第三話
亮は自転車で約十分のところにある、警備隊前橋本部だ。亮はここの本部に所属しており、その中の青少年警備隊の抹殺処理班として活動している。そのため、戦場地へと行かなければいけない。
「なんか、にぎやかだな。やっぱり入社式ともあれば、こんなものか」
前橋本部の目の前には、入社式を祝う人だかりがいる。
亮が冷静に感心していると、後ろから声がした。
「なんか、人だかりがすごいね」
「あれ、基裏。いつもより早いね」
「なんか、俺がいつも遅いみたいじゃねぇ――か」
亮の幼馴染である山田基裏はあきれた顔で答えた。
「そうじゃなかったっけ? 昔から遅刻魔という名が付くほどだったような」
亮に昔のことを言われてしまった基裏は何も言うことができなかった。
「てか、お前は早く自転車を置いてこいよ」
亮の片方にあった自転車を見て、基裏は仕方ないという表情で駐輪場を指す。
「わかっているって。早く別館にあるホールに行かないとな」
「そうだぞ。そうしないと、面倒なことになりそうだ」
亮が駐輪場に置きに行っている間、基裏はロビーで待つことにした。
「先にロビーに言っているからな」
どうやら、この警備隊にはロビーより先には立ち入ることができないように指紋での認証をしているらしい。それも、駅の改札のようにカードをタッチする場所に手をかざすと通ることができる。時代は最先端の技術に報われている。
「お待たせな。それじゃあ、俺らの青少年警備隊抹消処理班の陣地へと行きますかね。早くしないと他の奴にあとで、うるさく言われそうだしな」
「それは言えてる。特にあの女を怒らせたときには俺の人生は半分なくなったと思ったほうがいいだろうしな」
亮と基裏は、警備隊の別館にある二階まで使ったホールへと向かう。ここでは、何かをするときに主に使われるということ。特に、緊急事態で全員が集まらないといけない時にはこのホールで作戦の実行とかを支持される。
「あっ、いつも通り遅いメンバーがやってきたわね」
女子だとは思えないほどの胸のぴったんこ度は男でも競り合えるくらいない。でも、その女子はそのことを一番気にしているのだ。
「おいおい、いつも遅いメンバーという言い方やめてくれない? 俺じゃなくって、いつも基裏だから」
ここでなすり合いが始まってしまった。
「そんなことは言いの。てか、あなたたちはどこを見ている?」
「それはねぇ、あなたの素敵なまな板に決まっているじゃねぇ――か」
基裏は目を輝かせて、挑発をしている。
「またいったわね。いつもなんで基裏は私の気にしているところを言うのかな? ぶち殺されてぇ――のか?」
「いやそんなわけでもないけど、いじるのが楽しくって。てへっ」
基裏はかわいげにごまかしてみるけど、それは逆効果だと気づいたときには恐ろしい状況へと変わっていた。
「覚悟はできているだろうな。てめぇ――、みたいなくそソーセージをぶら下げている奴は、丸い谷があるとホットドックのように挟みたくなるんか?」
「ちょっと待って。それ以上言ったらやばいって、美優」
「そうですわ。そんなはしたないことを言わないほうがいいですわ」
中塚美優の止めに入るのは、飯山直哉と少しあおる間島真理亜である。
「ちょっと情けないから、やめてくれよ。隊長として俺が恥ずかしいじゃない」
亮は胸につけている隊長のあかしを全員に見せる。
「てか、あともう少しで始まるから、静かにしようね。みんな」
直哉が言うとみんなはかわいらしいという顔で見ている。
「僕に何かついているかな?」
直哉はほほを赤くして、見つめてくる。これには美優は何も言えない。
「相変わらず、いつものケンカを止めるには最適な顔だな」
亮は直哉のことをほめるが、あまりうれしそうではなかった。