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『誕生』
「お願いだ…許してくれ、金と女ならいくらでもやる! だから……」
黒いローブに黒い仮面を身に纏った者が、体格の良い男の首を掴んでいる。
傍からみれば、図体、腕力、瞬発力、筋力、肉体能力では体格の良い男の方が長けているのは一目瞭然である。
しかし、黒ずくめの者は片手で軽々と男を持ち上げている。異様な光景である。
「死ね」
男の必死の命乞いを切り裂くように言い放った言葉は冷たく感情が孕んでいない。
「あぁーあ゛」
悲痛な叫びとともに男は漆黒の炎に包まれ、跡形もなく燃え尽きた。
漆黒の炎が夜空に霧散していく。
森の木々が風に揺られ、ザワザワと音を立てている。静寂が戻り、黒ずくめの者は夜空を仰ぐ。
次々と罪人が処刑されていくこの出来事は、複数の目撃者の証言から
ーー漆黒の炎と人々は呼ぶようになった。