表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
王子様は恋慕に落ちて  作者: 桂木イオ
PR
6/6

終演

終演


 北原高校演劇部の「人魚姫」は無事に演目を終えることができた。


 開演すれすれで、しかもずぶ濡れで戻ってきたため、俺は赤木に怒鳴られ、誠也にしかられた。


 土壇場での演技ではあったものの舞台は大会以上の出来で、文化祭が終わった後も、学校ではしばらくの間舞台の話で持ちきりだった。


 3年生は文化祭の発表で引退が決まっていたから、もう俺が王子様として舞台に立つことはない。


「ちっ。煙草切らした。唐都木、持ってない?」


 昼休み、中庭で暗記カードを捲っていると、機嫌の悪そうな赤木がどかりと隣に腰を降ろし、購買で買った牛乳を啜っていた。


「生徒が持っているわけないでしょう? 昼練、見に行かなくていいんですか?」


「あいつらで勝手に出来るからいいの」


 空を見上げると、赤とんぼが飛んでいた。赤木は口寂しいのか、牛乳パックのストローを咥えて遊んでいる。


「先生は、アンデルセン童話の『人魚姫』どんな物語だと思います?」


「は? 突然どうした唐都木。らしくない質問だな」


「いいから答えてくださいよ」


「どんな物語、ねえ・・・」


 ストローをパックに突き刺し、赤木はほうと息をついた。


「片思いの物語じゃないかな。王子が人魚を選べば、姫は恋に敗れるし、姫を選べば、人魚は消える。何も知らずに幸せになるのは、王子ただ一人だよ」


「・・・」


「でもな、唐都木。僕は思うよ。王子がもっと察しがよかったらってね。ありゃ鈍感すぎ」


 ・・・どうしてか、赤木が俺を見下すような、蔑むような目で見ている。


「・・・赤木先生。俺、なんかしました?」


 予鈴が鳴る。赤木は大きくため息をつくと、持っていた古典の教科書の角で頭を小突かれた。


「こりゃ、相川も苦労するわ・・・授業遅れんなよ」


 俺にさりげなく空の牛乳パックを押し付けると、赤木は教室へ向かった。


 空には叢雲が、魚の鱗のように一面に広がっている。


 クレアもこの空を眺めているのだろうか。そんなことを呑気に考えてる俺が相川の気持ちに気づくのは、少し先の話だった。


北澤様の綺麗な人魚のイラストをもとに、お話を書かせていただきました。


大切なイラストを拝見させてくれた北澤様、最後までこの物語を読んでくれたあなたに、心より深い感謝をもちまして、終演とさせていただきます。


閲覧ありがとうございました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ