表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/23

元・深窓の令嬢と『洗脳』

 現代日本で花粉症で亡くなったと思われた杉山花恋は、シードァ(英語で杉)神聖国のポラン(英語で花粉)公爵領で、ポラン(英語で花粉)・カラニーナとして転生したと思っていた。

 紆余曲折を経て、現代日本に戻ってきた杉山花恋は、あちらの世界は夢の中の世界だと考えたが、入院患者の証言などから、夢の中の世界と現代日本の杉山花恋が勤務している病院には密接な関係があると考えられた。

 そして、夢の中の世界は、どういったシステムかはわからないが、集中治療室に眠る姫宮香蓮(あちらの世界のヒミカ)のために、兄である姫宮医師が用意したものであるとは判明したものの、手も足も出せない状況であった。


 そして、案の定、こちらの世界で眠りにつくと、見覚えのあるギヤ(カラニーナ)の部屋で目が覚めた。

 外を見ると、昨晩の夢の中でシードァ(英語で杉)神聖国に入国していたことをギヤ(カラニーナ)は思い出した。

 本日も絶好調に祝福(杉花粉)が舞っている。


「あ、ギヤ!おはよう!」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)ギヤ(カラニーナ)に声をかけてきた。

 その傍らには、コウ(元・皇太子)がいる。

 ふんぞり返り具合が激しくないので、既に白石が憑依しているものと思われる。

「コウは、もしかして、ヒミカの部屋に泊まったの?」

 前日は、この世界に来た時に、まだコウ(元・皇太子)に白石が憑依しておらず、聞いていられる余裕がなかったため、コウ(白石)が『部屋持ち』かどうか知らないギヤ(カラニーナ)ヒミカ(花粉強者ヒロイン)に聞くと、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、ぶんぶんと頭を横に振った。

「そんな、まさか、恐れ多い!」

「いや、この中身、ほっとくと、可愛い女子は全員俺の物みたいな雰囲気出して危ないから、ヒ…ミ…、じゃなくて、ヒミカから、『部屋』の入り方聞いて、俺の意識があるうちに入るようにしてる」と、コウ(白石)が答えた。

 ということは、コウ(白石)も部屋持ちだったわけか、と、ギヤ(カラニーナ)は一人で納得した。

 確かに、『部屋』持ちでなければ、呼び名は自由なはずだったが、コウ(白石)の『真名』をヒミカ(花粉強者ヒロイン)が呼んだ時、『真名』以外の部分が途切れていた気がする。

 シライシコウタロウの中に「コウタイシ」が入っているせいで、コウの最初の呼び名がそのまま「コウタイシ」だったのは、意外だった。

 そうすると、執事長とかも、名前に「シツジチョウ」の文字が入ってたりして……と、考えたギヤ(カラニーナ)だったが、まあ、そんな文字が入る名前はそうそうないか、と、考え直してヒミカ(花粉強者ヒロイン)と、コウ(元・皇太子)と並んで歩き始めた。


 よくよく考えたら、すごいメンバーと歩いているな、と、ギヤ(カラニーナ)は、二人を見て思った。

 ギヤ(カラニーナ)の、ありふれた感じとは違い、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、とても可愛らしいし、ヒロインで聖女だ。

 コウ(元・皇太子)も、今でこそ、廃嫡されて残念な感じだが、元々は皇太子だし、本体の性格がアレなだけで、顔は整っている。

 それに引き換え、ギヤ(カラニーナ)は、そもそも、ポラン(英語で花粉)・カラニーナという登場人物すらいなかったというし、『スキル』も、呪った人物が花粉症になるという、大して役に立つこともないものだった。

「あれ?そういえば、コウは、なんか『スキル』持ってるの?」

「あー、俺のは、本体に憑依した瞬間、それまでの行動とかが全部わかるようになるって言う、何のメリットもないやつだな」

 むしろ、本体がやらかしすぎてて頭を抱えたくなる、と、コウ(白石)は、苦笑いした。

「確かに、そのようですね」と、『鑑定』をしたのか、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)コウ(元・皇太子)をじっと見て言った。

「そういえば、私、『鑑定』のレベルが上がったから、もう一回、ギヤの『鑑定』もしてみようか?」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)が言ったので、ギヤ(カラニーナ)は、大人しく鑑定されることにした。

 ギヤ(カラニーナ)の鑑定を終えたヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、青ざめた顔をして、ギヤ(カラニーナ)に尋ねた。

「ねえ、ギヤ、状態異常のところに『洗脳』って出てきたけど、思い当たること、ある?」

 ギヤ(カラニーナ)は頷いた。

「カラニーナの時に、『洗脳』を受けたっぽいのと、ポラン(英語で花粉)公爵邸のスタッフが全員『洗脳』状態だったみたいだから、そっちの『洗脳』もかかってるかも?」

「おい、『洗脳』とか、何で、ファンタジーの世界でそんなヤバいワードが出てくるんだよ!」と、思わずコウ(白石)が反応したが、『洗脳』されてしまっているものは仕方がない。

「私の神聖魔法でたぶん『洗脳』解けるけど?」

「それよりも、花粉症の方を……」

 ヒミカ(花粉強者ヒロイン)の提案に、真っ先に花粉症の治癒を祈ったギヤ(カラニーナ)であったが、「あ、そっちは無理」と、食い気味にヒミカ(花粉強者ヒロイン)に全否定された。

「あ、『洗脳』が解けるのなら、どうせなら、ポラン(英語で花粉)公爵邸のみんなの『洗脳』を解いてあげたい」

「じゃあ、皆の『洗脳』を解いたときに、一緒に解こうか?」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)が提案したので、ギヤ(カラニーナ)は首肯した。

「また、『洗脳』されるとやっかいだから、先に、全世界に、『洗脳無効』結果張っちゃうね」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は祈り始めた。

 特に違いは分からなかったが、何となく、空気が洗われたような気がした。

「ついでに『洗脳』解けたりしないのか?」と、コウ(白石)ヒミカ(花粉強者ヒロイン)に尋ねた。

 ギヤ(カラニーナ)としては何の変化もないから、わかりにくい部分が『洗脳』されているのでなければ、恐らくこの結界自体には既にかけられた『洗脳』を解く効果はないのだろう。

「残念ながら、この結界は、これからかけようとする『洗脳』を無効にするだけで、既にかけられた『洗脳』には効果はないんです」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は苦笑いした。


「そういえば、俺、明日から出張なんだけどさ」

 歩き始めてしばらくした頃、コウ(白石)が爆弾発言をした。

「え?」と、聞き返したヒミカ(花粉強者ヒロイン)は青ざめている。

 まだ、コウ(元・皇太子)が皇太子だったころに、出張に行ったことがあったが、その間は、コウ(当時は皇太子)に白石が憑依することはなかったが、その時代はそもそも皇太子としての私室があったために、何の心配もなかったそうだが、今は話が違う。

 白石がコウ(元・皇太子)に憑依していない間、傍若無人でわがままなコウ(元・皇太子)本体と行動を共にしなければならないし、最初の話からも、コウ(元・皇太子)本体をヒミカ(花粉強者ヒロイン)の部屋に泊めるわけにもいかないので、是が非でも、共有就寝スペースのあるポラン(英語で花粉)公爵邸にたどり着かねばならないのだ。

「とりあえず、コウさんの時間の許すギリギリまで、頑張って行程を進めましょう!」

 そう言って先頭を切って歩き始めたヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、ふとギヤ(カラニーナ)を振り返って言った。

「道中で、『洗脳』を解くことも考えたんだけど、ギヤの『洗脳』はだいぶ根が深そうだから、たぶん解くと混乱しちゃうから、無事にポラン公爵邸にたどり着いてからにさせてね」

 いずれにしても、ポラン(英語で花粉)公爵邸についてから『洗脳』を解いてもらう気でいたギヤ(カラニーナ)はしっかりとうなずき、三人は再び歩き始めた。


 夢の中とは言え、何故か、疲労は感じるもので、時折休憩を入れつつも、なるべくポラン公爵邸(コウの安住の地)に近づくべく、三人は頑張って歩いた。

 ただ、黙々と歩いているもの何となくつまらなかったので、三人はとりとめもない話を始めた。

「そういえば、ヒミカは、誰のルートもいかなかったってことか?」

「コウさんのルートの時は、皇太子がめちゃヤバかったから、問題外だったし、あと二人は、自分でモデルを知ってる分、ないかなって……」

「あ、そういえば、帝国の王子は、ヒミカの兄さんがモデルで、共和国の方は、幼馴染だっけ?」

 ということは、帝国の王子は見ていなかったけれど、姫宮医師がモデルだったのか、と、ギヤ(カラニーナ)は一人で思案した。

 実際に、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、帝国で結界を張ったお礼にと晩餐会に招待されており、そこで、王子を紹介されたらしいが、やはりそこに兄の面影を感じて、ないな、と悟ったらしい。

「確かに、兄妹で恋愛って言うのは違う気がするけど、幼馴染とか、今のコウならありなのでは?」と、しれっとギヤ(カラニーナ)が言うと、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は赤面しながら手をぶんぶん振った。

「幼馴染キャラは、モデルにしてた幼馴染が先月可愛い奥さんと結婚してたから、何か、そう言う気持ちで見られないし、そ、それに、コウさんは、廃嫡された段階で、もう、ストーリーから逸脱してるじゃないですか!」

 もし、ストーリーから逸脱していなかったら、今のコウならありだという事だろうか、と、ギヤ(カラニーナ)はわずかに思ったが、あまりにもヒミカ(花粉強者ヒロイン)が慌てているので、これ以上突っ込むのは野暮かな、と、そっとしておくことにした。

 もしかすると、ヒミカ(姫宮香蓮)は、コウ(白石)に行為があるのかもしれないな、と、ちらりとコウ(白石)を見ると、何故かわからないが目が合った。

 自分で話題振っといてよそ見してるなよ、と、思いつつギヤ(カラニーナ)は、そっと視線をそらした。


 恐れていたタイムリミットはやって来た。

「すまん!ヤバいときのアラームが鳴ってる!これ以上寝てたら遅刻する!」

 コウ(白石)がそう言うと、コウ(元・皇太子)がふんぞり返った。

 ヒミカ(花粉強者ヒロイン)の話では、だいぶポラン(英語で花粉)公爵領は近づいているとのことだが、ここからの旅程はかなり厳しいものになるだろう。

「何かわかんないけど、すっげえ疲れてるから、歩きたくない!」と、駄々をこねる17歳児を引き摺って、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)と二人、ポラン(英語で花粉)公爵邸を目指して歩くこと数時間、やっとポラン(英語で花粉)公爵領にたどり着いた。

 (逃亡中に)見たことのある街並みに、思わずギヤ(カラニーナ)も安堵のため息をついた。

 そして、やっと、ポラン(英語で花粉)公爵邸の建物が見えてきた。

 あと少しだ!

 ギヤ(カラニーナ)ヒミカ(花粉強者ヒロイン)と顔を見合わせて微笑みあったその時……。

 無情にもアラームの音が聞こえてきた。

 この音は、三度寝した時用のヤバいときの音だ。

 起きなければ……。

 だが、ここで起きたら、ただでさえ、コウ(お荷物)の運搬に大変なのに、ギヤ(カラニーナ)までヒミカ(花粉強者ヒロイン)に迷惑をかけてしまう。


 あちらの世界で起きなければならないと思うと、体の力が抜けてきた。

 そんな、ギヤ(社会人)を見たヒミカ(曜日感覚なしヒロイン)は、ギヤ(カラニーナ)に神聖魔法をかけた。

 あちらの世界で起き上がるために、こちらの世界で意識を失うギヤ(カラニーナ)に、その神聖魔法は、あちらの世界での意識を取り戻す作用はなかったようだ

 だが、その代わりに……。


 神聖魔法の効力で『洗脳』が解けて、『洗脳』の影響で書き換えられていた『記憶』が奔流のように脳内に流れ込んできた。


 ポラン(英語で花粉)公爵邸についてから『洗脳』を解くって約束したはずなのに……。


『強制スリープモードに入ります』という自動音声が遠くに聞こえる代わりに、現代日本でのアラーム音が桁試しく聞こえ始めた。


 杉山花恋は現代日本で飛び起きると同時に、あわただしく準備をすると、職場へと駆け抜けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ