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準備の準備2 果たして傘は必要かどうか、、、すずきたろうとたなかりょうこの場合

仲間を待つすずきたろう。

傘が必要かどうか、迷っている、、、

「傘、全然雨、防御できないから」

「いやいけるよ」

「いけてないよ、こう、雨降ってきたら、まずどうする?」


僕に向かって、手で雨が降るジェスチャーをする田中は、いつものようにメガネが半分曇っている。そもそも手で雨降るジェスチャーなど初見プレイに困惑気味の僕だったが、

「こう、素早く傘を」と負けじの初披露をぬって、両手でほっぺを挟まれた。そのままを顔を近づける田中の化粧っ気のない肌に気を取られる。

「ほら、びしゃびしゃだ」

田中が細く冷たい手で、頬をむぎゅむぎゅしながら、そう言った。僕は少し目をそらして「そうは雨来ないでしょ」というのが、まず限界だった。

「きますよ、雨、自由自在だから。逆にこんなふうに一直線で上から降る方がない」と僕の頭上からチョップをかますショートカットのこの女は、まず最初にこの部屋へ到着した仲間のひとりだ。

僕は言う。

「傘で大体は防げるから」

「大体だったら、局所、適時、濡れる」

「それぐらいは我慢できる」

「だったら傘ささなきゃいい」

「なぜそうなる?」

「傘ってなに?」

「雨に濡れないように、さす」

「さす為に生まれてきた」

「まぁ、そうだけど」

「なら無理無駄、落ちこぼれでしょ、雨に濡れたら、雨具の恥さらし」

「そんな雨具界は厳しいの?」

「もうそれは役割を忘れた棒、ただの棒です」

「開く棒だ」

「意味なく開く棒」

「意味ないかな、、、」

「しかもワンプッシュで」

「ワンプッシュあるね」

「棒としては贅沢な機能です、それは」

「贅沢なら開けばいいでしょ、そして雨を防げば」

「いや、棒立ちだね、た持って立つ、私はそう思うね」

「そいつ次第じゃない?持つやつのサジ加減だよ」

「サジも持つ、棒も持つ。そいつは両手がふさがっている。腹パン一発で倒せるよ」

そう言って僕の腹を撫でてくるのは、やめてほしい。いや、やめては欲しくないが、いまだけにして欲しい。

僕が「その棒がなければ、全身濡れる」、それならないよりある方が雨も防げるし、いざとなれば棒で小汚い大人を叩くこともできるという主張をしてみたが、もう部屋の隅にある冷蔵庫をあけて、いつものように飲み物を物色している彼女には聞こえていないようだ。

このまま、いつもの気まずい時間が流れなければいいけど。ふたりっきりは、いつも彼女の気分次第。降ったり止んだり雨みたい。僕は棒立ち、棒人間か。

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