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転生したら椅子だった!?  作者: にんじん


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16/20

遊び人?

 僕は九十九神に向かって、少し怒り気味に言い返した。これだけは譲れない。僕の人生の最期くらい、誰かの役に立ったと思いたいんだ。


「……そんなはずはない! 僕は電車の中で刃物を持った暴漢から、女の子を助けて死んだはずだ!」


 すると、九十九神はクスクスと意地の悪い笑みを漏らした。


「まぁ、本人はそう思い込んでるわよね。でもね、よ~く思い出してみて。あなたは確かに、刃物を振り回す暴漢を見て、無意識に勢いよく席を立った。……でもね、その直後に自分の足をもつれさせて、盛大に転んだのよ。で、運悪く、そのまま暴漢が構えていた刃物に自分から突き刺さっちゃったってわけ」


「…………えっ?」

「まぁ、そのおかげで暴漢が怯んで、周りの人が取り押さえるきっかけにはなったから、貢献したと言えばしたんだけどね。残念ながらネットニュースでは、『慌てて逃げようとした男子高校生が、転んで暴漢の刃物に自らダイブした不幸な事故』って報道されてるわよ」


 僕は絶句した。顔が火が出るほど熱くなる。英雄的に死んだつもりが、実際は逃げようとして転んで自爆しただけだったなんて。クラスメートたちが言っていた「自業自得じゃね?」という言葉が、すとんと胸に落ちた。あいつらは、その情けないネットニュースを観ていたんだ。


(恥ずかしすぎる……)


 真っ赤になって震える僕を、九十九神は楽しそうに眺めている。僕は話題をそらすため、もう1つ気になっていた父親のことを確認することにした。


「……お父さんが新たな人生を謳歌しようとしてるって、どういうことなんだ。僕が死んで、お父さんに迷惑をかけたんじゃないかって心配だったのに」


 僕が真剣な表情で尋ねると、九十九神の顔から笑顔が消え、少しいぶかしげな表情になった。


「……本当に聞きたい?」

「はい、教えてください」


 お父さんは寡黙で、仕事が忙しくてなかなか家に帰ってこない人だった。でも、僕なりに感謝していたし、僕がいなくなった後のことが気がかりだったんだ。僕の決意を見た九十九神は、観念したように話し出した。


「わかったわ。……実はね、あなたのお父さん、各地に女がいる超プレイボーイだったのよ。なかなか家に帰ってこなかったのは仕事じゃなくて、単純に女の家に泊まり歩いてたから。あなたとあまり話さなかったのも、女遊びをして外泊ばかりしてるのが後ろめたくて、バツが悪かっただけなのよね」

「…………は?」


「で、あなたが死んじゃったことで、もう気を遣わずに堂々と女遊びができるって、内心大喜びしてるわよ」


 父さんの真実を知り、僕は思わず目を丸くして固まった。寡黙で不器用だと思っていた父親は、ただの遊び人だったのだ。かっこいい死に様も、家族の絆も、全部僕の勘違い。


「……まぁ、いいか!」


 僕は意外なほど楽観的に、その事実を受け止めることができた。 お父さんが僕の死を悲しんで、一生苦しい思いをするくらいなら、僕がいなくなったことで第2の人生を謳歌してくれる方がずっといい。 何より、僕だって今、この第2の椅子生を謳歌し始めているんだから。


「父さんが元気にしているなら、それで僕は満足だよ」


 僕は九十九神に向かって、これまでにないほど晴れ晴れとした笑顔を見せた。 自分の不遇な過去も、情けない死に様も、すべてを笑い飛ばせるような清々しい気持ちだった。その姿を見た九十九神は、少し驚いたように目を見開いた後、満足そうに口角を上げた。


「……へぇ、いい顔するじゃない。あなたのその潔い心に感銘を受けたわ。私の独断的な判断で、あなたに特別なスキルを授けてあげる。ふふ、どんなスキルかはお楽しみ、ってことでね」


 九十九神が僕に向かって優しく手をかざすと、僕の身体は眩い光に包み込まれた。温かくて、それでいて何かとてつもない力が全身に流れ込んでくるような感覚。


「どんな椅子生になるか、楽しみにしてるわよ……椅子転生者くん」


 微笑む九十九神の声を聞きながら、僕は心地よい浮遊感の中で再び意識を失った。

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