第14話 自分が理解出来ない存在は案外身近にいたりする
こんにちは!
明日葉晴です!
お盆スペシャル!
二日目です!
今日はいつもよりちょっと長めです。
ホラーかとは聞かないで下さい。
お察しです。
では、本編をどうぞ!
男の人が扉を開け放つ音のすぐ後に、何かが割れる音がした。
「ぐっはぁ!なんだぁこれぇ!」
「今や!逃げい!」
舞の声を合図に私達は一斉に病室を飛び出した。
「ぶはっ!ぶふぁっ!」
廊下を出て振り替えると、私達のいた隣の病室の前が真っ白になっていた。
「くっそがぁ!」
〇
「はぁ…はぁ…」
「茜、ウチが変わろか?」
「ごめん…お願い…」
私は新井さんに肩を貸して走っていたから、かなり体力を消耗した。だから舞の提案は素直にありがたかった。
「すみません。足手纏いになってしまって…」
「気にせんといて。それよか、今後どうするかや」
そう。このあとどうするか。作戦を立てる前にストーカーが来たから策がない。
「同じ手は余程のアホやないと食らわんやろし、時間稼ぎも限界が来るわな」
「つまり?」
「今は打つ手なしや」
マジか…
今は何故か頼れる女子になっている舞の手詰まり宣言。その宣言は私以外の二人にも堪えたようで、途端に表情を暗くした。
「まぁそう落ち込まんといて」
「いやいや。落ち込ませた本人が何を言うよ…」
「今は言うたやろ?この状況も時が来れば終わんねん」
時がって…ずいぶん曖昧だなぁ…
「その時とやらはいつ来るの?」
「わからん。けど、そう遅ないと思うで」
さっきまでのはっきりと頼れる姿勢と打って変わって、ぼんやりとした表現が多くなった舞に疑問を覚えた。
「舞、何か隠してるの?」
「んー…いや、隠して…るっちゃあ隠してるな。悪いんやけどウチからは言えん」
「舞…」
「ホンマごめん…けど、逃げ切れさえすれば大丈夫やから。切り札っちゅうには他力本願なとこが否めんけど」
んー…そう言われてもなぁ…
「わかった。そこまで言うならあたしは舞を信じるよ」
「美和?」
「ここまで舞のお陰で助かってるんだもの。その舞が大丈夫と言うなら信じないと」
「おかん…」
「美和…そうだね。舞ごめん。私も信じるよ」
「茜…二人ともありがとうな…」
舞は嬉しさと申し訳なさを含めた様な笑い顔で私と美和を見た。
「ふふっ…三人はとても仲がいいんですね」
新井さんが舞の肩に捕まりながら微笑ましそうに私達を見ていた。
「せやろ。いつもはもう一人おるんやで」
「そうなんですね。なんだか私達の昔を見てるみたい」
「そぉかぁ!そこにオレも入れてくれよぉ!」
「「「っ!!」」」
足を止めていたわけじゃないけど、こっちは集団で動いてる上に負傷者を連れている。向こうが探し回っていたとしても行動力で圧倒的に負けている。その関係で追い付かれたんだろう。
「皆!逃げるで!」
「もぉ逃がさねぇよぉ!」
「新井さん!しっかり捕まりぃや!」
舞はそう言うと新井さんをおんぶして走り出した。
「私のことは構わなくてもいいです!」
「見捨てへん言うたやろ!二人も全力で走り!」
「「わかった!」」
私達はすっかり暗くなった病院を必死で走った。若さのお陰か足の速さはほぼ互角で、距離を離すことは出来ないけど、追い付かれるような感じでもないまま、体力だけが削られていった。
「舞っ…どこにっ…向かってっ…?」
「わからんっ!やけど、一階に行ければ窓叩き割って出れるやろ!」
「そうっ…だけどっ…階段はっ…」
「せやな!階段使うと距離詰められてまうやろな!けど行くしかないやろ!」
そうっ…だけどっ…!てか…なんで…舞…息切れて…ないの…?
「いぃのかぁ!?智子がどぉなってもぉ!?」
「はっ…!」
「せやった!」
「この階かもしんねぇよなぁ!?」
「ホンマにアイツ性根腐っとる!」
しかし、相手の言う通り妹さんも気掛かりだ。あの男がここにいる限りは、妹さんになにか出来ることはない。
「しゃあない!二手に分かれよ!ウチと新井さんでこの階周るわ!茜と美和は四階から探し!」
「でもっ…!」
「でももへったくれもあらへん!ウチはまだ余裕や!ほら!階段見えてきたから行くんや!」
舞はそう言うと後ろを向き、落ちていたコンクリートの欠片を蹴り上げた。その欠片は廊下の蛍光灯に命中して割れ、破片が男に降り注いだ。
「ぐっ…!!」
「ほな行け!」
「舞っ…!無事で!」
「絶対にね!新井さんも!」
「わかっとる!」
「二人とも、すみませんっ!」
そして、私と美和は二人で階段を駆け降りるのだった。
〇〇
私と美和は階段を降りた後、片っ端から病室を開けて行った。幸いにも、と言っていいかわからないけど、あの男は舞達を追ったようで、私達の方には来なかった。
かと言って、のんびりはしてられないよね…!
病室を開けて隅々を見て回っての繰り返し。病室は広くないけど、大きな病院の為か部屋数が多い。
「見つかんないね」
「こう部屋数が多いと面倒だね」
四階の部屋をすべて見回り、妹さんがいないことを確認。次は三階へ。
「ここも四階と同じだね」
「そうだね…あ、でも個室じゃなくて大部屋みたい」
「ほんとだ」
階段から一番近い部屋を開けると、ベッドが六つほど並んだ大部屋だった。
「これは個室より時間掛かるね」
「早く探さなきゃなのにもどかしいね」
今こうしている間にも、きっと舞達は逃げ続けているのだろう。それを思うと気持ちが焦る。
「次行こう」
「わかった」
ベッドの裏など一通り部屋を調べ、隣の部屋に向かう為に廊下を出た。
「別のみぃつけたぁ!」
「なっ!」
「きゃあぁぁ!」
すると階段から丁度降りてきた男と鉢合わせした。
「美和こっち!」
「うん!」
部屋の捜索よりも逃げることを優先。私と美和は一目散に男と逆の方向に走り出した。
「舞と新井さんはっ!?どうしたのよっ!?」
「さぁてぇ!どぉだかなぁ!確かめに上に戻ったらどぉだぁ!?」
「コイツっ…!」
おそらくこの男にとっては、逃げられることが一番不味いのだろう。だから私達に上に戻らせるように曖昧にしてるのだろう。
てことは…十中八九、上の階には妹さんはいない…調べられても何も出てこないから上にも留まらせようとしてるんだ…
気色悪い顔を浮かべる割に意外と策士なのだと認識しつつ、男から逃げる。
「待ぁてよぉ!」
「そう言われて待つわけないでしょ!」
と、勢いよく啖呵を切ったものの、もうすぐ行き止まり。手前の階段で上か下に行かなきゃならない。
舞達を確かめる為に上か…信じて下か…
そう迷ったのも一瞬。
「待つんはお前や!このタコ!」
「がはっ!」
掛声と共に階段から飛び出してきた舞は、かなりの速度で私達とすれ違い、男に飛び蹴りを食らわせた。
「「舞っ!」」
「下に行くで!」
「「わかった!」」
飛び蹴りを食らわせた舞はすぐさま体勢を立て直し、私達の横に付いた。そしてそのまま三人で二階へと降りるのだった。
〇〇〇
「皆さん!」
「「新井さん!」」
二階へ降りるとすぐに新井さんとも合流した。
「皆はよ離れよ!」
またしても舞は新井さんをおんぶして走り出した。
「あの男意外にタフやわ…何べんぶちこんでも復帰早いわ」
「舞って結構好戦的だったんだね…」
新事実に驚きつつも、足を止めずに走る。
「それよか、四階と三階どおやった?」
「収穫なし」
「さよか。残るは一、二階やな。あと少しや」
「造りとしては、上より広くて複雑になってるけどね…」
二階は診察室などがあるのか、上の階より広く、廊下も分かれ道などがあって複雑になっていた。単純に考えれば、一階も同じような造りになっているのが想像出来る。
「逆に言えば向こうも見つけ難くなるちゅうことや。最悪の最悪、飛び降りても死なんやろし」
「本気?」
「こないな場面で冗談言わんよ」
「だよね…」
そうならないことを切に願おう…
流石の舞でもこの場で冗談を言えるほど無神経でもなかったようで、そのことが逆に事態が切迫していることを痛感させた。
緊張感の漂う中、慎重に二階を回って行き、最後の部屋を調べ終わった。
「何もなかったね…」
「ということは…」
「一階が大本命やな」
何も見つからなかった脱力感と、次の階が最後だという希望がないまぜになる。
「さて、奴がどこにいるかわからん以上、慎重に動かなあかんのやけど…」
「けど?」
「正直な話、このまま一階のどっかの窓から外に出んか?」
「どうして!?」
「茜、ちょっと落ち着こうよ」
「だって美和!」
舞の提案に私は腹が立った。
「茜、とりあえず舞の話も聞こうよ。舞だって考えなしじゃないと思うよ」
「んー…でも…」
「私は構いませんよ」
「茜」
「わかった…騒いでごめん。舞、話して」
「新井さん、美和、ありがとう。茜すまんな」
「いい。早く」
私は提案には納得していなかったけど、新井さんと美和が話を聞こうと言ったから、ひとまず聞くことにした。
「一階には奴が待ち伏せしとると思う。その中で妹さんを探すんはかなりのリスクや」
「それはわかる。だけど…」
「まぁ待ってや。そんで多分やけど、もうすぐで切り札が来ると思う。そおなったら、探してリスク抱えるより、迅速かつ安全に解決するわ」
「でも…その間に妹さんに何かされたら…」
「……何かするんやったら、最初の段階で人質にでもなんでもしとるやろ。やからもう手を出すこともないはずや」
「でもっ!私達が逃げたことでっ!」
舞の話に私はついに我慢が出来なくなって叫んだ。
「オレは別にぃ逃げても構わんぞぉ!?」
皆が私に集中していたせいか警戒が緩くなっていて、男が来たことに反応が遅れた。それによって、今までで一番接近された。
「ちぇあぁっ!」
「うおぉっとぉ!」
「ちっ!」
いち早く反応した舞が飛び出して、回し蹴りを繰り出した。だけど、男も学習ギリギリで躱した。
「皆!特に茜!折衷案や!ウチがコイツ時間いっぱい抑えるから、はよ脱出せぇ!」
「舞はっ!?」
「気にすんなや!慣れとる!はよ行けっ!」
「茜っ!きっと考えがあるんだよ!あたし達は足手纏いなんだよ!行こう!?」
「彼女は私をおぶりながらも深井に打撃を入れてました。万全に動けるならきっと…」
「わかった…!舞っ!絶対絶対無事でね!」
「任せっ!」
そうして、舞を残して私達は一階へと降りていった。
〇〇〇〇
一階に降りた私達はまず目を疑った。
「何…これ…」
階段からすぐの窓はバリケードのようにものが積まれていて窓から出れる状況ではなく、防火か防犯か定かではないけど、シャッターも下ろされていた。
「とにかく、行ける方にいこ?」
「そうだね…進むしかないね…新井さんは私がおぶります」
「いえ、肩だけ貸して頂ければ…」
「無理しないで下さい。私もおぶれますから」
「すみません」
私は新井さんをおんぶして歩き出した。安全に進める先は暗い廊下だった。上の階とは違い廊下の両側に部屋があるためか、月明かりも入らず、よりいっそう暗くなっていた。
「部屋…全部鍵が掛かってる…」
美和が部屋の扉に手を掛けて調べていったけど、どこも鍵が掛かっている様だった。
「きっと深井がやったのかもしれません。私達が二階を探ってる間、ずっと準備していたのでしょう。あの場所から出てきたのも偶然ではなく、こっちの場所に誘いだす為でしょう」
「私が騒いだからだ…」
私が大きな声を出したせいで居場所が割れて、こんな罠が出来たのだろう。
「いえ、きっとそれは違いますよ。ここまで大がかりなものはあの短い時間では出来ないと思います。元々ここまで誘い出すつもりだったのでしょう」
「お気遣い、ありがとうございます」
「お礼を言うのは私のほうです。そして謝罪も。無関係なのにここまで…」
「二人ともそこまでにしましょう?今は外に出るのが優先です」
私と新井さんの堂々巡りになりそうなものを美和が止めた。
「道がこっちにしかないなら行くだけだよ」
「そうだね。私達が早く脱出出来れば、それだけ舞も早く逃げられるもんね」
「そういうことだね」
そして私達は歩みを早めて進んだ。けど、どういう構造なのか、少し迷路のような造りでなかなか外に出られない。
「ここ、さっきも通った?」
「わかんない…」
「両側が扉、分かれ道は直角ですね。看板も取り外されてますし」
「扉蹴破る?」
「そらぁ困るなぁ!」
「なんでっ!?」
舞が止めていたはずの男が目の前に現れた。手には今まで持ってなかった斧が握られていた。
まさか…あの斧で…!?
「舞をどうしたのっ!?」
「さぁてなぁ!?」
「このぉっ!」
「茜ダメだよっ!逃げよっ!」
私が飛び出そうとしたところを美和に止められた。
「でもっ!」
「ここで皆捕まるのが一番だめなんだよ!早く!」
「くっ…!」
美和に諭され、私は反転して走り出した。その後ろで美和も走り出した。
「鬼ごっこももぉ終わらせよぉかぁ!」
男も私達の後ろを追ってきた。今は私が新井さんを背負ってるせいか、徐々に距離が縮まってくる。
「くっ…!不味い…!」
「私を置いていって…」
「そんなこと言わないで捕まって下さい!」
「でも…」
「そぉそぉ!諦めろぉ!」
「黙れっ!」
男の言葉を一言で遮り、私は歯を食い縛った。
舞も気になる…けど、逃げるしかない…でも追い付かれる…道もわかんない…どうする…どうする…!
「諦めないでっ!右ですっ!」
「へっ…?はいっ!」
不意に新井さんが方向を指示してきた。さっきまでの弱気な感じがなくなっていたのが訳はわからなかったけど、その声に従って道を右に曲がる。
「左っ!」
「はいっ!」
「また左ですっ!」
「はいっ!」
次々に指示されるままに進むと正面に扉が見えた。そこから月明かりも射し込んでいた。
「外だっ!」
「ほんとだっ!」
「よく着けましたね!」
えっ…?
新井さんの指示でこの扉まで着いたのに、新井さんが驚いたことに私は驚いた。
「待ぁてぇよぉ!行くなぁ!」
「待つかバカ!」
そんな疑問もつかの間、男の声がすぐ後ろから聞こえてきて思わず言い返した。それで私は疑問を一旦追いやった。
「あたし開ける!」
「お願い!」
美和が速度を上げて扉に近付き蹴り開けた。美和の普段からでは考えられなかったけど、今はそんなことで驚いてる暇もない。
「外っ!」
建物から出ると、裏の雑木林に出た。
「すぐ左に!」
「美和!こっちだって!」
「わかった!」
再び新井さんが指示をしてきて、それに従って進んだ。一瞬振り向くと、男が斧を振りかぶりながら飛び付いてた所だった。その斧は正面の木に深く突き立てられていた。
「そのまま建物に沿って走って!」
「はいっ!」
「あの!さっきからどうしたんですか!?」
「えっ!?だって新井さんが…」
またしても新井さんが不思議なことを言ってきたから、私も聞き返そうとした。
パラパラパラパラパラパラ…!!
しかし正面の門に着いたあたりで、プロペラの様な轟音が頭上から聞こえてきて、最後まで聞くことは出来なかった。
何っ!?
轟音の正体を確かめる為に見上げると、ヘリコプターが降りてくる最中だった。その光景に、ただでさえ混乱していた私の頭は限界を超えた。
何何なんでどうして!?何が起きててなんでヘリコプター!?
「茜っ、美和っ、無事かしら?」
「「小夜!?」」
ヘリコプターから拡声器を持った小夜が顔を出し、いつもの調子を崩さずに安否を確認してきた。
そのままヘリコプターは着地し、小夜がゆったりと降りてきた。
「なんで小夜が!?てかなんでヘリコプター!?どうしてここが!?」
「茜、落ち着きなさい。誰も連絡つかないから心配してきたのよ。あなた達、ここにくると言っていたでしょ?」
「いやそうだけど!そうじゃなくて!」
本当にいつもの調子を崩さない小夜に思わず叫んでしまった。
「ところで茜が担いでる方は?」
「あ、この人は新井さん。ストーカーに追われてて…そうだ!舞がそのストーカーにやられたかもしれなくて!」
「茜、落ち着きなさいって。そのストーカーとはあの方?」
小夜が指を指した先に、斧を引摺りながら歩いてくる男がいた。
「そう!あれ!逃げないと!でも舞と妹さんも探さないと」
「状況はわからないけれど…舞があんな貧相なのに負けるわけないわ」
「え?」
ガシャン!!
次はなに!?
小夜の謎の自信を語った後すぐに、窓の割れる音と共に人影が二階から飛びだしてきた。綺麗に私達の前に着地した人影は、月明かりで照らされると舞だとわかった。
「「舞!?」」
「あら舞、ずいぶん派手な登場ね」
「小夜。遅かったやないか」
「それはこちらのセリフなのだけれど」
小夜は小夜で二階から出てきた舞に驚かず、舞は舞で小夜がいることに驚くどころか、いるのが当然のような態度だった。
「大丈夫なの!?」
「あー…アイツ懐中電灯もっとって、顔照されて怯んでもうた。その隙に逃げられてな」
「そうだけど!そうじゃなくて!」
もうっ!わっけわかんないっ!
「騒いでていいのかしら?彼はもうすぐ近くよ」
「そうだった!早く逃げよ!あぁでも妹さんが!」
「そうね…舞、茜を落ち着かせる為に彼を止めて頂戴。命令よ」
小夜がそう言うと舞の雰囲気が一瞬で変わった。
「畏まりました。お嬢様」
マーケットの時と同じ雰囲気…
いつもの関西弁が抜け、小夜に対して綺麗にお辞儀をした舞は、すぐに反転し男に向かって行った。
「おぉらぁ!」
「舞っ!」
「大丈夫よ」
男が大きく振り抜いた斧を軽々避け、舞は男の鳩尾に打撃を入れた。
「ぶっ…!」
その一撃のみで男は倒れた。
「終わりました。お嬢様」
そして何事もなかったかのように舞は反転しお辞儀した。
えぇ…
最早混乱が一周して、その感想しか出なかった。
〇〇〇〇〇
気絶した男を拘束した後、私達は新井さんを含めて円になった。
「一回状況を整理したい、です!」
「私も賛成よ」
「一番の疑問が何を言う…」
私の提案に小夜が乗っかったけど、私としては小夜を一番問いただしたい。
「私の何が疑問なのかしら?」
「全部だけど…まずなんでここに?」
「舞の帰りが遅かったからよ」
舞の帰りが…?
「舞は私の家のメイドなの。ついでに言えば私のボディーガードでもあるわ」
「えぇっ!?」
いやっ!?えっ!?メイド!?ボディーガード!?次元が違い過ぎるんだけど!?
「せや。ウチが言っとった切り札っちゅうのが小夜のことな。ウチが帰らへんかったらここに来ると思ったんや。はっきり言えへんかったんは、一応秘密やったからやね」
いつもの口調と雰囲気に戻った舞は、これまでぼかしていたことを説明した。
「えっと…まぁ舞と小夜関連はもういっか。これ以上は聞くのが怖い」
とりあえず次元が違う話だと言うのはわかった。
「もぉええんか?」
「あ、待って。もう一個。どっちが素の舞?」
そう。明るい舞と無機質な舞。どっちが本当なのか気になる。
「安心して頂戴。今の舞が普通よ。仕事中は気を張らせてるのよ」
「それを聞いてとても安心したよ…」
普段のアホっぽいのが演技だったら凄い怖い。
「さて、新井さん。どうして一階の迷路を、あの男に終われるまで指示しなかったんですか?」
「えっ…私、指示してませんよ…?」
「えっ…?でも…」
「それは私が指示したからですよ」
「えっ!?」
不意に新井さんと同じ声で、新井さんがいるわけがない上空から聞こえてきた。そして、上を見て私は納得した。
「あー…そうなんだ…そっか…」
「茜…どうしたの?」
「うん…いや…新井さん、すみません…」
「はい?どうしたんですか?」
「茜…まさか…」
察しのいい美和はどうやら気付いたようだ。
間に…合わなかったんだなぁ…
「信じられないかもしれませんが、私、幽霊を視ることが出来て…話せるんです…」
「えっ…?はい…?」
「そして、新井さんの妹さんがそこに…幽霊としています…」
「えっ…そんな…」
「嘘だと思うかもしれません…でも…確かにそこにいるんです…」
私は上を視上げ、既に光始めている妹さんを視た。
「そか…やっぱりそやったんやな…」
「舞は…予想してたんだね?妹さんが亡くなっていること…だから先に逃げようって…」
「可能性としてな…確信はなかったんやけど…」
私はそれで舞があの提案をしたことに納得した。
「あの…本当に智子…妹は…?」
「はい…」
「幽霊になっているかはさておき、亡くなっているかは病院を調べればわかるでしょう。私が手配しておきます。すぐに捜索させますので」
そう言って、小夜は携帯を手に離れて行った。
「小夜みたいに信じられないかもしれません。ですかが、妹さんはもう成仏します。言葉を直接届けるなら今が最後です」
「…信じます。確かに妹は私にそっくりでしたから、間違えるのも納得できますし」
そう言ってから新井さんは私と同じ方向を見た。
「智子、守ってあげられなくて、ごめんね。早く見つけてあげられなくて…本当にごめんね」
「姉さん…いいよ…姉さんのせいじゃないから…それよりも、姉さんが助かって良かった。あの男が狙ってるって聞いて、気が気じゃなかったから」
そうか…それが未練で…
「妹さんは…新井さんが助かって良かったと…死んだのは新井さんのせいじゃないと…言ってます…」
「智子…ありがとう」
「姉さん…ありがとう。皆さんも姉を助けて頂いて…ありがとうございます…」
その言葉を最後に、妹さんは光となって消えていった。
「成仏…しました…」
「そう…ですか」
新井さんは妹さんが消えていった空をしばらく見つめていたのだった。
〇〇〇〇〇〇
翌日、小夜から新井さんの妹、智子さんが一階の部屋で遺体で発見されたことを聞いた。
ストーカー男、深井謙治は小夜が警察に引き渡したらしい。情状酌量とかを与えないようにするそうだ。
これにて、廃病院での一連の事件は解決した。
因みに、最後まで謎だった玄関が開かなかった件は、強い衝撃が加わったせいで鍵のロックが外れ、扉が床に固定されたらしい。つまりは舞が勢いよく開けたせいだ。
第14話を読んで頂き、ありがとうございます!
突然のアクション…
サスペンスの次はアクションですよ…
なんですかね。
私にはホラー書けないんですかね。
まぁさておき。
小夜ちゃんと舞ちゃんの関係がさらっと判明しました!
舞ちゃんはハイパー出来る女なんですよ。
でも勉強は出来ないです。
素でアホですね。
さて、今回はここまで。
次回は8/25予定です。
ブックマークして頂いてる皆さん、そうでない皆さん。
いつも読んで頂き、ありがとうございます!
次回もお付き合い頂ければ幸いです!




