第二話
――新暦三年四月十日
第一人体地域に住んでいる中島亮はいつも通りの生活をしていた。
「あ――、眠い。なんで俺は新入社員でもないのに、入社式に出ないといけないんだよ」
朝っぱらから、亮は自分の部屋で声を出しているらしい。どうやら、入社式というものにでることに少しいらだちを感じているらしい。
「本当に困るな。俺は高校にもいけなかった十七だぞ。そんな奴に出席しろというな」
亮は高校二年生と同じ年だが、義務教育を終了後にある検査を受けてみると、とある反応が出てしまった。どうやら、DNAが普通の人よりも優れており、警備隊という組織には必要になってしまった。
「本当に警備隊なんて入らなければよかった。俺たちの仕事は汚れ仕事かよって」
亮の部屋のドアが開いていたらしく、下に丸聞こえだったらしい。
「亮。ごはんができたわよ。それにしても、朝っぱらからうるさいね。少しは社会のことについて学んだらどうよ」
母親によるちょっとした説教が入った。これには面倒なことになると思った亮はすぐに一階のリビングへと降りていく。
リビングへと降りた亮はダイニングテーブルのいつもの席に座る。
「本当に毎日うるさいわね。少しは静かに入れられないの?」
「だってよ、俺は入社して一年たつけど、なんか血を見ることに抵抗がなくなってきたんだよ」
「それはやばいことだけど、それよりもなんでいつも叫ぶんだって話よ」
母親はあきれたかのように、朝食の準備をしている。
「それは、毎日毎日、ひどい仕事をしていると発狂しないといられないからだよ」
母親は『言っても駄目だ』という顔で亮の顔を眺めた。どうやら、昔の顔と違うことにあきらめを感じているようだった。
「昔はかわいい子だったのに、いつからそんな子になってしまったのかしらね」
「そういう、昔話はいいから。急いでいるから、話しかけないでしょ」
「本当にかわいげがなくなってしまって、少し残念だわ」
亮は母親が言うことなど無視をして、テーブルの上にあった弁当を持ち、それをカバンに入れて、玄関を出た。