出会い
この時点では見るからにおかしい女性との対話です。
これから書くことはT氏の了承を得て書いている。もちろん、T氏にこの原稿を読んでもらい、T氏にとって公開されたくないものやT氏の意思にそぐわない表現は使用していない。※途中インタビュー形式に切り替わることがある。
さて、まずは現在のT氏のことについて少し書いていこうと思う。
名前:T(旧姓:K)
性別:女性
年齢:29歳
既婚者
今書けるのはこのくらいだ。
最初にT氏が私の部屋を訪ねたのは、彼女が22歳になる少し前のことだった。その時はまだT氏は独身だったので「Kさん」と私は呼んでいた。
初日で緊張していたのか私の部屋に入ることに戸惑いがあったのか、Kさんは部屋のドアの前で立ったまま中に入ろうとしなかった。
私は彼女に「中に入りたくなったら入ると良い。あなたのペースで構わないから」と言った。
その日は結局部屋のドアを開けただけで中に入ってくることはなかった。
次にKさんが私の部屋を訪ねた時、Kさんは恐る恐る部屋の中に入ってきた。
見た目の印象だが、眼鏡をかけて、背は高くもなく低くもなく、猫背で、肥満体型。髪は染めずに長く伸ばしていた。暑さが残る季節だというのに厚手のコートを着ていたのが印象的だった。
私がKさんをふかふかの一人掛け用のソファーに座るように促すと、Kさんは小さな歩幅で10歩ほど歩いてゆっくりとソファーに腰掛けた。
私はKさんの前にある白いテーブルを挟んで向かいのソファーに腰掛けた。
Kさんは何か言いたげに口を少し開けたり、への字口をしたりを繰り返していた。
その間、うつむいて目を左右にキョロキョロと忙しなく動かしているのが見えた。
私:私に話したいことだけ話したら良い。話したくないことは誰にでもあるのだから。何から話して良いのかわからないなら、自己紹介や自分の生い立ちから始めても良いし、今の気分や感情やこの部屋に来るまでの経緯でも良い。好きなことから話し始めて構わない。
K:・・・(10秒ほどの沈黙)ここに来なくちゃいけないと思ったんです。親や友達にも相談して反対されたんだけど・・・(5秒ほど沈黙)何かしなくちゃって・・・。
私:何かって?
K:変わりたい。
私:今の自分を変えたいってことだね?
K:そう。
私:親御さんやお友達の反対を押し切ってでも変わりたい理由があるんだね?
K:このままじゃいけない気がして・・・。でも、どうしたらいいかわからなくて・・・。
私:それで私のところに来たんだね?
K:・・・はい。
この時はこれで会話が終わった。だが、Kさんはその後も足しげく私のところにやってきた。
私は彼女の中で救世主か何かのように見られていたのだと思う。
私のところに来れば何か魔法をかけて助けてもらえるのだと彼女は信じていた節があったからだ。
一応オチがちゃんと用意されています。ダラダラと無駄に長くなるかもしれませんが、ラストまで書き上げたいと思います。