表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/14

突然の理不尽はクリスマスイヴ前日

「ねぇ、コレ何?」


 クリスマスイヴ直前の夜11時、自宅のアパート。

 その二階の部屋の玄関前。彼は、同棲している彼女に1枚の写真を見せられた。

 彼は会社帰り。退屈なデスクワークから解放され、やっとの思いで帰宅。

 やれやれ、と言わんばかりの態度で写真を見る。


「あんたさぁ。この日、京都に出張じゃなかった?」


 写真の日付は11月12日。11月は10日から15日まで京都に滞在していた。

 仕事だ。

 相手会社、取引先との商談の為だ。

 ちなみに写真は、まだ10代そこらの若い女性と彼の2ショット。

 別に何かいちゃついているわけでは無い。

 ただ、並んで楽しそうに歩いているだけ。


「いや、これ」


 これは、と続けようとするが「言い訳はいいから」と彼女は大きな荷物を彼の前に降ろす。


「出てって。今すぐ」


 大荷物は、彼のモノ。纏めている様だ。「だから、この写真は」


「出てけつってんでしょ!」と、彼女は怒りに震える瞳で、彼を睨み付け言い放つと扉を閉める。


 一方的だった。

 取り付く暇もなかった。

 扉が閉まって直ぐ、お隣さんや、同じアパートの人たちが何事か、と顔を出した。


「はぁ」


 大きなため息と共に、大荷物を背負い、彼、朝倉準一はアパートの階段を下りた。





 クリスマスイヴ直前、というより前日。追い出された準一はトボトボと歩き、近くの公園のベンチに腰を降ろし、スーツの上に着ていたコートの懐から煙草を取り出した。

 ズボンのポケットからライターを取り出し、咥えた煙草に火を点ける。

 一度、煙を吐くと、項垂れた。


「最悪だ」


 追い出された経緯。

 それは、彼の彼女、御織百合の大きな誤解である

 写真の女性、それは朝倉準一の妹、朝倉結衣だ。

 同棲している彼女だが、結衣の事は知らない。

 教えておけば良かった。と後悔するが、もう遅い。


 御織百合は、朝倉準一と同じ25歳で、見た目は綺麗だが性格に難があった。

 同棲前は知らなかったが、かなり我儘で、傍若無人。

 同棲前は、かなり猫をかぶっていた様だ。


 彼は何度か、別れ話を持ち出したが「別れる理由が無いからイヤ」と言われ、半ばあきらめ、半年間同棲していたが、今日で終わり。

 そう考えれば、少しは気が楽になる。

 しかし、問題はあった。

 これからどうしよう。だ。

 住居であったアパートは彼女が独占。

 彼は寝床が無い。

 今日は野宿か、とタバコを落とし、革靴で踏みつけると息を吐く。

 気温の低さからの息の白さと、タバコの煙とが混ざり、どっちがどっちか分からない。


 取りあえずは知り合いを頼ろう。と携帯を開くが、同時にバッテリーが切れる。


「マジかよ」と呟き、更に項垂れ、荷物を背負い、自販機を見つける。

 一瞬、自販機のコンセントを抜いて、充電してやろうか、と思うが、もう社会人だ。

 逮捕されるのは嫌なので、取り出した充電器をポケットに仕舞う。


 取りあえず、缶コーヒーでも買って温まろう。

 そう思い、自販機の前に立ち120円投入。

 だが、自販機に入金額が表示されない。


「お、おい」と思いながら見るが一向に変わらない。


 しかたない、と次を入れようとした時、バイクが近づき、地面に置いた大荷物の入ったバックが奪われた。

 いや、持ち去られた。

 

「お、おい! 待てオイ!」


 叫ぶが、バイクは早い。大通りに抜け、姿を消す。

 ナンバーを覚えておけば良かった。

 準一は、その場にしゃがみ込み、前髪をかき上げた。


「理不尽すぎるだろ……マジで」


 すると、雪が降り始め、折り畳み傘が大荷物に紛れていたのを思い出す。

 この状態で野宿すれば、確実に風邪を引く。

 明日は今日と同じように出勤しなければならない。

 一応、通帳、定期券、免許証、保険証等は財布に入っており、それはポケットに入っている。携帯、充電器もだ。

 財布を見る。

 1万。

 ATMで下ろすか、と思うが、通帳残高がゼロに近い事を思いだす。

 通帳があるにもかかわらず、金は現金で持つのが御織百合だ。

 今日は取りあえず、ネットカフェで過ごそうと思うが、定期は明日買わなければならない。

 それを考えると、現金はギリギリ足りない。

 給料日もまだ2週間以上先。

 

 しんしんと降る雪は、大粒に変わり、風が吹き、勢いが強くなる。

 すると、自分に当たっていた雪が止まった事に気づき、上を見る。


「あの、大丈夫ですか?」


 見ると、まだ若い。スーツ姿のイケメンが自分の上に傘を差し出し、雪を防いでくれている。


「あ、ああ。すまない」と準一は立ち上がり、着いていた雪を落とし「君は?」


「あ、すいません。僕は四之宮洋介」続け「あなたの後輩です」


「え?」

「僕はあなたと同じ、営業部署の人間です。つい昨日、会計部から異動してきました」


 ああ。と準一は左手を差し出す。「そうか、よろしく」


「ええ。宜しくお願いします」


 ニコ、と笑い、四ノ宮は準一の手を握り返し、握手をする。「先輩、一体どうしたんです? 雪の中で」

 いやぁ、と準一は苦笑いし、手を離す。「彼女に追いだされてさ」


「ダメですよ先輩。浮気は」

「してねぇよ。誤解だよ」

「した人間は皆そう言います」


 ったく、と準一は写真を見せる。彼女の持っていたものと同じ写真だ。


「この女性が、浮気相手ですか?」

「妹だよ」

「ええッ?」


 四之宮は驚き、準一と写真の女性、妹の結衣を見比べる。

 結衣は、高校生。超が付く美少女だが、準一はそうでもない。

 まぁ、悪くは無いよね。程度だ。


「お前、一応俺は先輩だぜ?」

「す、すいません。昔からこんな調子でして」


 はぁ、と準一がため息を吐くと「先輩。行くところないんですか?」と四之宮。


「あ、ああ。確かにそうだな」

「だったら、ウチに来ます? ここから近いマンションですし」


「そりゃありがたいが」準一は聞いておく事にする。「迷惑じゃないか? 同居人は?」

「生憎、僕は生まれてこの方独り身です。同居人なんて無し。先輩さえよければ、来ていただいて構いません」

 

 なら、言葉に甘える。と準一が言うと「では、行きましょう。風邪を引きます」と四之宮が言う。

 四之宮の差す傘に、準一の入り、2人はマンションまで歩く。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ