Task1 冒険者達を足止めしろ
TASK1 冒険者達を足止めしろ
パンティ・スーが現れてから、数分後、馬車の進行方向が突如爆発した。
鉄馬は、本物の馬のように怯えることはないのだが、それがメリットでもありデメリットでもある。全ては手綱を握る人間のコントロール次第であるのだ。
パンティ・スーは物陰に隠れて、その様子を見る。
「追いついた! 」
そう叫んだのは女戦士であり、金属製の軽鎧にアサルトライフルを構えている。意志の強そうな瞳を見る限り、気も強そうである。
「ここで逃げられると思うな! 」
髪と瞳が黒で、見る限り、東洋人といった様子のローブを着た少女が、二丁拳銃を構えている。
「いい加減、鬼ごっこは終わらせましょう」
今度はドワーフの少女、小柄だが、それに似合わない大きなグレネードランチャーを構えている。先ほどの爆発は、彼女の攻撃によるものだろう。
「ええ、鉄馬も限界ではないでしょうか? 」
さらにエルフの少女がスナイパーライフルを構えていた。金髪碧眼の整った顔立ちで、清楚な雰囲気をまとっている。
「いい加減にするんですね」
狼の亜人間がサブマシンガンを構えていた。五人組で全員が女性のパーティーのようだ。
パンティ・スーがこの世界についての情報を思い返す。
一見すれば剣と魔術のファンタジーの世界であるが、重火器に関しては異様なほど発達した世界。鎧を着込んで、銃で撃ち合う違和感丸出しの世界だ。魔王や魔物さえも銃で撃ち抜く世界である。
「ご機嫌は如何か? 私だ」
パンティ・スーが、不可解な挨拶とともにスッと姿を現した。
「え? 何を言って、こいつ、いつの間に……」
魔法(物理)使いの少女が驚く。だが、パンティ・スーはそれを無視した。
「いかなる理由があるかは知らない、どのような事情があろうと俺には関係ない。あくまでも、俺は報酬のために戦うだけだ。さぁ、行くと良い」
「任せた! 」
そういい残し、ジョージ・斉藤は再び鉄馬を駆けさせた。
「ま、待て」
「行かせない」
パンティ・スーが立ちふさがる。
「そこをどけぇ! 」
女戦士がアサルトライフルをぶっ放す、銃声とともに弾丸はパンティ・スーに向かっていくが、パンティ・スーは右手を自分の胸に当てて、無造作に女戦士へと歩み寄っていく。
弾丸が当たるはずであったし、当たったはずだったが、パンティ・スーは何事もないように歩いてくる。
「はぁ!? どうなって」
パンティ・スーは左手でアサルトライフルの銃身をつかむと、スッと引き抜いて、どこか遠くへ投げてしまった。
「ちょっと、油断しないで! 何、あっさりと奪われているのよ」
ドワーフの少女が叫ぶが、
「わからない。急にライフルの感触が無くなっ」
パンティ・スーの蹴りが女戦士の腹部に直撃し、女戦士は数メートル吹き飛ばされる。
「暢気に話している場合ではないと思うが? 」
「みんな、気をつけろ! こいつ、強い! 」
そこからは全員がパンティ・スーに狙いをつけていた。
「撃て! 」
一斉に打ち出した瞬間に、パンティ・スーは走り出していた。背後ではグレネードが爆発している。まずは、最も近いドワーフの少女に狙いを定める。丁度、リロードしているところを狙い、先ほどと同じようにグレネードランチャーを奪い取り、あっさりと放り投げてしまった。
「な、なんじゃ? 急にすっと引き抜かれた!? 」
「嘘!? ドワーフに力で勝った!? 」
「引かないか? ならば」
そこからはパンティ・スーの独壇場であった。幾ら撃っても、怯むどころか血を流すこともなく、怪我一つ負わない。それでいて、冒険者達の武器をあっさりとつかんでは放り投げていく。気がつけば、冒険者達は一切の重火器を失っていた。
絶体絶命の危機であるが、パンティ・スーは呆然と自身を眺める冒険者達を前に胸元に手を当てて、小さく礼をして
「では、ご機嫌よろしく」
と言い残し、藪の中に入り込んで消えてしまう。
「お、追わないと」
「いや、その前に武器を回収だ。幾らつぎ込んでいると思っているんだよ」
冒険者達は一度追跡をあきらめざるえなかった。