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訓練2

ピピピビピピピピピビピピ

少し肌寒い朝の空気に4人の携帯のアラームの音が振動する。

ひとつずつ音が消えていくが3つ目に音が消えてからなり続けている。

カズヤだ。

軍隊に入る前から朝には弱いのだ。

カズヤのアラームを止めたのは豪だった。

3人が寝静まったあとこっそりトレーニングルームから帰ってきていたらしい。


「ふぁーーあ。こいつほんとに起きねーな。」


ひとつ大きなあくびをして豪が言う。


「まるで眠り姫のようだ✨」


王子のこのキャラは早朝だろうと関係ないらし

い。


「朝からそのテンションは結構きついな。今日から毎日これか。」


「そんなさびしいこというなよー。」


「おはようございます。」


「おっ。なぎさも起きたか。」


なぎさも相変わらずだ。つまり、この部屋でカズヤだけが朝に弱いということとなる。この事実はこれから長いことカズヤを苦しめた。


「さてと。朝飯ももうすぐだしそろそろ食堂行くか。」


「うん。そうだね。」


「はい。」


カズヤをおいて3人は食堂へと向かった。





目を覚ますと寝た時と天井が違う。そんなことはなかなか起こることは無い。だが、こうして目の前で起きている。たしかにベッドの上で眠ったはずのカズヤは廊下でアダムの顔を見上げながら寝転んでいた。


「お、おはようございます。」


「ああ。気持ちの良い朝だな。廊下の寝心地はどうだったかね。カズヤくん。」


「すこーしつめたいかなー。」


「全員が飯を食い終えるまで外を走っていろ。分かったな。」


「それでは俺の飯は、」


「無論なしだ。」


こんなことになったのも全て豪と王子のせいだ。

なぎさはそんなことをしないと分かっているので犯人は明確だ。

復讐心だけを糧に運動場を走り回る。




その頃食堂では。


「カズヤがまだ来てないなあ。」


リョウの独り言にマリが答える。


「寝坊だろうと推測する。」


「あぁ。確かにそうかもなあ。カズヤはまだ寝坊なんてやってるのか」


リョウが呆れたように言うとアダムが食堂へ入ってきた。


「今朝廊下で寝ているアホが私に見つかり外を永遠と走り続けている。こんなことを言うのはあほらしいのだがお前たちも廊下で寝るよるな真似はするなよ。以上だ。」


アダムが退出してゆく。

そして、マリもリョウもそれがカズヤだと瞬時に悟った。



ルームメイト、兄妹が暖かい朝ごはんを楽しんでいる頃カズヤは1人、運動場をひたすら永遠と走り続けていた。


「ぜぇ、ぜぇ、はぁ、はぁ、」


走り初めは豪たちを愚痴っていたがもうそんな元気すらない。


バタン!


復讐心で走っていたカズヤだったがそれも限界を迎え運動場の砂に倒れ込んだ。

そんな哀れなカズヤの元へひとつの足音がちかづいてきた。それが真横に来るまでカズヤは気づかないほど疲労していた。


「カズヤくんだよね?大丈夫?」


そこに居たのは結菜だった。

カズヤが永遠と走らされていると聞き水と少しのパンを持ってきてくれたのだ。


「これ、持ってきたんだけどたべれる?」


声は出なかったので頷くことで意思を伝える。


「よかった。まだ食べる元気が残ってて。」


結菜から受け取った水を半分飲み干しパンにかぶりつくそして残った水でパンを流し込む。


「そんなに焦らなくてもパンは逃げないよ。」


横にしゃがみこみそう言う。

とてもいい子だ。やっと喋るためのエネルギーを手に入れたカズヤはこの時初めて結菜と言葉を交わす。


「サンキュな。まじで危なかったわ。」


「でも、今日は訓練なしの説明会で良かったね。」


「ほんとだよ。このあと訓練だったらアリの餌にでもなってたかもな。」


「アダムさんに休ませてくれるように頼んであげようか?」


この子までもアダム呼びなのかと考えるほどの元気は戻ってきていた。


「いや、それはいいよ。俺もそれなりの覚悟でここに来ている。」


「そっか、ならいっしょにがんばろう!」


そして、顔を見合わせ微笑む。


「おいお前!誰が休んでいいと言った!」


アダムだった。


「も、申し訳ございません!」


「まあいい。もうそろそろ説明会が始まる。準備を済ませろ。少しでも遅れたらもう一度今のやつをやってもらうからな。」


その鬼のような言葉に敬礼をすることしか出来なかった。



そして、兵舎にもどろうとあしをすめていると、


「カズヤ、少し体を休めたほうがいい。」


「そうだよカズヤ。」


マリとリョウだった。


「ありがとう。だが、すぐに説明会だ。行かねーと。」


「無理は体に良くない。ので、気おつけて。」


「倒れたら元も子もないからね。」


「ああ、ありがとう二人とも。」


そんな会話をしていると結菜が


「3人はどういう関係なの?」


「兄妹だ。」


カズヤが答える。


「えー!てことは3つ子なんだ!今どき3人兄妹でもめずらしいのに。」


そう、結菜が言うように少子高齢化がすすむエセナパージでは3つ子などほとんどない。


「まあ、あんまいねーな。」


「じゃあ、次は君たちの関係の番だね。」


「カズヤはわたさない。」


「さっき倒れてたカズヤくんに朝ごはんの残りと水をあげただけだよ。」


「ゆ、結菜の言う通りだ。なんにもないからな。」


「なーんだ。つまんないの。」


「カズヤにはまだ早いということ。」


「ルームメイトも兄妹もそんな話ばっかりだな。」














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