第九話
亮たち一行はパラシュートを開き始めた。
「なんか、体をも――」
「何言っているかわからはぅ」
どうやら、パラシュートを開いた衝撃で話せなくなっているようだ。普通にして入れば問題がないが、なれていない人たちにはきつい。
「基裏と美優は思いっきり引きすぎたんじゃないか」
亮は二人を眺めながら言っていた。他の三人は普通にパラシュートを開いていた。
「わたくしにかかればこんなものですわ」
「それは関係ないと思うよ。普通に使えれば二人みたいにはならないんだよ。それと、偉そうに言うことじゃないよ」
「なんか、こう見ているといつも真理亜は直哉に指摘されているような気が……」
亮が言っていることが正しかったのか、真理亜は親指を立てた。
しばらくして、着陸地点へと近づく。
『俺らは着地地点をそれぞれ変えてある。俺と基裏は屋上。真理亜と美優は正門付近。直哉は校舎裏の土地になっているから、そこにパラシュートを合わせて降りてくれ。今後の通信はすべてシステムフォンでやり取りする』
「「了解」」
四人は一斉に返事をして指定された場所へと調整する。
「それにしても大変だわ。こんな風に調節するのは」
「なにおっしゃっているの。こんなの普通に調節すればいいの。慣れないといけないのですけど」
「なんかうざい。私に対するあおりなの?」
「そんなことありませんわ。わたくしは真実を述べているだけですの」
美優と真理亜は少し相性が良くないみたいだ。特に女同士なので、対抗心丸出しになっている。
「黙りなさいよ。私だって一生懸命やっているのだから、そうやってあおるのやめてくれない。うっとうしいんだけど」
美優は少しキレ気味だった。さっきもあまりうまく調節できなかったせいか、馬鹿にされたからだろう。
「そんなことおっしゃっているうちに正門へと到着ですわ」
美優と真理亜は地面へと着地に成功した。今付けていたパラシュートは最先端で目的地に着くと自然とパラシュートが閉じて、バックの中へと収納される。
「やっぱり今の技術って、馬鹿にできないわね」
「お勤めご苦労様です。こちら、成人警備隊抹殺処理班の小泉といいます。この作戦ではお世話になります」
歳は二十歳くらいだろうか。まだ青少年である未成年を突破したくらいの若さだ。それでも指揮をできる立場にいるのだから、大物だろう。
「こちらは青少年警備隊抹殺処理班の中塚と間島です。よろしくお願いします」
「よろしくお願いいたしますわ」
美優のあとに続いて、真理亜も挨拶をした。
「それでは、今後の作戦へと進んでいきたいと思います」
指導室で総理からの足止めを食らった優作はシステムの復旧作業に追われていた。
「指令長。さっきの回線で通信端末がシステムエラーを起こしています。少し復旧に時間がかかりますので、トランシーバーなどで現場に指示して下さい」
「わかった。システムの復旧にはどれくらいかかりそうだ?」
「細かい時間は申し上げられませんが、内部までやられているので一時間以上は確実にかかります」
「そうか。ここで奥の手を使いたくはないが、緊急事態だ。緊急事態宣言を発令して、各システムを書き替える」
「「了解」」
優作は今の現状ではトランシーバーも役に立たないことはわかっていた。それに、少し昔のトランシーバーでは現場まで指令が行かない。そうなると、どうしたらいいかと考えると、奥の手しかなかった。
「すべてのシステムを緊急ようにすると、こちらからの制御も聞かなくなるのは副作用と同じ。でも、今しかない。一度でも実証実験でもやりたかったが仕方ないか。
全指導員につぐ。今から、政府にあるシステムをすべて破壊するウイルスをばらまく。ちゃんとした防御態勢を取って対応するように」
どうやら、これからが勝負時となりそうだ。