3.専門用語(テクニカルターム)~都市・地域・行政関連~
●幻幽都市--Anotherpolies
その昔に東京都と呼ばれていた、日本列島の関東地方に存在する大都市です。『アナザポリス』、『混沌の神域』、『リアル魔界都市』等々、様々な呼ばれ方をしています。
二〇二〇年一月一日に東京都・霞が関で発生した大禍災が切っ掛けで誕生した都市です。高さ二百メートルにもなる高い壁に囲まれています。この壁は、大陸弾道間ミサイルをいくら受けても破壊されないという頑強さを誇っています。
都市が出来た当初は、壁を乗り越えて不法滞在を試みる輩が大勢おりましたが、今では大分落ち着いています。ですが現在でも、密入国ならぬ密入都を実行する輩は、かなり少なくなったとはいえ存在します。
都市内では超最先端の分子工学、材料工学、電子機械工学、情報工学が発展しているだけでなく、心霊工学、亜生物工学など、他の国々にはない独自の学問が確立されている都市です。これらの学問の下、ナノマシンを利用した機械製義手、サイボーグ化手術、アンドロイド、ホムンクルス、仮想空間などが実用化されています。
それ以外にも、特殊能力を宿したジェネレーターと呼ばれる新人類や、有害獣にベヒイモスと呼ばれる怪物達がうろちょろしていて、とっても危険な都市です。
勃興期である二〇二〇年代前半の頃と比べれば、二〇四〇年頃の治安は大分回復してきています。
都民の大半は幻幽都市の東部地域で暮らしており、嘗ての東京都と同じく二三区制を用いています。区名は変わっていません。二十三区以外の市町村は、所々名称が変更されています。電車や高速道路を始めとした交通網も大分変化を遂げていますが、駅名は昔のものを使っている所が大半です。
都市経済は輸出をメインとした貿易業により成り立っています。ですが公式にはどの国々とも一切の外交を遮断している為、密輸と変わりません。都内における通常の経済活動に加え、これらの貿易業により都市が得る事の出来る収益額は年間二百兆円にもなります。収益の殆どは先述した科学技術の発展や、街のインフラ設備へ投資されています。
都民の暮らしは『まともな職業』に就く事が出来、且つ余計な事に首を突っ込まずに『節度』をわきまえていれば、わりかし快適に暮らす事が出来ます。
二〇二五年時における人口は、約二百万人。二〇四〇年では約二百三十万人と、多少の増加傾向が確認されています。初期の頃は治安が最悪だった為に、大禍災で生き残った多くの人々が犯罪者達の手に掛って亡くなりましたが、治安が回復するにつれて出産率も上がり、人口は少しずつ上昇している傾向にあります。
人口比率は十代~三十代の男性が最も多く、六十代~八十代の女性が最も少ないという状況にあります。
保育所や学校教育関連はそれなりに充実しています。大学も幾つか存在しますが、主に理系分野の大学が殆どです。学べば大分偏った工学知識を習得する事間違いなしです。
各区毎に独自の文化風習が芽生えており、その区に住む者が絶対的に守らなければならないルールも存在します。
●デッドフロンティア--Dead Frontier
『死の未踏領域』とも呼ばれる、幻幽都市の西部地域に広がる森林地帯の総称です。具体的には立川市や日野市よりも西、つまりは旧奥多摩地方の事を指しています。
ジャングルめいた森林地帯が広がっており、超凶悪なベヒイモス達の巣窟となっています。このデッドフロンティアのせいで、都民は都市の東部地域にしか住まざるを得なくなっています。
蒼天機関がこれまで何度か調査隊を派遣していますが、どれも芳しくない結果に終わっています。幻幽都市で一番のミステリー・ゾーンです。
『良い子にしていないと、デッドフロンティアに連れていくよ』という台詞は、聞き訳のない子供を大人しくさせる親御さん達の常套句になっています。
●外界--Out World
幻幽都市以外の都市や国々を纏めて指す言葉です。幻幽都市と《外界》は国交断絶状態にあると公式には発表されていますが、それはあくまで表向きの話です。実際には、《外界》と都市を結ぶ唯一の出入り口である『虎之門』と呼ばれる箇所で正式な手続きを汲めば、誰でも都市に入る(入都する)事が可能です。
但し、経歴に詐称ありと判断された場合、問答無用で追放されるか、最悪の場合は射殺されます。また、前科持ちの入都は基本的に断っています。それでも何らかの事情があって幻幽都市に入りたいと思う輩が、密入都を試みる訳です。
●ヴェーダ・システム--Veda System
ヴェーダ・システムは蒼天機関の本部庁舎の地下に存在する三元理論式非ノイマン型の量子演算機構の事です。幾万もの超高性能量子CPUで構築されており、自律思考を可能とした高度な人工知性を宿しています。
ヴェーダ・システムは幻幽都市の『心臓』とも言える存在です。なぜなら、現実世界と仮想世界の両方のインフラに関するシステムの一切を統括する役割を担っているからです。その重要性故に、現実面でも仮想面でも、侵入者を防ぐための数多くのトラップが仕掛けられています。
システムメンテナンスは半年に一回、一か月かけて行われます。主に担当するのは呪工兵装突撃部隊の電脳部隊です。
その構造は主に、《幹》と《根》の二つのブロックに分類されます。
《幹》と称されるシステムの中枢は、普遍階層、永詠階層、祭礼階層、そして呪法階層と呼ばれる四つのシステム系統で構成されています。
それぞれのシステム系統によって、どのインフラを管理するかが決められてます。この四つのシステム系統には明確な『意志』が存在するとされており、互いに演算処理能力を譲渡したりする『助け合い』の機能も宿しています。
この四つのシステム系統の更に下層には、《根》と呼ばれる補助システム系統が存在します。この《根》は、現実世界では稼働時に発生した余剰な熱量を排出しており、それが地熱発電に応用されています。一方の仮想世界では、システム管理の際に零れた余剰な処理能力が溢れでています。
●闇市場--Black Market
幻幽都市設立の初期から誕生した市場です。主に、蒼天機関の定めた標準規格に反する物資を売買しています。闇市場は『闇市』とも呼ばれ、各闇市ごとに、場を取り仕切る『頭梁』と呼ばれる人物がいます。