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北風と太陽と、少しずつ春

作者: まなか

寒すぎた冬のあと


少し早めの春が訪れる



相変わらず陽が昇り、陽が沈み、


徐々に陽射しの角度を変えながら


やがて北風は南風に代わる



遠くの山の雪解けに


川には大量の水が流れ込み


斜面には土筆とフキノトウが芽生え



そして桜が咲き誇り


また散って・・



そうやって少しづつ確実に表情を変えてゆく





激しい風雨に晒され


時に横を向き、下を向き


ザラザラのヤスリで研磨され


それがとっても痛くて



少しづつ揺れながら


やがてその痛みにも慣れたころ


また上を向けるようになる・・





荒れ狂う大地のなかで


草木は水と太陽に飢え


人はほほ笑みと愛に飢えている





道標のない道の上を歩けば



誰もが淋しく


誰もが悲しく


誰もが苦しく


誰もが空しい



誰もが未熟で


もがきながら答えを探し



誰もがその時の感情でいろんなこと言っては


またわからなくなって



誰もが目印を見つけだし信じようとするけれど


そうもいかなくなって



それでも誰もが優しく


気を紛らしながら今を楽しもうとしてる




時に後ずさりして


時にしゃがみこんで


時に立とうとしても立ち上がれなくなって


それで随分後退してしまったような気になるけれど


それは後退じゃなく


やはり前進していて




もうなんにも力が入らずに


心が疲れ果ててしまったと錯覚しても


その生命はやはり太陽を求めてる




時は絶対的不可逆性に委ねられ


後戻りできない現実をただただ前へ進め



人もまた絶対的不可逆性に委ねられ


自分だけ取り残され落ちてしまったと錯覚しても


それは落ちたのではなく


長い時間を経て、上昇するための礎を築いている




時に関わりのなか、


傷つけられた気になってしまうけれど




それは傷ついたのじゃなく磨かれたのだ




もしも傷つけられたと思うなら


相手はもっと前に傷つけられている




人は被害者認識は強いが


加害者認識はなぜだか弱いものだ




時に自らを哀れみ惨めに想えても


それはただ一つの景色を経過しているだけで


すべては咲くために蓄えられている




自分を哀れむ心は


同じように誰かのことも哀れんで


それは一見


優しさの連鎖につながるような錯覚をするけれど


哀れむ心とはすべてが屈折へと向かうもの




過剰な涙ほど品のないものはない




それはやがて自己逃避と責任転嫁へ続く







大切なことは


誰かより頑張ることじゃなく


誰かより優位に立つことじゃなく




最後までその足で歩き抜くこと


最後までその道のりを味わい尽くすこと








寒すぎた冬のあと


暖かな春の朝の陽だまりに




その桜は可憐に咲き誇り


ほんのひと時だけ


ささやかに視るものを魅了する




そして立ち止まることなく


なんの未練も残さず


真っ白く燃え尽き、鮮やかに散りゆく






人間って・・



ずっとなにかを想い違いしながら


今年もまた散りゆく桜の前に佇み


めくりめく季節をただ見送ってゆくだけ




その桜と同じだけ


すでにあなたも美しいことすら


知らないままで・・・











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― 新着の感想 ―
[一言] 共感を覚える言葉はあります。 誰かと比較することにこだわらず 最後まで歩ききること、などは その通りだな、と感じます。 ただ、私が理解力に乏しいのか 詩の中で語られるそれぞれの内容が 収束…
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