準備の準備 3 果たして傘は必要かどうか、、、まずは冷蔵庫の中身について
冷蔵庫の中身にも悩む鈴木の配慮が功を奏するか
冷蔵庫の中身は、非常に難しい問題を抱えている。
あり過ぎれば、冷えない。
少な過ぎれば仲間のために、何も用意しない冷たい奴だと思われる。
しかし、ちょうどいい具合に冷蔵庫の中身をそろえようとしても、ひとりよがりになることが多いと聞く。誰が何を欲しているのか、そして例え好き嫌いを把握していても、今、食べたいのか、飲みたいのか。今じゃないものを入れておくのは、押し付けがましい僕のわがままではないか。
田中は相変わらず、冷蔵庫の中身を眺めている。
僕は思わず「入ろうとしてる?」と聞いてみる。
「炭酸、あるね、てか炭酸ばっか」
彼女の指摘にすかされて、僕の配慮が失敗したことを知る。
「炭酸、飲むかと思って」
「炭酸抜けたら、飲める」
「この前、飲んでたから」
「飲んでない飲んでない、なんなら捨ててた」
「もらったもの捨てないでよ」
「もらったもんは、私の自由じゃない?」
もらったものを飲もうが捨てようが浴びようが自由、それが彼女の主張。
「浴びるの?」
「浴びるね」
「シュワシュワするよ?」
「さっぱりだね」
意外にも続く会話に、気まずさが弾けたのは炭酸のおかげかもしれない。その意味で炭酸ばっか用意したのは正解か。