表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/8

プロローグ アキラという少女。

修繕師系のほっこり人助け物語です。

応援よろしくです!!






「さすがに『手先が器用』ってだけで、パーティーに置いておくのは限界だよ」

「そ、そうですよね……」




 ――それは、冒険者界隈ではよく見かける光景だった。

 クエスト終了後や、何気ない酒場での会話中。そのパーティーの中で実力を発揮できていない人物が、爪弾きになるというものだ。もっとも今回の場合は、パーティーリーダーも渋々、といった様子ではある。



「色々と直してもらったし、それ相応の給金を支払いたい気持ちはあるんだけど。それだと剣は武器の専門家に頼んだ方が出来は確かだし……」

「……ですよね。大丈夫ですよ、言葉を選ばなくても」

「いや、本当に済まない。せめて今日は送別会を開くから――」



 他のメンバーも、心から申し訳なさそうに頷いていた。

 だが、解雇を言い渡される側の人物は首を大きく左右に振る。そして、



「だ、だだだだ大丈夫です! 僕、もう帰るので!!」

「あ、アキラ――行っちまった」



 リーダーの制止も聞かずに、踵を返して走り去ってしまうのだった。

 残されたパーティーメンバーはみな、顔を見合わせている。



「あの子、一生懸命なんだけど心配になるのよね」

「良い子なんだけど、良い子過ぎるというか」

「いまだって、生活は厳しいんだろ?」



 そうして口々に、アキラという人物について語るのだった。

 分厚いレンズの黒縁眼鏡に、黒のボサボサ髪をしている女の子。一見して少年のような出で立ちをしており、曰く祖父の残した服を着回しているとのこと。それだけ生活が厳しいのか、あるいはオシャレに興味がないのか。

 その真偽は結局のところ不明だが、何かに向けて一所懸命なのは傍から見ても分かるほどであった。だからこそ、周囲も心配になるのだろう。



「本当に、大丈夫なのか……?」





 そんなこんなで、メンバー全員が最後にそう漏らすのだった。

 アキラという少女が消えていった宵闇に向かって……。









「うううう、明日からどうしよう……」




 ――そんな元仲間たちの心配は、見事的中していた。

 祖父の残した自宅へと戻ってきたアキラは、思い切り頭を抱えている。その理由というのも単純明快で、明日以降の生活費をどうするか、というものだった。

 それ以外にも、新しい仕事を見つけなければならない。

 だが、どれもこれもアテがない。




「うそ。僕の収入、低すぎ……」




 結果として、雑多な部屋の中で膝を抱えるに至るのだった。

 そして、そのまま時間だけが流れて。



「……うぅ。とりあえず、いつものアレやろうかな」



 ふとアキラは、思い出したようにそう言って立ち上がった。

 フラフラとした足取りで隣の部屋へと向かい、彼女には大きすぎる椅子に腰かける。その前には作業机があり、置かれていたのは――ひとつの小さな箱だった。



「お爺ちゃんの残した問題、頑張って解かなくちゃ」



 そう言って少女は、集中力を高めて小箱の鍵開けに励むのだ。

 それというのも、大好きだった祖父が残した遺品、そして課題である。幼い頃から祖父の仕事を手伝っていたアキラは、彼と同じ機巧弄りが好きだった。


 機巧というのは、曰く『失われた古代の文明』だとか。

 祖父が語ってくれた通り、世界には誰も仕組みが分からないものがたくさんあった。それを機巧と呼ぶかは知らないが、たしかに古いものであるのは確かだ。


 しかし、使い道がないなら所詮はガラクタ。

 祖父の趣味と仕事は、最期まで誰にも理解されることはなかった。



「うーん、もう少しなんだけど……?」



 だが、アキラはその夢を追いたい。

 そう思って彼に、弟子入りを志願したのだった。

 そして最後の最後に手渡されたのが、この小箱である。見たところ、何の変哲もない金属の箱、であるように思われた。しかし、鍵穴の奥は複雑怪奇。

 入り組んだ仕組みになっており、手先にだけは人一倍の自信を持つアキラでも難儀していた。これのために様々な工具を購入して試してみたが、どれも外れ。



「むー……」



 終いには、生活費もままならなくなった。

 それでも彼女は、この問題を解くことをやめない。そして、



「ここを……こう?」



 ふとした拍子だった。

 いつもとは反対方向に、工具を捻ってみる。すると――。





「え、えええ……!?」





 ――小箱から小気味の良い音が聞こえ、眩い輝きが放たれた。

 その光はとても強く、目を開けていることも困難で。しかしアキラの視線は自然と、その小箱の中に吸い寄せられていった。

 そうやっていると、彼女の身体に何かが入ってくるような感覚があって。




「こ、これって……!?」





 厚底の黒縁眼鏡がズレて、円らな瞳が露わになるアキラ。

 その瞳には彼女自身、信じられない光景が広がっていたのだった。




 


面白かった

続きが気になる

更新がんばれ!




もしそう思っていただけましたらブックマーク、下記のフォームより評価など。

創作の励みとなります!


応援よろしくお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ