第2話 最高の演出は小道具から、最高の演技は役作りから
こんにちは!
明日葉晴です!
ゴールデンウィークなので連日投稿を。
私は厨二病です。
多分物心付いた時からそうなんじゃないかって位の筋金入りなんです。
まぁ要するにほぼ成長してないって事なんですけど…
なので私に厨二病を語らせるとちょっと長いですよ?
まぁそんなことはさておき、本編をどうぞ!
私は幽霊が視える。
「くくく…我は遂に人ならざる者になってしまったか…」
今もそこに不思議なポーズをとってる、中学生くらいの幽霊らしき男の子がいる。
「もう我は平凡な人間には視えぬ…これも闇を背負いし者の宿命か…」
私は平凡な人間だけど視えてるよ?
というよりその少年も、幽霊ということを抜けば、ちょっとだけ長めの黒髪、150センチくらいの身長、年相応の顔。言ってしまえば平凡だ。
「孤独に耐え、一人正義の為に戦う時が来たか…」
闇背負ってんのに正義の為に戦うの?あぁダメだ。終わらなさそうだし、声掛けよ…
「ねぇ、そこの君。生きてる?」
〇
私と少年は、とりあえず人気の無い公園に移動した。私が声を掛けた時、ほんの一瞬だけ凄い嬉しそうにした後、気難しい顔をし直したのはご愛嬌だ。
「とりあえず自己紹介ね。私は三葉茜。君は?」
私が名前を言うと不敵な笑みを浮かべて、ポーズをとった。
「くくく…よくぞ聞いた…我が名は『マスター・オブ・カオス』!誇り高き闇の聖騎士団の…」
「あ、そう言うのいいから。普通の名前」
私がいわゆる厨二病的な自己紹介をぶった斬ると少年はかなりしょんぼりとした。
「……………西京院白虎」
落ち込んだから素直に言うと思ったらまだなんか言ってきた。
「本当は?」
「…………これが本名」
「え?は?本当?」
「……嘘じゃないし」
顔を伏せてぼそりと呟く。かなり拗ねたようだ。
「えっと…ごめん」
「いい。慣れてるし…」
ダメだ…むしろもう未練増やしそうなんだけど…しょうがない。好きなようにやらせよう…
「あ、あー…マスター・オブ・カオス?の凄いとこ聞きたいなー!」
私はやけっぱちの棒読みでそう言うと、途端に顔を輝かせて、ポーズをとった。
「くくく…仕方あるまい…我の凄さは凡人にはすぐには伝わらんからな!だからこそ気付いた貴様は見所がある!」
人が変わったというか、スイッチが入ったというか、とにかく流暢に喋り出した。凡人とか若干腹立つけど。
「我こそは『マスター・オブ・カオス』!誇り高き闇の聖騎士団の団長にして、最強の守護者!剣と魔法において我の右に出る者はいなく、その実力は歴代最強と謳われたのだっ!どうだ!恐れ戦き、褒め称えるがいい!」
「わ、わー…凄ーい…」
どうでもいい…
なんだろう。台詞を聞いてる時、背中がむずむずする。中学生?の男子ってみんなこうなのだろうか…私の中学は普通だったような気がするけど。
「え、えっと…歳はいくつ?」
「十万十四歳だ」
どこの閣下だ…
リアル中学生だった。今のところ未練らしい未練が見つからずに私は頭を抱えた。
「えー…っと…なんか未練ある?」
というわけで私はストレートに聞くことにした。
「未練?…くくく。我はこの世に未練などない。そもそも、人間の肉体など仮の姿でしかないからな!」
いや、あるから今君がここにいるんだよ!
そう叫ぶことが出来たらどれだけ楽なんだろう。凄くストレスが溜まっていくのを感じた。
「じゃあやってない事とかは?やり残した事とか…」
「うむ?それを未練と言うのではないのか?」
なんでそこは頭回るの!?
遠回しに聞いた事がバレて、逆に問いただされた。思ったより頭は良いのかもしれない。
「うむ…まぁしかし、確かにやり残したことは…ある」
やっぱりあるんかい!もうやだ…疲れる。さっさと言って欲しい。
そう思い、私は視線で先を促した。
「我はまだ悪を倒していない」
えー…
「ごめん。もっかい言って?」
「我はまだ悪を倒していない」
聞き間違えじゃなかった…
「悪って…何?」
「悪は悪だ」
「ぐ、具体的に…」
「魔法や超能力を使い悪事を働く者達だ」
具体的になってるけど…実際にはいないよ…
幽霊が視える私が言うのも説得力がないかと思うけど、とりあえず生まれてこの方魔法やら超能力は見たことない。
どうしよう…未練が果たせる気がしない…
「あのね、び、ま、びゃっ…」
あぁっ!どっちも言うのはずいっ!
「んんっ!あのねカオス君、魔法とか超能力とかって言うのは無いんだよ?」
我はとりあえず妥協でカオスと呼ぶことにした。ついでに残酷な現実を言った。そしたら途端に泣きそうな表情をカオス君はした。
「で、でも…」
「無いんだよ。だから成仏して、早く楽になりなよ」
「うっ…うぅ…」
しまった!完全に心が折れた!現実を突きつけるのはちょっと厳しかったか!
完全に嗚咽を漏らし、キャラも崩れて泣き出すカオス君。もうこれは完全に白虎君だ。ややこしいな。
「うぅ…幽霊が視えるお姉さんはいるのに…」
「あぁ…まぁそうなんだけど…」
白虎君の呟きにどうしようか考えていたその時、私はあることを閃いた。しかしその考えは閃きたくはなかった。
でもなぁ…これ以外もう思い付かないしなぁ…
思い付いた方法は出来ればやりたくはない。だけどこれ以外は今は方法はない。
「お姉さんが超能力者なら良かったのに…」
あーあ。言ってしまった…これはもう…やるしかない。
「ふふ…はは…あははははっ!よくぞ見破ったな!流石は『マスター・オブ・カオス』!最強の守護者と言われるだけはある…」
私は最大級にテンションを振り切らせて、恥を捨てた。そして右手は肘に当て、左手は顔を隠すようなポーズをとり、台詞を吐いた。
やっちゃった…けどもう後に引けない。
「くっ…やはり貴様…邪悪な光天使、聖なる女騎士団の者かっ!」
私の台詞を聞いて、白虎君は一瞬キョトンとしたものの、すぐにカオス君…いや、『マスター・オブ・カオス』になり叫んだ。
てか、それは邪悪なの!?後半めっちゃ正義の味方っぽいよ!?あぁ!でも乗るしかない!
「はははっ!やはり知っていたか!油断させてから始末する予定だったが…仕方ない!この街を破壊するのを先に済ましてしまおう!」
「くそっ…どうする気だと言うのだ!」
えっ?どうする…どうしよう?
「と、とりあえず手始めにこの先の神社から破壊してくれるわっ!」
「そんなこと…我がさせぬ!」
いいぞ!この調子だ…けどその前に…
「しかしまだ私の力がたまっていない!具体的には…えっと…そう!大体三十分後に神社から破壊してやろう!」
「いいだろう…ならば我は先に待ち、そこで雌雄を決しようではないか!」
力溜まるの待つんだ…
「ふふふ…お前にそれが出来るかな?では破壊の時までさらばっ!」
「貴様の悪事は見事に止めてみせるっ!」
私達は去り際に台詞を投げつけ別れた。
〇〇
「あぁぁ…」
やってしまった…
私は公園からそれなりに離れた路地で頭を抱えて踞った。
もう色々わかんないよ…
幽霊を成仏させる為とはいえ、恥ずかしい台詞を散々言ったような気がする。記憶が若干朧気なのは、やけくそだったのとなんだか違う自分になったような感覚だったからだ。もう黒歴史確定だ。
はぁ…やっちゃったものはしょうがない。割り切って準備しよ…
そう思い、私は某格安を売りにする店で、パーティーグッズや手品用品、子供のおもちゃ等買い、スクールバックに詰めた。
これで準備はよし。くくく…さて、決戦の地に向かおう…って!私だいぶ侵食されてるな…
この感じが抜けなかったらどうしようかと思いながら、私は白虎君と約束した神社へと足を向けたのだった。
〇〇〇
「来たか…」
神社の鳥居の上に腕を組んで立つ『マスター・オブ・カオス』は不敵に笑い言った。
無作法だから止めなさいよ…
「ふふふ…お前もよく逃げずにいたな…それは誉めてあげるわ」
あ、やばっ…キャラがブレブレだ…
「我は逃げも隠れもせんっ!貴様を止める為ならば!例えこの身が砕けようともっ!」
しかし私のキャラは気にせず『マスター・オブ・カオス』は続けた。
「ならば止めてみるがいいわっ!この!えー…っと…そう!この世界破壊爆弾が爆発する前にっ!」
我ながらだっさいな…なによ世界破壊爆弾って…
私はそう言いながら、事前に水を入れてきた水風船をスクバから取り出して、神社のお賽銭箱の前に置いた。割れてないか心配だったけど、意外と丈夫なようで安心した。
「そっ、それはっ!もうすでに完成していたというのかっ…!くっ…やはりここで貴様を止めなくてはならんな…」
そう言いながら『マスター・オブ・カオス』は鳥居から跳び降りた。幽霊だから高いとこから跳んでも問題ない。
「貴様…名を聞こう…」
跳び降りた『マスター・オブ・カオス』は不思議ポーズを取りながらそう言ってきた。
な、名前!?やっば…決めてない…えっと…
「ふふふ…いいわ…冥土の土産に教えてあげる…私こそはっ!聖なる女騎士団の三番隊隊長!『マダー・トライリーフ』!お前を倒す者の名よっ!」
すっごい安直…
「ふっ…『マダー・トライリーフ』…いい名だ…」
お気に召したようで何より。
「ではっ!『マダー・トライリーフ』!勝負だっ!」
「えぇっ!『マスター・オブ・カオス』!勝負よっ!」
さて、どう出るか…
「くらえっ!“ダークショット”!」
そう言って両手を前に突き出す『マスター・オブ・カオス』。当然のことながら何も出ない。しかし…
「ぐっ!やるじゃない!」
私は防御をしたようなフリをして台詞を言う。
なるほど…やっぱりここからはイメージで補うしかないな…だけど私は一味違うよ?
「次は私が行くわよっ!受けなさいっ!“セイントバブル”!」
私がそう言いながらスクバから取り出したのはシャボン玉を作るおもちゃ。それでシャボン玉を作った後、小型の扇風機でシャボン玉を飛ばした。
「ぐはっ!…なかなかやるではないか…」
『マスター・オブ・カオス』はまともに食らったような様子を見せつつ、その目は輝いていた。
おぉ…効果覿面ね。
「ならば我はこの魔剣[ダーククリムゾン]で迎え打とう!」
そう言って、剣があるような素振りを見せる。
まぁ…剣も魔法もって言ってたし、そう来るよね…
「いいわよ!なら私はこの聖剣[ホーリーソード]で相手してあげる!」
私はスクバからサイリウムを取り出し、光らせてから構えた。そうするとよりいっそう『マスター・オブ・カオス』の目は輝いた。
「ふははっ!我の魔剣と貴様の聖剣、どちらが上か試してやろう!」
あ、そこは剣の腕じゃないんだ…
「ゆくぞっ!」
「来なさいっ!」
そう言うと『マスター・オブ・カオス』は走って私の所まで来て剣を振り下ろす。私はそれを受け止めた。
あれっ?なんだろう…なんか段々剣が見えてきたような気がする…心なしか効果音も…
そこから私達は白熱した戦いを見せた。私は剣に見立てたサイリウムを振ったり、魔法に見立てたクラッカーや手品など、趣向を凝らして戦った。
そしてしばらくしてサイリウムの光が切れたころ、私は肩で息をするくらいには派手に動いていた。『マスター・オブ・カオス』は幽霊だから体力そのものが存在しないのか、ピンピンしていた。
「くっ…ついに聖剣の力も切れたようね…」
「ふははっ!貴様もなかなかだったが、我の方が一枚上手だったようだな!」
とまぁこんな風に私から台詞を言える程には慣れた。そして、気付くと『マスター・オブ・カオス』の体は若干透けてきていた。
成仏の兆候…
「ふむ…いい勝負であったが、そろそろ終わりにしてくれよう…我が最強の魔法でなっ!」
『マスター・オブ・カオス』もその事を感じたのか、少しだけ切なそうな顔をした後、そう叫んだ。
「いいわ!受けて立つわよ!私も最強の魔法でっ!」
私はそう言ってスクバの中に手を入れて構えた。
「はぁぁぁっ!“ファイナルブラックインパクト”!」
「やぁぁぁっ!“ホーリーハイパーノヴァ”!」
お互いが魔法を叫んだ後、私はちょうど私と『マスター・オブ・カオス』の中央に来るようにかんしゃく玉と閃光玉を投げた。
互いの魔法がぶつかりあったように音が鳴り、光が瞬いた時、私は倒れた。
「ふっ…我の…勝ちのようだな…」
「そうね…私の負けよ…」
私が負けを認めた時、『マスター・オブ・カオス』は宙に浮き始めた。成仏の時がきたようだ。
「ふふふ…ならば我は天界に逝こう。貴様以外の聖なる女騎士団を全て倒す為にな…」
「やってみるといいわ…私以上に強い者達がいるのだから…せいぜい…足掻いてみなさい…」
「いや…我はやり遂げてみせよう…せいぜいこの地上で指を咥えてみているんだな!ではさらばだっ!………ありがとう、お姉さん…」
最期にそう言い残し、『マスター・オブ・カオス』…いや、白虎君は光となって消えた。
「はぁ…逝っちゃったかぁ…」
私は起き上がり、砂ぼこりを軽く払った。何度経験しても幽霊達が成仏した後はなんとも言えない寂寥感がある。
でも…成仏出来ないよりは…
過去に成仏出来なかった幽霊を思い出そうになり、途中で首を振って考えるのを無理やり止めた。
「さって、私も帰ろっと」
今宵の宴は楽しませてもらった…って…
「ふふっ」
私はまだちょっと抜けきらないキャラに、一人笑って家に帰っていった。
第2話を読んで頂き、ありがとうございます!
今回の幽霊は中二病でした。
適度に矛盾を抱えたあたりが中学生だと思うんですよね。
因みに茜ちゃんは演劇部とかではないです。
一応の設定では美術部です。
それで、今回は、99.9%くらいギャグに出来たかなって思ってます。
最後にほんの一滴スパイスを加えて。
なので前回の意気込みは私としては果たせたかと思います!
では、次回もお付き合い頂ければ幸いです。