第十一話
「指令長より許可が出ましたので、突入したいと思います。校内はとても広いので気を付けて進んでください。この場所は廃校のままで使われていますので」
正門付近で待機をしている小泉たちは正門をゆっくりと開けて、侵入しようとしているところだ。
「そうですか。それなら、昔の地図でどうにかなりますね」
「でも、万一のことを考えてくださいね」
「そうですわね。そういうことを考えないと後々痛い目を見ますものね」
真理亜が偉そうに言っているが、体はプルプルと震えていた。
「やっぱり怖いの。自分と同じようなものが出てきたときに対策ができないからでしょ」
「そんなことはありませんの。ただ寒いだけですわ」
「何が寒いよ。上半身の真ん中に脂肪をぶら下げているじゃない」
「中塚さんと間島さんはここでケンカはやめてください。敵に気づかれたらどうするのですか」
小泉は二人があまりにも大きな声でケンカをするものだから、仕方なく輪に入った。そして、やっと収まると作戦へと移っていった。
亮は屋上の端っこで頭を抱えた。
「全く、あの二人はどうにかおとなしくできないのかよ。本当に隊長の俺が恥ずかしいよ」
「まあ、仕方ねぇんじゃねぇ――の。これはいつものことなんだし。特に今なんて弱点の引っ張り合いだろ。戦場なんだしな」
「そんなこと言ったって……」
呆れた顔をした亮はため息をつくしかなかった。一方、基裏はとても張り切っているようだ。あの二人がいつも通りにしようと関係ないみたいに。
「どうやら、動き始めたようだな。俺らも合図があったらすぐに動くことになるから準備しておけよ」
「「了解です」」
大声で話すと敵にばれてしまう可能性があるので、胸元につけた無線機で十数名が返事をした。これからが激戦だ。
『上から見た感じだと校舎の周りには誰もいませんね』
校舎横にある校庭を観察している隊員が無線に知らせた。
「そうか。まあ、そうだろうな。とりあえず様子を見ているのだろう。今まで通り校庭だけを観察していてくれ」
『了解』
「中島と山田は俺と一緒に行ける準備をしておけよ。というか、屋上の入り口を開けることから始めよう」
「わかりました。どんな感じで開けるんですか?」
「それは決まっているだろ。鍵穴があればそこを解除する。なければドア自体を破壊だ。今の時代に鍵ロックが付いてなくてもシステムでロックできるようになっているからな」
「それじゃあ、セキュリティが反応してばれるのでは?」
祐泉寺は高笑いをした。だが、亮はなぜ笑ったのか全く理解できていないようだ。
「要するにあれだろ。セキュリティにハッキングしてあるから大丈夫とかいうんだろ。警備隊ならそこまですると思うがな」
「そうだ、山田。お前は賢いというか、鋭いのか。この場所はすべてのシステムはすべて警備隊の傘下にあるということだ。だから、大丈夫だ」
祐泉寺は今いる端っこから真ん中にある屋上の入り口に向かい、ドアロックがどのようなものかを確認した。
「どうやら、これは昔のカード式ということか。なんだ、簡単じゃないか。こんなの警備隊の侵入キーを使えばすんなりと……」
祐泉寺は番号キーと隣にあるスキャナーにカードをはめ込み、下にスライドした。すると、赤色になっていたランプが緑に変わったと同時に警告アナウンスが流れてしまった。
『屋上から侵入者がカードキーの解除に成功。警戒せよ。また、マウンテン学園付近には警備隊がいることも確認済み。警戒レベルは五だ』
祐泉寺は驚きを隠せなかった。指令長からの連絡だと、「ここのシステムは警備隊が権限を持っているから大丈夫」だといわれた。
「なぜだ。俺は間違ったことを一つもしていないのによ。神よ、俺を見捨てるのか」
「そんなこと言っている暇はねぇ――だろ。それよりも大体はわかっていたが、まさか校内にアナウンスされる仕組みだったとはやられたな。俺らはクローンに殺されてしまうかもな」
「それはさすがにまずいでしょ。それより気づいていたならなんで止めなかったんだよ」
「どう見てもそうなるとは思わないだろ。指令長のことなのだから、信頼できると思ったんだ」
それには気づけなかったのは失態だと思ったのは亮であった。
少しずつですが物語が進み始めました。この作品は短めに話を書いているので物語の進みが遅いのは仕方ないと思います。先延ばしなところがあってすいませんが、お付き合いください。