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その1

議長神「これより、第529億4507万7184回目の上位神定例会議を行う。最初の議題は、人間と魔物と魔族が絶えず戦争を繰り返している惑星番号9534645653456453323についてである」

破壊神「あんな星、さっさと破壊すりゃいいんだよ。俺がやっておこうか?」

創造神「ちょ、待てよ。あれでも一応俺が若いときに作った星だから、思い入れがあるんだ。3億年前だったか、いや4億年前か?まあ忘れたが、壊すのはやめて欲しい」

因果神「じゃあどうするかの?あのまま放置というわけにもいかんし。どうじゃろう?例の転生神に任せるというのは?」


てなわけで、神界では「窓際神」や「落ちこぼれ神」などと見下されている転生神のナクレは、廃棄寸前の惑星を任されたのであった。


ちくしょー、俺にも創造神や破壊神のような上位の能力があれば、新しい惑星を自分で作れるのに!所詮、俺には人間を転生させてちっとばかしの能力を与える力しかない。そんなことチマチマやっててもつまんねえし、いっそ下界に降りて好き勝手やってみるか?どうせこのままじゃ廃棄されて作り直される運命の星だしな。


まずは外見をどうするかだな。

実は、神には実体というものがない。神界ではお互いを認識しやすいようにインターフェースを作成している神が多く、俺も一応持っているが、そのままの姿で下界に降りるわけには行かないだろう。


んー、適当に下界を覗いてみるか。そうして俺はパッと目についた女の外見をコピーした。まあこんなもんか。

ステータスは…っと。まあこのままでいいか。所詮ゴミみたいな能力しかないしな(←実はこれが勘違いで。一発で国ひとつを滅ぼせるほどの力があるが、あくまで「神」視点では、世界創造や世界破壊と比べてゴミみたいな能力という話である)


さて、適当な国に降りてみますか。ど、れ、に、し、よ、う、か、な?創、造、神、の、言、う、通、り!君に決めた!!

俺は狙いを定めた国に向かって天界から飛び降りた。マッハ50くらいで。

チュドーン!!!!ひとつの山が消し飛び、でかいクレーターができた。衝撃波が一瞬で周囲の森を吹き飛ばし、噴煙が黙々と立ち上り、空を覆い尽くした。


王都にて。

「うわあ!なんだあれは!!」

「すごい揺れだ!この世の終わりか??!」

あれ、俺、何かやっちゃいました?まあいいや。人が住んでいないところだったし。


とりあえず人が多そうな場所に行ってみますか。

俺は王都の方角へ走り出した。本気を出すと周囲の景観が吹き飛びそうだったので、今度は自重した。まあこのくらいでしょ。(←後から知ったのだが、馬の10倍くらいの速さで走るのもこの世界では目立ちすぎるらしい。うーん、下界のスケールは加減が難しい。)


王都に到着!一瞬だったな。

それにしてもすごい人の数だ。俺は人込みをかき分けて歩く。それにしてもよくぶつかるな。なんでだ?

ときおり「ジャマダババア!(邪魔だババア)」と怒鳴ってくる人間もいる。これが人間界のあいさつなのかな?


おっ、いい匂いがするぞ。この店からだ。

俺は店に入るなり、満面の笑顔で「ジャマダババア!」と叫んだ。店の中にいた数人の客がビクッとした顔で振り向いた。

「お、お客様!店内ではお静かに願います!」と店員が飛んできた。

ああ、声がでかすぎたか。そう思った俺は、店員の耳元で小声でこうつぶやいた。

「…ジャマダババア…」。

店員の顔が固まった。店内の空気も固まった。

気まずくなった俺はすぐに店を飛び出した。


あああああ、もうわけわかんね!人間界わけわかんね!!あいさつしただけでなんでああなる????


俺は頭を抱えて大通りを走った。ドンッ!!!と誰かにぶつかった。

「痛えじゃねえか、このデブスが!どこに目ぇつけてんだ!!」

おっと、人間との2回目の会話だ。今度は失敗しないようにしなきゃな。

「顔についてますが、何か?」

「はあ??……てめえ舐めてんのか?てめえみてえなデブス見てるとイライラしてくんだわ。とっとと失せろや」


見てるとイライラする?俺が?普通の人間の女の外見をコピーしたはずなのだが。

俺はショーウィンドウに映った自分の外見を見た。うん、どこからどう見てもただの人間の女だ。目と鼻と口があって、手が2本、足が2本ある。いったい何が問題なんだ?(←後で気づいたことだが、実は人間の見た目には細かい違いがあるらしい。そしてどうやら俺は、人間界ではあまり好ましくない見た目の人間の外見をコピーしてしまったようだ)。


ああーー、もうめんどくせえ。とりあえずこいつとは話したくない。俺はそいつの動きを魔法で止めた。

「このバ……」と言いかけて、男はその場に硬直した。


さて、気を取り直して街を散策しますか。

おっ、屋台からいい匂いがしてくるぞ。俺は屋台に近づいて串肉を手に取った。

「おいおい!!あんた、金は持ってんだろうな?」と店主が言った。下界に降りて3回目の会話キターーー!!

「持ってませんが、何か?」

「タダ食いは困るぜ!あっち行きな!!しっしっ」


うーん、俺の何がいけないんだろう??俺は周囲を観察した。

広場にひときわ人が集まっている場所があった。人込みをかき分けてその中心を見に行った。そこにはヒラヒラした服を着た女が踊っていた。観客はみんな熱狂している。

ふーん、みんなはこういうタイプの人間が好きなのか?

俺は踊っている女の外見をコピーした。


さて、再び街を見て回るか。

俺はさっき来た道を引き返した。すると、さっき俺を追い払った店主が、

「ちょいとそこのお嬢さん、串肉一本いかが?」

「いや、金持ってないから」

「金なんか要らないよ!サービスサービス!」

おっと、なぜか知らんが串肉ゲットだぜ!ラッキー!!


俺は串肉を口にくわえたまま、満足げに歩いていた。

やっぱ人間界の食い物はうめーな。特に中心に刺さってる棒がカリカリして歯ごたえ抜群だ。


と、道端で何やら揉めている人だかりが目に入った。腰に剣を下げた若い男たち数人と、泣きそうな顔の少女が立っていた。

「くそっ、魔物討伐依頼を俺たちより先に受けやがって!お前みたいな女にできるわけねえだろ!」

「で、でも、依頼内容に性別制限は……」

「うるせえ!お前が行ったら死ぬだけだ!死体処理の手間が増えるんだよ!」


ふーん、これが人間界の揉め事ってやつか。

俺はトコトコと歩いていき、男の肩をポンと叩いて、

「おい、ジャマダババア…」と小声で言った。

男は振り返り、

「は?なんだてめえ……って、すげえ美少女…」

よし、今度こそ正しくあいさつが通じたっぽい。俺は嬉しそうに微笑んだ。

「か、可愛い…」と男はつぶやいた。


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