第四話
入社式が始まり、本部長やお偉いさんが勢ぞろいしている。
「やっと始まったけど、これって長い感じ?」
「そうだけど。仕方ないでしょ。昔からの名残なんだから」
基裏は美優とこそこそ話し、しょんぼりしている。
「それでは、本部長よりお喜びの言葉です。全隊員起立。気を付け、礼」
「俺は前橋本部長の上月淳だ。それでは、ここに集まってくれている諸君たちは警備隊として国民の命を懸けて戦う覚悟があるものが集まった組織だ。それだけは忘れないように」
上月はステージの真ん中に立ちながら、話を進めていく。
「警備隊では、政府が考えているクローン計画について、意義があるメンバーがそろっている。そこでだ。この警備隊に入るということは、クローンというものの存在を抹消する覚悟があるということだ。そのためには、お前ら全員が協力をして倒していかないといけない。それだけは新入社員の諸君には覚悟を決めてもらいたい。以上だ」
上月はプロジェクターによって表示された警備隊の内容を見せながら説明をしていた。そのあとは、武器のことや配属部隊などの話がされたのであった。
「どうやら、俺らはいなくてもよかったみたいだな」
亮は入社式が終わった後の隊員室で言っていた。
「確かにそうだけどな。それでも、もう一度覚悟してもらうことがあったかもしれねぇ」
「だとしても、私たちは関係ないじゃない」
基裏が言ったことを跳ね返すかの如く、美優は話していた。
「わたくしは、とりあえず会社なのですから、入社式で新入社員をよく観察することに意味があると思いますわ」
「それは真理亜ちゃんだけだと思うよ。僕は違う意味があると思うんだ」
直哉が横から突っ込んでくる。でも、いつも抑え目な突っ込みだ。
「何よそれ。あんなところに意味なんてあるの?」
「なんですの? ほかに必要なことなどないとわたくしは思いますけど」
「確かに反論したくなる気持ちもわかるけどね。それは、僕たちに協力することが必要だと訴えていたのかもしれないよ」
直哉の意見は正しい。警備隊では協力することが大切なのはもちろん。相手は人間でもなく、機械でもない。化学物質であるからだ。だとすれば、普通には殺すことができないことは明確だろう。だからこそ、チームワークが必要になることを訴えたと直哉は考えたのだろう。
「それよりも、暇じゃねぇ」
「全然、そう思わないけどな。それはお前が手を抜いているからだよ」
基裏は何も手を付けないで言っているので、亮が注意した。
「亮に言われたら、言いかせない。確かに暇にさせているのは俺だ。何も触れなければ仕事をしているというよりも暇をしているというから」
「基裏君。それは別にうまいこと言っていないから、ドヤ顔をするところじゃないよ」
「それもそうだなって。いつも痛いところばかり突っ込んでくるな」
「しかないじゃない。僕はそういうのが取り柄なのだからね」
基裏が寒いことを言って、直哉が修正したおかげで、寒さが軽減された。
「あほなことばかり言っていないで、仕事するぞ。でも、基裏には仕事を倍にしてあげるから。覚悟しておけよ」
「そんなこと言わないでくれよな。幼馴染だろ?」
亮は悪魔の笑顔を見せて、基裏の方向を向いて言う。
「それは、ここでは出さない約束だろ。それがお前の甘えだと早く気付いてくれよ」
亮の思いが届くのは、もう少しかかりそうだ。