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元・深窓の令嬢と郷愁

 前世花粉症で亡くなったらしい、杉山花恋は、今世では、花粉症(謎の病)で療養するポラン(英語で花粉)・カラニーナに転生した。

 その転生先は、杉を聖樹として称え、杉花粉を祝福と呼んで狂喜乱舞するシードァ(英語で杉)神聖国というヤバい国であった。

 ポラン(英語で花粉)公爵の実の娘ではないと知ったカラニーナ改めギヤは紆余曲折を経て、隣国の帝国に亡命した。

 だが、亡命先のサイプレス(英語でヒノキ)帝国もまた、ヒノキを妖精樹と称え、ヒノキ花粉を妖精の鱗粉と狂喜乱舞するヤバい国だった。


 ギヤ(カラニーナ)が絶望の淵にいると、シードァ(英語で杉)神聖国とサイプレス(英語でヒノキ)を繋ぐ扉から一人の少女が出てきた。

 少女の髪はほんのりピンクがかった輝く金髪に、庇護欲をそそる感じの可愛らしい顔面構造をしている。

 ゲームのヒロインとか、こんな感じなんだろうな、と、ギヤ(カラニーナ)は思ったが、そんなことよりも(シードァ)花粉のヤバいシードァ(英語で杉)神聖国から、ヒノキ(サイプレス)花粉のヤバいサイプレス(英語でヒノキ)帝国にやってきたにもかかわらず、花粉対策の装備を何一つしていない上に、何の症状も出ていないようだ。

 要するに、花粉強者だ。

「ここが、サイプレス帝国なのね!」という、花粉強者女子は、声まで鈴の音を鳴らしたような可愛らしい声だ。

「3Dで見るとこんな感じなんだ!」

 花粉強者女子の独り言が聞こえたギヤ(カラニーナ)は、一つの疑念を抱いて、花粉強者女子に近づいた。

「あなた、もしかして、転生者?」

「ひゃ!いつの間に!?」

 驚いても声が絶妙に可愛らしいなコンチクショウと思いながら、そういえば、さっきまで気配消してたな、と思いながら、ギヤ(カラニーナ)は返事を待った。

「もしかして、キミも転生者?」

 花粉強者女子は、ギヤ(カラニーナ)を真剣なまなざしで見つめると、「本当に、転生者なんだ。しかも、なかなか酷な人生生きてるね。性別も、ホントは女の子なんじゃん」と言った。

 何で急にそんなことが分かったのだろう?と、ギヤ(カラニーナ)が考えていると、「ちょっと、ここじゃアレだから、私の部屋に行こう」と、花粉強者女子は、ギヤ(カラニーナ)の腕をつかんだ。

 サイプレス(英語でヒノキ)帝国に初めて来たというのに、自分の部屋があるというのはどういうことだろうかと考えながら、ギヤ(カラニーナ)は、花粉強者女子に連れられるまま歩いていると、花粉強者女子は、そこら辺にある扉に手をかけた。

 扉の向こうは、おしゃれに設えられた全体的に白基調でまとめられた部屋があった。

 ギヤ(カラニーナ)の部屋よりも、以前に入ったことのあるダイやミヤの部屋よりもかなり広いうえに、何か階段とかエレベーターが見えているあたり、おそらく上にも広い。

「この世界は、どの国のどの場所にいても、扉で『真名』を言えば、自分の部屋に戻ってこられるんだよ」と、花粉強者女子は言うと、「ギヤはポラン公爵邸から出たことがなかったから知らなかったか……」と、呟いた。

「なぜ、名前を……」

 それ以前に、この花粉強者女子はギヤ(カラニーナ)の今世での壮絶な人生や、性別を偽っていたことにも気づいていたようだった。

「あ、ごめん、鑑定しちゃった」と、花粉強者女子は舌を出した。

「鑑定……?」

「あ、何か、私が持ってる特殊能力みたいなので、心の中で鑑定眼って唱えながら見ると、相手のことがいろいろわかっちゃうんだ。さすがに『真名』はわからないけどね」と、花粉強者女子は言った。

 この花粉強者女子は、花粉強者であるのみならず、美しい顔面と、キューティクルの保たれた美しい髪に、声まで可愛らしく、さらに、転生チートまで備えているようだ。

 ギヤ(カラニーナ)は、世の中の不公平さを感じずにはいられなかったが、今までのカラニーナ時代の癖で、全く顔には出なかった。


「ところで、あなたは……?」

「あ、私は、グローリア・ヒミカ。このゲームの主人公」

 この時初めてギヤ(カラニーナ)は、この世界がゲームの世界であることを知った。

 そして、ギヤ(カラニーナ)が睨んだ通り、この花粉強者女子ことヒミカは、このゲームの主人公のようだった。

 ちなみに、ゲームではヒロインの名前はグローリア以外の部分は自由に設定できるのだが、何故かデフォルトネームが選択できず、前世の名前からとったら選択できたという、『真名』にきわどい情報をヒミカ(花粉強者ヒロイン)が言い出したため、今後、その情報は、たとえ転生者でもほかの人にはその情報は言わないほうがいいと、ギヤ(カラニーナ)は慌てて諭した。


 この世界のもとになったゲームは『聖女の花の旅』という名前で、文字通り聖女が旅をするゲームで、行く先々で、困っている人を助けたり、その選択などによって、キャラクターと恋に落ちる乙女ゲーム的要素もあるようだ。

「要は、パズルと推理と乙女ゲームが合体したみたいな、ね!」

 ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、得意げに「ね!」と言ったが、ギヤ(カラニーナ)にはあまり理解できなかったし、話を聞く限りあまり面白そうでもなかった。

「まあ、全っ然売れなかったんだけどね」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は続けて言った。

「ヒミカは、そのゲームやってたんでしょう?」

「うん、超やりこんだよ。だって、キャラデザ私がしたし」と、返答したあと、キャラクターデザインで、ポラン(英語で花粉)カフニーナ(愛称がカフン)は作ったが、その、囮になるカラニーナなんて作ってないとも言った。

 最大限にやりこんだゲームでも一度もそんなくだりは出てこなかったな、と、ヒミカ(花粉強者女子)は言った。

「じゃあ、あの、シードァ(英語で杉)神聖国か、ポラン(英語で花粉)公爵領で、サイプレス(英語でヒノキ)帝国の人のことを蛮族って言ったりとかもなかった?」

「あー、あの小競り合いはあったよ、あれね、ヒロインの聖なる力で解決できるから!」

「え?どうやって?」

「サイプレス帝国に、シードァ花粉除けの結界を張るの」

「結界?」

「うん、私、ヒロインだし、聖女だからできるんだ」

 ヒロインにはチートやら特殊設定もりもりだな、と、ギヤ(カラニーナ)は思わないでもなかったが、(シードァ)花粉に悩むサイプレス(英語でヒノキ)帝国民も、蛮族の出現に警戒し続けなければならないポラン(英語で花粉)公爵領民たちも、そして、新たなカラニーナとして誰かが誘拐されることもなく、皆が平和に解決できる策だとギヤ(カラニーナ)は感じた。

「もともと、今回はそのためにサイプレス帝国に来たんだしね」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は言った。


 善は急げ、と言わんばかりに、ギヤ(カラニーナ)と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、サイプレス(英語でヒノキ)城にやってきた。

 門番が警戒してやってきたが、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)の可愛らしい顔面に鼻の下を伸ばし、用件すら聞かないまま通した。

 こいつら、仕事できないな、と、思いつつも、ギヤ(カラニーナ)も気配を消して一緒に城内に侵入した。

 ヒミカ(花粉強者ヒロイン)の顔面が優れているおかげなのか、ゲームの仕様なのかはわからないが、あれよあれよという間に、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)謁見の間に通された。

 ギヤ(カラニーナ)も、さりげなくついてきているのだが、気配を消しているためか、誰一人として咎めることはおろか、気づくことすらない。

 ヒミカ(花粉強者ヒロイン)の前に現れた帝王は、ギヤ(カラニーナ)がこっそり混ざった蛮族たちの長だった。

「はるか昔の伝説に、隣国で『祝福』と呼ばれし害毒がこの国に災いをもたらすころ、聖なる乙女が害毒からこの国を守ってくれるであろうと残されていた」

 どうやら伝説でヒミカ(花粉強者ヒロイン)が来ることが予見されていたから、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)は速やかにお目通りがかなったようだ。

「はい、千年前にこの国に張られた結界の効力が薄れ、隣国の『祝福』と呼ばれるシードァ花粉がこの国の民に害を及ぼし始めていました。よくぞここまで耐えてこられました」と、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)が微笑むと、王は鷹揚にほほ笑んだ。

「今からでも結界は張れるのか?」

「もちろんでございます。まずは、この城で一番高く、外が見渡せる場所にご案内いただきたいです」

「そうすると、城の最上階のテラスがよいな。ついてまいれ」

 王が先に歩き始め、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)がそれについて行った。もちろんギヤ(カラニーナ)もついて行ったが、ヒノキ花粉(妖精の鱗粉)浴びまくりの予感しかしないテラスには決して出なかった。

「それでは、始めますね」

 テラスに着いたヒミカ(花粉強者ヒロイン)は、早速両手を組んで祈り始めた。

 すると、サイプレス(英語でヒノキ)帝国と隣国との境界線にある城壁が淡く光り出し、そこから中央に向かうように光がドームを形成し、すべての光が収束すると、先ほどまでの光景が嘘のように光は消えた。

「今回の結界は、永久的に持続できるように、先代の聖女の結界から改良をいたしました」

「おお!シードァ花粉を感じなくなったぞ!」

 王が喜んで言うと、ヒミカ(花粉強者ヒロイン)にお礼がしたいと手を握った。

「それでは、もう、シードァ花粉の調査に行く必要がなくなったと思いますので、調査を打ち切りにしてほしいです」

「それは、もちろんそのつもりだ。あんな地獄にわざわざ行く必要はない、他には何か要望は……?」

 そこまで確認すると、ギヤ(カラニーナ)は、こっそり城を抜け出した。

 サイプレス(英語でヒノキ)帝国の(シードァ)花粉事情が改善され、もう、ポラン(英語で花粉)公爵領をはじめとしたシードァ(英語で杉)神聖国に調査しに来ないという言質が取れることが大事だったので、ここより先の展開に全く興味がなかったのだ。

 恐らくヒミカ(花粉強者ヒロイン)も、ギヤ(カラニーナ)が、城に潜入する前から気配を消したので、一緒に城に入ったことすら気づいていないと思われるので、ここから別行動になっても何の問題もないはずだ。

 それに、ギヤ(カラニーナ)は、やりたいことがあったのだ。


 城から抜け出したギヤ(カラニーナ)は、蛮族と言われた帝国民は、帝国に飛散してくるシードァ()の飛散量などの調査をしに来ていたにすぎなかったことと、帝国に、シードァ()花粉除けの結界が張られたので、もう、蛮族の侵入はなと思われること、囮は必要なくなることをしたためた手紙を記し、カラニーナの部屋に置いた。

 確実に気づいてもらえるよう、わざと、窓を音を立てて開けると、急いでドアの死角に入り、駆け付けた黒服スタッフが手紙を手に取ったのを見て、静かにドアノブをつかむと、自室に戻った。

 これで、ポラン(英語で花粉)公爵領の人々は、蛮族に怯えることはなくなったはずだ。

 ポラン(英語で花粉)邸の『離れ』の人々も、来るはずのない蛮族対策で気を張る必要もなくなるのだ。

 それに、カラニーナの代わりに、囮として拉致され、ネグレクトのような扱いを受ける少女も必要がなくなるはずだ。

 ギヤ(カラニーナ)は、思わず安堵のため息をついた。


 このときまだギヤ(カラニーナ)は、知る由もなかった。

 他の誰でもない、ギヤ(カラニーナ)本人が、ポラン(英語で花粉)公爵邸の『離れ』の面々に、血眼になって探されることを。

ちなみに、ギヤ(カラニーナ)の鑑定結果は以下です


【名前】ポラン・カラニーナ→ギヤ(現在の呼び名)

【年齢】14

【性別】女(男装中)

【職業】蛮族の囮兼ポラン・カフニーナの身代わり(軟禁)→ポラン邸勤務(『離れ』登録済み・『ポラン・カラニーナの部屋』隣室登録済み)(逃亡中)

【状態異常】花粉症(すべての花粉が対象・重症)・栄養失調(改善中)

【特殊能力】転生特典:本気で呪った相手が花粉症になる

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