?」
「嘘やの?」
「えっ…?」
百歩譲って嘘なのを認めるとしても、まるで他人から聞いたかのような三人の反応に私は困惑したわ。
「小夜、もう一個謝るね?実は、幽霊の人も連れてきちゃってるの。その人が言うには小夜、泣いてるんだって」
「え…」
突然のことに戸惑いつつも、言われて自分の顔に手を当てると、頬が濡れていた。幽霊も信じられないけれど、自分が涙を流していたことにも驚いたわ。
「気付いてなかったんだ。驚いた顔してるって」
「そうね…驚いたわ」
私が幽霊の言うことを信じてしまったことにも…
「小夜、ウチも謝るわ。三人に転校のこと話してもうた」
「そう…いいわ。どうせわかることだもの。それが早まっただけよ」
「それだけやのうて、昔のことも」
「………そう」
まぁ…転校の経緯を説明するなら、必然的にそうなるわね…
「それでね小夜。お姉ちゃんが見た小夜の今の状況と、舞の話を加味して…」
……お姉ちゃん?
茜が誰をお姉ちゃんと言ったのかはすごく気になるところだけれど、黙って次の言葉を待った。
「私の願いを言えば、小夜、転校したくないでしょ?」
だけれど、待って後悔したわ。それは今一番聞きたくない言葉だったのだから。
「そ…そんなことは…」
ない。
「ないことはないよね?」
「っ…!?」
私が言おうとしたことを、茜は先回りして封じた。言い切るのなら簡単だけれど、私はそんな簡単な虚勢すら張れなくなっていた。
「私の願いは言った。後は小夜の本心が聞きたい。本当に転校に納得したなら止めない。それでも本心だけは聞きたい」
「わた…私は…」
そんなのは…決まっている…
「でも…それでも…無理よ…そんなの…お父様が許すわけ…」
言ってしまったら、取り消せない。叶わない願いは、思わない方が…
「女の子は少しくらいわがままな方がかわいいんだよ?」
「えっ…?」
改めて自分の望みを消そうとした時、いつかお母様から聞いた言葉と似た言葉を、茜が言った。
あの時舞はいなかったわ…なら一体…偶然…?
「今のは私じゃなくて、お姉ちゃんの言葉」
だからお姉ちゃんって誰なのかしら…?
「わがままは言うだけならただなの。それに言えるだけ、言う相手がいるだけで、幸せなんだよ。わがままを言える相手がいて、人は育つことが出来るの。聞き訳が良くなるのは、わがままを言って程度を覚えてからでもいいんだよ」
「わがままを…」
「そう。お父さんに。娘にわがまま言われて萌えない世のお父さんはいないんだよ?…いや。なんてこと言わせてるんですか」
何を一人でツッコんでいるのかしら…あぁ…幽霊の方が言っていることにしたいのね。
「でも私もそう思う。小夜にはもっと私達に頼ってほしい。私、小夜に助けてもらってばっかりだもん」
「あたしも、些細なことでも手伝う。小夜はなんでも一人でやってしまうから。少し寂しい」
「茜…美和…」
茜の言葉が、美和の気持ちが、痛いほどに伝わった。迷惑を、面倒を掛けまいとしていた行動は、結果的に二人に疎外感を与えてしまっていたみたいね。
「小夜」
「舞…」
「ウチも…ウチもや。仕事ばっかは押し付けよって、友達としてはなんも頼んでこぉへんやん」
「だって…貴女は…」
「勘違いすんなや!ウチがこうして声掛ける意味もわからんくなってんか?ウチは小夜のメイドやから友達になったんやないよ!小夜と友達になってからメイドになったんよ!奥様の約束も関係あらへん!そんなことも忘れてしもたんか!?」
「あ…舞…ごめんなさい…」
本当に…私は何もわかっていなかったのね。初めての友人だったのに、いつからかメイドとしてしか見ていなかったことに、罪悪感が募った。舞は私を信頼してくれていたというのにも関わらず。
「ごめんなさい、三人とも…私…私が間違っていたわ。本当に何もわかっていなかったわね…」
私は一歩を踏み出し、扉に近づいた。そして、取っ手に手を掛けゆっくりと開いた。
「私に勇気を…どうか…助けて…!」
けれど開いたはいいものの、三人の顔を見れなかったからすぐに頭を下げてしまったわ。
「「「もちろんっ!!」」」
そんな私の言葉を聞いて、三人は声を揃えて返事をした。その声の調子から、三人がどんな顔をしているか予想が出来た。きっと私とは反対に、笑顔になっているのだと思うわね。
〇〇
三人を部屋に招き入れた後に待ってもらい、私は一度部屋の洗面室で顔を洗ってから三人と再び向き合った。
「改めて、私に力を分けて欲しいわ。私一人では…お父様と向かう勇気がないの」
私は、はっきりと私の弱さを三人に曝け出した。けれどそこに恥ずかしさはなくて、いっそ清々しくも思えたわ。
「私は綾目にいたい。三人と一緒に、お母様の母校に。約束を果たす為に」
「小夜っ…!まだっ…!」
「舞、勘違いしないで頂戴」
私の言葉に反応して舞が口を挟もうとしたのを、私は先んじて封じた。
「約束に縛られてるわけじゃないわ。でも、やっぱり大事だから。私のしたいこととしてやるの」
「……そか。それやったらええわ」
「ありがとう」
私が自分の意思を伝えると、舞は怒りを抑えてくれた。本当に理解のある友人でよかった。
「それで?具体的にはどうするの?」
「小夜のお父さん…忙しいん…だよね?」
私と舞が和解したのを見届けた茜と美和は、話を進めるために連携を取って質問してきたわ。本当に仲の良いこと。
「ええ。そうね。でも大丈夫よ」
私はそんな二人に向き合って、笑みを浮かべた。
「私、この件に関しては徹頭徹尾わがままを言ってみるって決めたのだから」
今日だけはお父様を振り回してみようと、そう心に決めたのだから。
私は二人にそう宣言して携帯を取り出し、受験前以降、一度も掛けていなかった電話番号に電話を掛けたわ。
「お父様、お話があります。帰って来て頂かなければ、私は水怜女子には行きません。お父様とお話をすることも二度とないでしょう。執務室でお待ちしておりますので。では」
一方的に用件を告げて電話を切って、ついでに電源も落とす。これでお父様は帰ってくるほかに無いでしょうね。どうせ今日やらなくてもいい仕事までやっているのでしょうから、仕事には支障はないはず。
「さて、それでは準備をしましょうか…あら?どうしたのかしら?」
電話を終わらせてから私が三人の方を向くと、なぜか三人は苦笑いを浮かべていたわ。
「「「いやぁ…」」」
口を揃えて言葉を濁してから、三人は互いに見あった。
「なんていうか…ね?」
「あはは…そうだねぇ…」
「せやなぁ…」
呆れていると言うか、苦笑いのような表情で三人はそれぞれの意見を確かめるように頷き合う。
「「「なんだかんだ、小夜らしいかなって」」」
「あら…そうかしら…?」
「「「うん」」」
む…そうなのかしら…?でも…それならやっぱり、三人がいるからかしらね。
「うふふ…ありがとう」
それを口にするのは…恥ずかしいから言わないのだけれど。
〇〇〇
私は制服に着替えて他にも準備し、執務室でお父様のことを待っていた。ちなみに三人にも私の後ろ付いていてもらっている。私が逃げないように見ててもらうためと、私らしくいるためね。
あぁ…それでもやっぱり緊張するわね…
だけど、これもお父様と向き合ってこなかったツケなのだとしたら、甘んじて受けましょう。そうして待つこと数十分。立って腕を組んでいると、ようやく執務室の扉が開かれた。
思ったよりも早かったわね…
「っ…!?あぁ…お前か。まさかこんな手段に出るとはな。やはり…」
「お父様」
お父様は、執務室に入ってから何故か一瞬息を飲んだものの、すぐにいつものように私に対しての不満を言おうとしたために、私はそれを先に制した。
「私は、小夜です。お忘れでしょうか?」
「ぅっ…!」
そして、いつかお母様の言っていたことを少しだけ変えて、けれど意味は分かるように問いかけた。その効果はあったようで、お父様は言葉を詰まらせた。
そう…ゆっくり…お母様は…押し付けるようにではなく、引き付けるように自分のペースに巻き込んでいたわ…
今まで、私はお父様と話す時、お互いに一方的になっていた。けれどそれではダメだと気付いた、思い出した。お母様だからではあるけれど、私はお母様の娘なのだから。
「それは謝ろう。だがしかし、それと転校は話は別だ。資料はもう読んだんだろうな?」
「ええ、読みました」
「ならさっさと…」
「ですから転校はお断り致します」
「なんだと?」
言えた。言うことが出来た。ここからが本番ね。
「まず第一に、私の成績の向上と、転校の関係が見えません」
「それは言っただろう?水怜は進学校だ。行けば勉強も捗るだろう」
私が意見を言うと、お父様はすぐさま反論してきた。けれど、私はそれを一度無視して言葉を続けた。
「第二に、そもそもの約束は、学力の低下が見られた場合で、向上が見られない場合ではなかったはずです」
「停滞は遠回しな低下だ。上を狙えるはずなのに、追いつくので精一杯になっている証拠ではないか」
お父様はまたもすぐに反論してきたけれど、すでに意見が食い違ってしまっている。今まではそれすら気付かずに、さらに反論してしまっていたのだけれど。
「第三に、お母様の約束を破らせる気ですか?」
「ぐっ…」
今度は反論せずに押し黙った。さすがのお父様も、昔の話を持ち出してくるとは思わなかったようね。
「最後に、私は綾目にいたいのです。後ろにいる友人たちと共に、お母様の母校で思い出を作りたい。その話を墓前で聞かせるのが、お母様からの手紙での約束なのです」
「小夜…」
「お父様だって手紙は読んだのでしょう?それを覚えていないというのですか?もうお母様は愛していないと…」
「そんなわけないだろっ!!」
「っ!?」
今度は私が言葉を詰まらせる番だった。こんなにも感情をむき出しにしたお父様は初めて見たのだから、驚かない方が無理があるわ。
「すまない、取り乱した。だが…香夜を愛していないということなどない」
「お父様…」
「そしてもう一つ。私は…香夜の手紙を読んでいない」
「え…?何故…なのですか?」
「私には、どうしてもっ…どうしても読めなかったっ…!」
お父様は、本当に苦しそうに言葉を吐かれた。
「あの時、封筒を開けはしたが…中身を取り出すのを躊躇ってしまった」
まさか…あの時は封が開いていただけ…?
「香夜の最期の言葉だ…私はまだ…最期の別れはしたくない…」
「お父様…」
今目の前にいるのは、厳しいお父様ではなくて、ただ愛する人を亡くした一人の男の人。初めて見るお父様の弱い所は、とても情に溢れていた。
「小夜、俺を愚かだと思うか?」
「そのようなこと…」
思える訳がない。
「皆が皆、香夜の手紙を読み、前に進んでいるというのに、立ち止まった俺は哀れか?」
「誰が哀れだと言うのですか。ただ悲しんでいる人を誰が責められるのでしょう」
「小夜…」
「お父様は愚かでも哀れでもありません。私こそ浅慮でした。申し訳御座いません」
私はお父様に対して真っ直ぐに頭を下げた。
「……いや、いい。小夜は聡い。そんな聡い娘を追い詰めた、俺が悪いんだ。頭を上げてくれ」
「ですが…」
「いいんだ」
お父様は私の両肩に手を置き、私の姿勢を起こした。私が正面を向くと、真っ直ぐに私を見つめたお父様と間近で目が合った。
「あぁ…本当に綺麗に成長したな。本当に…香夜に似て…」
僅かな変化だけれど、近くにいるから良く分かった。お父様は懐かしむかのように、優しく目尻を下げていらした。
「わかってはいたが、こんなにも似ているとはな」
「そんなにですか…?」
「あぁ。特にその制服姿は、出会った時を思い出す」
「えっ…!?」
私はお父様の言った言葉に驚いたわ。まるで、お母様の高校の時を知っているかのよう。
「その反応、やはり知らなかったか。俺と香夜が出会ったのは、綾目高校だ」
「そうだったのですか…?」
「あぁ…だから、小夜を見るのが余計に辛くてな…逃げるように会社に籠っていたんだ。本当にすまない」
「いえ…そういう事情があったのでしたら…仕方ないことだと思います」
お父様は自分の行動を恥ずかしむかのように、顔を逸らしながら謝罪の言葉を言った。
「それと…君達にもすまないことをした。そして、小夜力になってくれて、本当にありがとう」
顔を逸らした先で、今度は茜と美和と舞の三人に頭を下げた。
「いえっ!私達は別にっ!」
「あたし達も小夜にはいっぱいお世話になってます。これくらい、当然です」
「せやなぁ。ウチは…あ…失礼致しました」
「ひた…いや、舞君。今は構わない。小夜の友人としているのだろう」
「では…ウチも小夜には世話になっとるんやから、ええんです」
三人はそれぞれの反応。茜は緊張してしまっているけど、美和は冷静に返した。舞はお父様の前だと思い出したようで、仕事の姿勢に直ったけれど、お父様の一言でまた平常に戻った。
「そう言ってもらえると嬉しく思う。香夜の娘だから少し心配していたのだが、どうやら人に頼られる子に育ってくれたようで、よかった」
それはそれでお母様が一体何をしてきたのか気になるのだけれど…
お母様のことだから、きっと想像もつかないことをしてきたのでしょう。それはなんとなく理解できるわ。お父様の最後のよかったという言葉には、紛れもない安堵が滲んでいたのだから。
「お父様、彼女たちが私の背中を押してくれたのです。彼女達がいなければ、きっと、私はこうしてお父様と向き合うことすらしなかったでしょう」
「そうか…」
私の言葉にお父様は一言呟くと、何かを逡巡したのちに、覚悟を決めた顔で私に向き直った。
「小夜、俺は決めた。香夜の手紙を読もうと思う」
そして、はっきりとその覚悟を私に告げたのだった。
第24話を読んで頂き、ありがとうございます!
ついにクライマックスださぁ行くぞっ!
って書き出したたら、内容が増えること増えること…
本当は小夜ちゃん半分、茜ちゃん半分でフィニッシュの予定でしたが、倍の量になりました。
……嘘です。
実はもっと書こうと思ったのを抑えるので必死でした。
さて、次回で本当に小夜ちゃん編は終わりにします!
ブクマして頂いてる皆さん!
そうでない皆さん!
毎回読んで頂き、ありがとうございます!
次回の更新は1/5です!
引き続きお付き合い頂ければ幸いです!




