第22話 メイドとお父様。親友と自称お姉ちゃん
こんにちは!
明日葉晴です!
超ギリギリに投稿です!
面目ない。
今日は小夜ちゃんと茜ちゃんの二人の視点ですね。
最初は小夜ちゃん、次に茜ちゃんの視点になります。
時間が押してるので、自分のせいですが、本編をどうぞっ!
side.小夜
私はお父様のことがわからない。
「お母様は…お母様なら…お父様のことを理解していたのでしょうけれど…」
中学三年生の時に亡くなってしまったお母様は、私とお父様の間に入りよく緩衝材となっていた。厳しい教育を施すお父様をたびたび窘めては、やり込めていた。今ではそんなことが出来る人はいない。
「小夜」
「お父様…?」
ノックの後にお父様が私の部屋に入ってきた。普通ならばありえない。お母様がなくなってからは私にここまで干渉してくることはなかった。
「話はまだ終わってはいない」
「いいえ…終わりました。私が成績を上げればいいのでしょう?」
「いや。それでは不十分だ」
先ほどの話をしに来たみたい。ここは私の部屋で逃げ場はない。唯一の出入り口も、お父様が塞いでいる。
「お前にはやはり、転校してもらう」
〇
お父様は一方的に話をした後、転入先の資料と書類を置いて出て行ってしまった。転入は一週間後。それまでに、授業進度を合わせなければならない。最近ではなくなっていたけれど、自分の意見を押し付けるのは変わっていない。
「本当に…変わっていないのね…」
お母様が亡くなってもうすぐ二年。お母様との約束は、その程度の時間で風化してしまうものなのかしら。
「もし…お母様が生きていたら…お父様を止めてくれたかしら…」
私はそう呟いて、自嘲気味に笑った。もし、を考えるなんて私らしくない。目の前の問題から逃げるのも。
「私は弱くなってしまったのかしらね…」
弱くなってしまったと言うのが正しいのかはわからないけれど、嫌だと思うことを簡単に受け入れられなくなるのは、成長とは思えないわね。
けれど…ここまで用意しているということは…もうお父様の中では決定しているということね…
「舞、来て頂戴」
私は部屋に備え付けられている内線用の電話を手に取り、舞を呼び出した。しばらくすると、部屋にノックが響く。
「お嬢様」
「入って」
「失礼致します。何か御用でしょうか」
「転校の準備を始めるわ。明日から転出までは、学校を休むことになるでしょう。貴女も転入先の資料に目を通しておいて頂戴」
「…よろしいのですか?」
「なにがかしら?」
私は舞が言いたいことはわかっていたけれど、あえて聞き返した。きっと舞は何も言い返さない。それが卑怯だと自覚している。
「……いえ。差し出がましかったようですね。申し訳御座いません。準備致します」
「ごめんなさいね」
「構いません。務めですから」
思った通り、舞はあっさりと引き下がる。罪悪感から私が謝罪を口にすると、舞は不要とばかりに断りを入れた。
「そう…ね。貴女も、お母様との約束があるものね」
「…別にウチは…奥様との約束を守っとるわけやないよ…」
「えっ…?」
「乱しました。申し訳御座いません。では、失礼致します」
「舞っ…!!」
私の静止を聞かず、舞は私の部屋を出ていった。最後の呟きの意味は、わからないままに。
「誰も彼も…約束を守らないで…どうするの…」
誰に問いかけたでも無い質問の答えは、返って来なかった。
◯◯
side.茜
小夜の家に行く道中、幽霊を見つけた。急ぎたいけど、見捨てることも出来ない私は、美和と一緒に声を掛けた。
「あなた達は…生きているの?」
「えっ?あ、はい…」
予想外の返しに一瞬言葉に詰まった。視えることで驚かれることばっかりで、まさか聞き返されるとは思わなかった。
「そう…良かったわ。その年頃で幽霊だったら不憫だもの」
「えぇ…まぁ…」
女の人の幽霊は安心したと言う風に、カラカラと笑った。自分はいいのか。
私は…私より年下の幽霊もいっぱい視てきたけど…
「あら、ごめんなさい。自己紹介がまだだったわね!私は花見雪菜。あなた達は?」
「私は三葉茜です。美和、自己紹介お願い。花見雪菜さんだって」
「あ、うん。高尾美和です。茜の親友で、私は幽霊が視えないんです」
「あらそうなの?まぁ、困ることはないから大丈夫よね!よろしくね。茜ちゃん、美和ちゃん」
自己紹介を終えると、またカラカラと笑った。こんな明るい人でも未練があるか疑いたくなるけど、事実、あるから幽霊になっている。
「それで、花見さん…」
「待って。そんな他人行儀にならなくていいわよ?気軽に雪菜って呼んで?」
おぉ…すごいぐいぐい来るな…最初から私達はちゃん付けだし…
最初は大人な雰囲気だったけど、喋り始めると明け透けな感じで、独特な空気感を持つ人だ。
「えっと…じゃあ雪菜…さん」
「んー…まぁいいでしょう!本当は、雪菜お姉ちゃん。あたりがいいんだけど…」
「それはハードル高いですよ…」
「そうよねぇ…大丈夫よ!二割くらい冗談だから!」
「八割本気じゃないですか」
「うふふ!私はいつでもウェルカムよ?」
諦めないんだ!?メンタル強いな!?
「茜、何話してるかわかんないけど、本題入らないと」
「あ、そうだね」
「あら、急ぎ?なら早くしなくちゃね!」
半分はあなたのせいですよ…
そうは思ったけど、言うとまた長くなりそうだから一旦置いておくことにした。
「えっと…本題なんですけど、雪菜さんは未練ってありますか?」
私が率直に聞くと、雪菜さんは顎に手を付けて考え込んだ。
「んー…あるわね!私もまだまだ若いつもりだし?あなた達ほどじゃないにしてもね!」
「なんですか?私達に出来ることならお手伝いしますよ」
幽霊なのだから当然だけど、やっぱり未練はあるらしい。あっさりと言ってくれて助かる。
「そうねー…ならひとまずは、私のことを雪菜お姉ちゃんって呼んでくれない?」
「ひとまず!?てかそれ絶対違いますよね!?」
さっきのやり取りを引っ張ってるだけだ。このタイミングで冗談を挟む胆力は凄いと思う。
「ちっ…今ならいけると思ったのにな…」
「どんだけ呼んで欲しいんですか…」
「茜、どうしたの?」
「あー…それがねー…」
私のやり取りが気になったのだろう。美和が不思議そうに私に問い掛けてきたから、現状を説明した。
「え?呼んであげればいいんじゃない?」
「そうよね!美和ちゃん、話分かるわぁ!」
「えっ…でも…恥ずかしくない?」
「雪菜お姉ちゃん」
「そんなあっさり…」
私が渋っていると、美和が躊躇なく言った。
「んん!いいわね!グッジョブ!」
「どう?」
「すごい喜んでるよ…」
「そっか。よかった」
なんの恥じらいもなく嬉しそうにする美和。そんなにあっさりされると、私がおかしいのかと思えてくる。
「さぁ!この調子で茜ちゃんも!さんっ!はいっ!」
「えっ!?あっ!ゆ、雪菜…お姉ちゃん…」
「うんうん!恥じらいもいいわね!」
「満足頂けたなら何よりです…」
私が要望通り呼ぶと、雪菜さんはしみじみとした様子で何度も頷いた。
「さて、私の未練の話だったわね!」
「やっぱり今のやり取り意味なかったんですね!?」
「そんなことないわよ?茜ちゃんが呼んでくれなかったら、それが心残りになるかもしれないじゃない」
そう言われると弱いけど、絶対ないだろうとも思う。
「まぁさておき、私の未練ねぇ…沢山あって困っちゃうわぁ…」
「たっ…!?沢山あるんですか…?」
「そうよ?まだまだやりたいことはいっぱいあるもの!普通はそういうものじゃないかしら?」
「えっ…えぇっと…」
雪菜さんに言われて、私はふと考え込んだ。今までの幽霊は一つの未練とか、何か満足すれば成仏していたけど、本当はもっとやりたいことがあったんじゃないだろうか。
「まっ!私が普通かは微妙なところでしょうね!」
「おっとぉ!?」
私のしんみりを返してほしいな!?
「だって…変わってるって自覚あるもの」
「まぁ…確かに…」
「あら。そこは否定してくれても良かったのよ?」
「どうすればいいんですか!?」
「あはは!冗談よ、冗談」
ホントこの人なんなんだろ…
「まっ、私のやりたいことは沢山あるし、あなた達は急いでいるのなら、私は後でいいわよ」
「いや…でも…」
「私はここで待ってる。いや、あなた達に付いていくわ!それで、あなた達の用事が終わったら、私のお手伝いしてくれる?」
「えっ…いいんですか?」
「何言ってるの。私がお願いしてるのよ?一つはお願い聞いてもらったのに、さらに聞いて下さいって。私って厚かましいわね!」
「あっ…」
雪菜さんがさっぱりと言い切ってから、また笑った。私達に罪悪感を与えないように気遣ってくれたのだろう。隙がない。
「あはっ…!わかりました。美和あのね…」
「うん」
私は美和に事情を説明した。美和も雪菜さんの意図は伝わったのだろう。しょうがないって感じで、苦笑いした。
「そっか。なら、言葉に甘えさせて貰おっか」
「だね。では、雪菜さん…」
「お姉ちゃん!」
「ゆ、雪菜お姉ちゃん…」
「うむ!よろしい!」
やっぱこの人疲れるわ…
「はい…えっと、それでは…ついてきて下さい」
「おっけ!じゃあ張り切って行こー!」
そして、私と美和、雪菜お姉ちゃんの三人で小夜の家に向かうのだった。
◯◯◯
阿澄さんに教えてもらった住所にたどり着いた。が、私達はあっけに取られていた。
「「「でっか!」」」
そう。家が大きい。途中から片方の景色が変わらないと思ったけど、まさかその原因が友達の家だと誰が予想できるだろうか。
「え?あなた達のお友達って、富豪か何かなのかな?」
「お金持ちだとは思ってましたけど…」
「お金持ちっていうレベルじゃないよね?お姉ちゃんびっくりだよ?」
いや、私もびっくりだよ?小夜の事に関して言えば、知れば知るほどびっくりだよ?そりゃ料理人も雇うよね?
「とりあえず…ピンポン押す?」
「美和、お願い」
「あたし!?」
「言い出しっぺだし…」
「美和ちゃんファイト!」
「雪菜お姉ちゃんも応援してるから」
「わ…わかったよぉ…」
恐る恐る、美和はまるで爆弾のスイッチかのようにインターホンを押した。豪華な門だというのに、聞き覚えのある呼び出し音がミスマッチに思えた。
『どちら様…何故茜様と美和様がいらっしゃるのですか?』
「「えっ?」」
インターホンから聞こえてきた言葉に、私と美和は困惑して、目を合わせた。
「ワタクシです。舞です」
「「舞っ!!?」」
「はい」
私と美和は声を揃えて驚いた。よく聞くと確かに舞の声ではあったけど、普段と違いすぎて気付かなかった。
確かに廃病院でも、綺麗な標準語で喋ったけど…
それでも驚くなと言う方が無理だろう。
「えっ?舞?ホントに?」
「はい」
「まじで?」
「はい」
「今幽霊が付いてきてるんだけど」
「ホンマかいな!?っと。失礼致しました」
あっ。舞だ。
立ち直りは早かったけど、一瞬素が出た。むしろよく立ち直ったと思う。
「それで、御用件は何でしょう?」
「えっと…二人が休んだから、どうしたのかなって思って…茜と住所調べてきたよ」
「そうだよ!私達、すっごい心配したんだから!メッセも返さないし!」
「あぁ…何も申し上げずにすみません。少々…いえ。大変厄介な事態になりまして。お陰で朝から立て込んでいたのです」
インターホン越しでも分かるほど、舞は疲れの色の濃い声を出した。いつも元気が有り余っているように見えるだけに珍しい。
「あっ…そうなんだ…ごめん」
「大変なら何か手伝おうか?出来ることは?」
「お気遣い感謝致します。ですが…いや…」
私は潔く引き下がるつもりだったけど、美和が食い下がった。それに対して舞は一度断る気配を見せたけど、考え直すように言葉を切った。
「お二人に協力して頂きたいことが御座います」
◯◯◯◯
私と美和と雪菜お姉ちゃんは小夜の家の…何これ?道。すっごい長い道を歩いてる。普通の家じゃあり得ない。
「何これ!?何この家!?私場違いじゃない!?大丈夫かな!?」
「雪菜お姉ちゃんは幽霊だから関係ないでしょ…」
「あっ!そっか!茜ちゃん以外には視えないんだもんね!」
うん…この空気感でここまで騒げる人もそうそういないと思うんだけど…いや…視えてないってのもあるのかもしんないけど…それでもだと思う…
「茜、雪菜お姉ちゃんはなんて?」
「いや…騒いでるだけだよ…てか美和はお姉ちゃん呼びは躊躇ないんだね…」
「だってそう呼んで欲しいみたいだし。お姉ちゃんって、ちょっと憧れてたんだ」
「一人っ子だもんね」
「茜もでしょ?」
「私は一人でいっかなぁ…」
雪菜お姉ちゃんとは違い、私と美和は若干いつも通りの会話に戻りつつあった。てか割と美和が落ち着いていて、私がそれにつられて戻った感じだ。
「ふふふ…!あなた達はとっても仲がいいのね!」
「親友ですから。ね。美和」
「え?うん。親友だよ」
「ふふっ…大事にしてくださいね?きっと、多くのことが乗り越えられますから。私はその尊さを知っています」
「えっ…?」
急に大人な態度を取った雪菜お姉ちゃんに私はたじろいだ。さっきまでの子供っぽい笑顔とは違い、温かい微笑みになっていたのも印象的だ。
「さてさて!先を急ぎましょ!お友達が待っていますよ!」
「いやっ!?さっきのなんですか!?」
「うふふっ!なんでしょ?まぁ、お姉ちゃんからのアドバイスってことで!」
お姉ちゃん!!意味わかんないんですが!?
私の制止を聞かず、雪菜お姉ちゃんはさっさと先を行ってしまった。
「茜、雪菜お姉ちゃんがどうかしたの?」
「うん…なんか…急に大人っぽくなって…親友を大事にって…」
「そう…なんだ…なんなんだろうね…?」
「さぁ…?」
私が聞きたい…
「けど…」
「まぁ…ね」
私と美和は頷き合った。
「「言われなくても」」
そのあと二人で笑いあいながら、小夜の家の道を歩くのだった。
〇〇〇〇〇
門から玄関までの長い道を歩き、ようやく小夜の家の本体の前に立つことが出来た。
「お待ちしておりました」
「「おぉ…!」」
玄関の前に着くと、タイミングを計ったように扉が開いて舞が現れた。ザ、メイド姿で出てきた舞に、私と美和が思わずため息を漏らした。
「メイド!?すっご!ここ日本!?」
雪菜お姉ちゃんは相変わらずうるさい。
「ひとまず中へ。話はそれからに致します」
「あ、うん…」
「そだね…」
流石に仕事モードなのか、普段の様子ではなく真面目な態度で私達に接する舞。なんだか少し寂しい気もしたけど、仕事中ならしょうがない。
けど…私はいつもの舞の方が好きだな…
舞に案内されて、よくわからない広い部屋に連れられてきた。映画やドラマなんかで見る、応接室みたいなとこをかなり広くした感じの部屋だ。何に使うかわからないけど、もはや驚きもない。
「こちらにお座り下さい」
「「あっ…はい…」」
座ることを躊躇われるほど、見るからに高そうなソファをあっさり勧められた。若干狼狽えながら恐る恐る座る。めっちゃ座り心地がいい。ここで寝たい。
「それで当家で起きた問題について、お二人にご協力お願いしたいのです」
舞は立ったまま私達の正面で深く頭を下げた。
「そんなっ!舞、そんなに頭を下げないでよ!」
「そうだよ?友達だから当然だよ」
「お気遣い、重ねて感謝します」
私と美和が舞を止めても、お礼を言うだけで頭を上げようとはしなかった。
「ついては、現状、お嬢様がご自分のお部屋に閉じこもり、出ようとせず、言葉も交わそうとしないのです。お二人にはお嬢様を説得して、部屋から出るよう促して欲しいのです」
頭を下げたまま舞言った言葉は、私の知る小夜からはかけ離れた問題なのだった。
第22話を読んで頂き、ありがとうございます!
てなわけで今回の幽霊はお姉ちゃんです!
違いますね!
雪菜お姉ちゃんは書いていてとても楽しい人になりました。
どういう役割で活躍してくれるか、楽しみでしょうがないですよ!
舞ちゃんはメイド全開ですね。
普段の元気な舞ちゃんが好きな方はごめんなさい!
それでは今回はここまで!
ブクマして頂いてる皆さん!
そうでない皆さん!
毎回読んで頂き、ありがとうございます!
次回は12/22を予定してます!
今後もお付き合い頂ければ幸いです!




