『冒険者』
冒険者ーー好奇心や探求心を持った者が未知の世界や生物を求めて活動する。
帝都ヘサムルのギルド会館は大手である。大手である故に選りすぐりの冒険者や駆け出しの冒険者が集う。
また、大陸全土から依頼も殺到するので、ギルド会館は冒険者の登竜門としてその名を馳せている。
少年のオリバー・レオナルドもこのギルド会館に登録をしようとしていた。
「……人が多いな」
ギルド会館のロビーでは多種多様な種族や役職の者が行き交い、魑魅魍魎の世界が広がっている。
幾つもある受付の順番に並びながら、辺り物色する。傍から見たら、まるで田舎から上京したての少年のような様だ。
「次の方どうぞー」
オリバーの番である。
「冒険者の登録をしたいのですが?」
「冒険者の登録ですね、この書類の記入と銀貨二枚を頂戴致します」
書類には名前、役職、年齢、性別、同意書などの記入欄がある。
オリバー・レオナルド、剣士、十六歳などと記入をした。
オリバーは記入した書類と銀貨二枚を受付嬢に渡した。受付嬢は書類に目を通して、オリバーを
訝しむ目で見た。
「剣士ですか……」
それもそのはず。オリバーは漆黒のローブを纏い、剣士とはほど遠い身なりをしている。
剣を携えているのは見えるのだが、剣士は前衛職であるため、機動力が求められる職だ。
「まぁ、登録をしておきます。また何かご不明な点など有りましたら、こちらにいらして下さい」
最後は雑にあしらわれて、銅印と冒険者の心得を渡された。
大手ギルド会館となると、一人が対応する冒険者の人数は一日何百人にも上る。
大物冒険者ではない限り、一人一人に気を使う余裕などないのだ。
オリバーは冒険者の心得を読む。
冒険者の位は上から金印、銀印、銅印となっている。位に応じた依頼でなければ受理されない。位は依頼をこなしていけば、昇格できる。
依頼の掲示板に足を運ぶ。位ごとに紙が貼られており、依頼内容や報酬額などが書かれている。
ーー何を受けるか、
オリバーは早速、何か依頼を受けようとするが、迷う。それに依頼の回転率が高い。迷っていると、他の冒険者に依頼が取られてしまう。
「……これにしよう」
隣街の初級魔物の討伐依頼である。足がないオリバーにとっては、帝都から遠い地域の依頼が受けられないのは、困った問題だ。
「行くか」