73.怪我の治療
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女性を抱えてひたすら山の中を走っていた。
通常あの場所から王都までは1日半かかる。あの場所は熱帯雨林となっており、危険な場所だからこそ珍しい薬草や生き物が多い。それを目当てに人間の密猟者や、奴隷狩りが後を絶たない。
私はそれらの者たちから民や環境を守るためにあの地に派遣された。
今までも幾度となく人間を捕まえて拷問にかけて処分した。ときには人間の国に戦争を仕掛けたこともある。
そのようなあの地で人間の女性を保護したと虎族の女性から連絡があった。保護した者を呼び寄せて話を聞いてみると、「息子達が怪我をした女性を見つけて保護した」と言うのだ。
他になにか不審な点がないか聞いたところ「身綺麗にされているので人間の貴族か、山賊の女、または奴隷商でしょう!」と言っていたので、保護した者が回復次第城へ連れてこいと伝えていた。
いざ連れられてきた女性を見ると、傷だらけで驚いた。
セバスチャンからは保護した女性の子供が噛みついて運んできました。と報告を受けたが意味が分からなかった。
噛みつく?虎が?大怪我するに決まっている。
子供でも私達種族は力が強い。私は傷つけて良いだなんて一言も言っていないのに···それにセバスチャンが子供達の様子がおかしかったとも言っていた。
何かあるのではないか?と疑った。それから傷だらけの女性を観察すると、一見人間に見えるが明らかに違う···神気が溢れてる。意味が分からなかった。
なぜか聞きたかったが女性は何も話さないため、治療を優先することにした。
薬師殿の治療では治らない?と焦ってしまった。しかも竜人の臭いがするとまで言われた···あの婆さんが言うなら確かだろう、さすがに竜人はまずい···
私は急ぎ父親のところへ向かうと決めた。
私達家族は仕事柄上司と部下という関係性であるため、好んで一緒に過ごさない。今回の危険な地への配属も両親から離れたかったからだ。でもそう言っていられない。何故か『助けなければ』と思ってしまった。
あぁやっと王都が見えてきた。あと少しで着く···もう少しの辛抱だ!!!
みずほは目が覚めたがまた知らない天井だった。
起きてすぐは理解できなかったが、家主と薬師の話を思い出し、王都に着いたのではないかと思った。
傷の確認をするため身体のあちこちを触ってみると、布のような物が巻かれ、痛みはあるがまだ我慢できそうだった。
ハァ~ここはどこだろう?早く帰りたい···と思っていると部屋に誰かが飛び込んできた。
バンッと扉が開き「起きたか?怪我はどうだ?」
大丈夫と思いを込めて頷いてみると「良かった。傷が思いのほか多くてな·····その影響で熱も出ていたから治療に時間がかかってしまった。一応回復魔法で深い傷だけ塞いでる。それ以外はそのままだ。だから打撲した箇所やかすり傷は痛むが我慢してくれ。」
「分かりました。」と答えると物凄く驚いた顔をした。「おまえ喋れるのか?」と····頭の中は?マークでいっぱいになった···そういや話すのは初めてだったかな?と思った。
「喋れます。治療ありがとうございました。」
「こちらこそ、怪我をさせて悪かった。」
「いえいえ、助けていただきありがとうございます。そろそろ私は帰りたいのですが、、、」
「あぁそうだよな、でも少し待ってくれないか。父親が話したいって言ってるんだ!」
渋々頷くと家主がドアの外にいた者に合図をし、かっこいい虎の青年が入ってきた。
「こんにちわ。私がこれの父親だよ。虎族の国王陛下をしているマリルティオだ。怪我はどうだい?息子が慌てて君を連れてきた時は笑ってしまったよ!あんな慌てた息子は初めてた。いつも機械のように淡々としている息子がね〜ハハハハハハ」
え?青年が父親?若すぎ···何歳だろう?とりあえず、
「皆さん治療ありがとうございます!」とお礼を伝えた。
「いいよ。それよりも君は神様であってる?」
無言で答えずにいると···「警戒しなくて大丈夫だよ。神から神殿にお告げがあったんだよ!!その特徴にそっくりだったからそれを知りたかっただけ。」
仕方がなくうんと答えると···
「やっぱりそうだよね!!良かった〜実はさ友達に竜人族がいるんだけど、その人から異世界の話を聞いて異世界の料理が食べたいと思ってた。」
は???友達???突然話が変わったみずほは唖然とするのだった。
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