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禍神の英雄伝  作者: わたあめ
一章
12/17

シャンデラ王国

「どうでしょうか...?」


恐る恐るクリアの顔色伺うようにマーガレットは首を傾げる。アーシェもクリアの言葉を心配してるのかクリアを見詰めている。


「あー、まぁなかなか悪くはないんじゃないかな。俺もlvが40台だった頃はそんな感じだったさ」


まぁ尤もlv100になるのに一週間もかからなかったけどな。と心の中で加えるクリア。

二十四時間の内の最低二十時間はモニターの前を張り付く。睡眠時間は3時間以内。トイレ以外は極力部屋から出ない。飯は地面を叩くと何故か部屋の前に置いてあったのでそれでプレイをしながら飢えを凌ぐ。それを一週間。それでようやくlv100なのだ。風呂は論外だった。


一気にマーガレットの顔が明るくなる。英雄のお墨付きをもらえたのだから。アーシェもほっとしたのか胸を撫で下ろしていた。


「そうですか、嬉しいです!剣聖殿!それで...不躾な質問ですが剣聖殿のステータスはどれくらいでしょうか...?」


マーガレットの質問に歩み寄って来た騎士長も副長もアーシェも開口せずクリアの口から出てくるであろう言葉に耳を傾く。


「俺のステータスか...ふむ...。もしHPが50000も有ると言ったら信じるか?力も5000も有ると言ったら?」


と様子を探るようにクリアは注意深く言葉を選んだ。

力が1000も行かないマーガレットがこの国の上位に入る実力者なのだ。もしかしたら俺と言う存在はこの世界にとっては"毒"でしかないのかもしれないという考えからクリアはどうしてもうやむやにせねばならなかった。

そしてやはりというべきか大声で怒鳴られる。


「そんなこと!あり得ぬ!本当ならば"全ての祖"が目覚ますぞ!もしそうなったら世界が滅びかねん!冗談も大概に──」


反応したのは顔を真っ赤にさせた騎士長。阻止するようにマーガレットがクリアに詰め寄ろうとする騎士長を片手で止める。


「おじいちゃん、これはあくまでも仮定の話ではないでしょうか?剣聖殿は"もし"と言いました。それを下回るかもしれないし──上回るかもしれません。それにパラドクス連邦との戦争の切り札でもある剣聖殿を怒らせたらどう責任を取るつもりなんですか?おじいちゃん」


「騎士長、あなたの言い分は分かります。ですが"全ての祖"は伝説の伝説に過ぎません。実際するかどうかわからない星の抑止力より我が国を侵略しようとしているパラドクス連邦の方を最優先すべきです」


「しかし、王女様、マーガレット様、騎士長の言い分も一理あります。失礼ですが剣聖殿がパラドクス連邦の回し者という可能性も無いとは言い切れませんですし」


「いや、それはないだろう。剣聖殿は召喚の間で異世界から来たんだ。もしパラドクス連邦の回し者だったら剣聖殿を送った者が初代王を出し抜けるような実力者ということになる」


「まるで初代王の力を間近で見てきたような言い方じゃな。マーガレット」


「はい、おじいちゃん。それを見たときは自分の目を疑いました。召喚の間は誰も立ち入ってはならないと八百年も閉ざされていたと聞きます」


「うむ、それがなんだというのじゃ?」


「騎士長。私も見ました。八百年間も閉ざされていたにも関わらず輝き続けていた魔法陣を」


アーシェの言葉に副長も騎士長も目を大きく見開いて絶句していた。


「あー、話の腰を折って悪いが、先程のアーシェが言ってた全ての祖や星の抑止力ってなんだ?」


沈黙を破るようにクリアはアーシェに問う。


「はい、クリア様。説明が足りなくて申し訳ありません」


とアーシェは一言謝ってから続ける。


「星の抑止力は"全ての祖"の事です。異世界から強大な力を持つ者が召喚されたり魔王や英雄の増加により世界そのものが危ぶまれる状況になったら星の意思である"全ての祖"が目覚まし、均衡を保つ為にこの世界を住処とする全ての命を間引きすると言われています。そして八百年前、初代王は目覚ました"全ての祖"と一週間にも及ぶ壮絶な闘いを行い、そして敗れ去りました。それも伝説の一つに過ぎませんが...」


「ほう...、"全ての祖"か...!面白い」


まだ見ず強大な力に対抗心を燃やすようにクリアは青天を眺める。空の果ての下には一体どんな力を持つ英雄や魔王がいるのか想像もつかない。だが、武器や防具を失ってもなおクリアは負ける気はしなかった。

(ゲームの中)でクリアも魔王や大魔神や龍神と闘い、そして勝利して来たのだから。

ダンジョン"異次元の狭間"の主である"名も無き少年"が唯一倒せてないラスボスだ。


「ふぅ...クリア殿の強さを実際に触れてみたわしにはとても冗談には聞こえぬのでな。じゃが、王女様のおっしゃる通りにこの国は少々危機的な状況にあるのじゃ。クリア殿を戦争に参加させるおつもりであれば儂の目が届く範囲内でよろしくお願い致す」


「じゃあ、騎士長!」


「えぇ、王女様、騎士団の奴らに伝えおきます。英雄も参加すると。ラビ副長、伝えてこい」


「了解しました、騎士長」


ラビと呼ばれた副長はアーシェに深く頭を下げると詰所に消えて行った。


「よかったぁ、これで貴族らも何も言えないでしょう。残るのは兄様の説教ですね!」


とガッツポーズを取るアーシェ。

だがその説教こそが最難関なのだ。堅物の王子を説教するのに一体どれくらいかかるのか見当もつかない。


「王女様、儂からも遠征から戻ってきたら王子様に言っておきます。ですがあまり期待しないでください。ちなみに...王子様に召喚許可は...?」


「えぇ、とっていません!」


「でしょうな」



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