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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
【改稿中】三章 萌えた大輪の花
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大陸の行方

 占いのためにルーニーの店を訪ねると、ルーニーはこの間の呪術室ではなく、応接室で対応してくれた。


「俺たちはペクセィ大陸という、大陸を探してる」

「……大陸、か。そんなにデカいものを挙げてくるとは思わなんだ。名前の他に何か知っていることは?」

「色んな資源が獲れる。気候は温暖。ピクシーという種族が住んでいるらしい」

「あと、ここにペクセィ大陸の地図があるわ。肝心の他の大陸との位置関係が分からないのだけれど」


 ラプンツェルが亜空間から魔法の地図を取り出す。その様子を見てルーニーはギョッと目を丸くした。何をそんなに驚いているのか。


 もしかして、こっちでは亜空間の魔法は一般的では無いのだろうか?

 そう言えば門番も亜空間やストレージの中はチェックしていなかったな。まあ、鎖国していれば技術に差が出るのは当たり前だからな。


「……なるほど、お前も魔法の達者だったのか」

「え? いや、魔法は勉強したけれど、私はファッションデザイナーよ?」

「倉庫のような魔法については盛んに研究されてきたが、成功したのは未だ一部の一流だけだ」


 へえー。じゃあこっちだと、ラプンツェルの腕前でも魔法使いとしてはすごいんだな。


 ん? それじゃあ、そのラプンツェルに一人前の魔法使いだと認められた俺は、実はかなりの腕前なのでは。

 あいや、慢心するつもりはないけどな。ペクセィ大陸では魔法が発展しているみたいだし、俺なんか三年目のペーペーだし。


 それに、他の分野の魔法であればピクシー族より優れているものがあるかもしれない。


「とにかく、地図まで持っているなら十分だ」


 ルーニーが持ってきたのは直径二〇センチもある大きな水晶玉。それを綿でできた台座に優しく置くと、表面を柔らかな布でキュッキュッと磨いた。


 なんか唐突にいかにもな占いアイテムが出てきたな……。

 この世界じゃあ呪術って呪いと占いとお祈りをミックスしたような技術なんだよな。


 ルーニーが水晶玉に手をかざすと、水晶は淡く光った。そして水晶の中に何かモヤのようなものが浮かび上がる。


 しかし、そこから十分くらい経ったが、それ以上は何も起こらなかった。ルーニーはいつの間にか汗をかいており、少し悔しそうだ。


「……ん? えっ、終わり? 失敗したのか?」

「いや、失敗は失敗だが、微かに反応はあった。つまり大陸は存在している。しかし、おそらくその大陸は、相当厳重に秘匿されているとみえるな?」

「秘匿……」


 なんだろう、アンチレーダー的な結界でも張られているのか?

 何を必死にそんな引きこもっているんだよ、ピクシー族は。もっと外を見ようぜ。


「何かこう、ずばりココ! みたいな感じじゃなくても良いからさ。何か手がかりが欲しい。西とか北とか」

「うーん、何でも良いというのであれば、『ランダマイズド・スプリクト』っていう別の占いがあるぜ。ただ結果には期待するなよ? この占いはふわっとしたことしか教えてくれないからな」

「どんな占いなんだ? ああ、もちろん企業秘密なら無理に聞きはしないけど」

「別に隠すほどの占いでもないし、原理くらいは教えてやるよ。これは、ゴブリンでもでたらめにピアノの鍵盤を叩けば、いつかは名曲が出来上がるっていう話から発想したものなんだがな」


 ゴブリンが名曲を?


「……ああ、無限の猿定理か」

「無限の猿?」

「えっと、俺の故郷にも似たような話があってな。そっちじゃ鍵盤を叩くのはゴブリンじゃなくて猿だったけど」


 無限の猿定理と呼ばれる、無限にまつわる話がある。

 簡潔に言えば、猿がパソコンのキーボードをでたらめに叩き続ければ、いつかはオペラの台本が出来上がるという話だ。


 もちろん一日や二日叩いたところでオペラなんか出来上がるはずもないだろう。

 しかし、何万年、何億年、何兆年とキーボードを叩き続ければ。そんだけ執念深くポチポチ叩けば、確かにオペラすらも書き上がりそうな、気がしないでもない。そんな話だ。


 これは現実世界の話に安易に数学的無限の概念を当てはめてはならないという戒告的な定理でもあるんだが、今回はとにかくたくさん文字を出せば一つくらいちゃんとした単語になるというところに着目したらしい。


「というわけで文字がランダムに単語を為して、これから紙に現れる。もちろん大半は『ち夏い保』や『言水炉あ字じ』みたいな、意味不明な単語ばかりになるが、中には『じゅじゅつ』みたいにちゃんとした単語になるものも現れるだろう。そうして現れた単語は、確率的に考えてまさしく天の導きとも言えるキーワードとなる」

「とても理論的な占いだな。なんか全然占いっぽくは無いけど」

「私の柔らかい若年脳により編み出された最新式の占いだからな」


 考案者お前かよ。


 宝箱から小さなローズクォーツ鉱を取り出したルーニーは、それをすり鉢でゴリゴリ砕いてゆく。彼女の呪術は石を使うものが多いのだろうか?


「確率的に考えればそうかもしれないが、ランダムに現れる文字がそんなにうまいこと正しい単語になってくれるか? 0.01%が鼻で笑われるような超低確率の世界だぞ?」

「まさか、完全にランダムに文字が出てくるわけがないだろう。これは呪術だぞ? お前たちはペクセィ大陸とやらを強く心に思い浮かべるんだ。そこへ私が、呪術を使って文字たちをお前たちの心へ寄せてゆく。すると、出現する単語も自然とペクセィ大陸に関連した言葉になるというわけだ」

「心へ寄せる……?」

「抽象的な話ではあるが、敢えて言葉で表すなら。運命という名の台本から、キーワードを召喚する、というのが一番近いかな」


 なるほど、だから無作為(ランダマイズ)の台本(ドスプリクト)ってわけか。おおよその理屈は理解したが原理は難しすぎてよく分からん。


「この占いは大したことは分からないという反面、出力された結果は非常に信憑性が高いというメリットがある。今まで占いってのはあくまでも占いで当たらないことも多かったんだが、これは占いの歴史を塗り替える発明なんだぜ」


 何せ、だいたい当たるから。ルーニーはそう自信ありげに言って画用紙大の羊皮紙にローズクォーツの粉末を満遍なく散らすと、そこへスポイトでインクを一吸い分垂らした。


 羊皮紙に垂れたインクはまるで草原の火があっという間に広がるように一瞬にして羊皮紙を真っ黒に染めた。すでに何か呪術が発動しているのだろう。普通ならばありえない不思議な光景に俺たち二人は興味を惹かれた。


「おい、紙に集中するんじゃない。大陸のことだけ考えてろ」

「おお、すまない」

「私、目を閉じてるわ」


 両目を瞑って黙念するラプンツェル。俺もそれに倣って目を閉じる。

 いや、閉じたところで俺はペクセィ大陸の名前しか知らないんだけどな。とりあえず脳内でひたすらペクセィという名前を念じてみる。


「よし、もう良いぞ」


 それから一分もたたず、ルーニーの占いは終わった。目を開いてみると、羊皮紙には一面に五ミリ角くらいの小さな文字が書き込まれていた。うわあ、なんか気持ち悪い。


「この中にちゃんとした単語になっているものがあるはずだ。それを探すぞ」

「ええ……依頼しておいてなんだけれど、目がクラクラしてきたわ」

「なんて書いてあるんだ、『か緑せも似有絵五矢ぬ根麺流……』」

「違う違う、『か緑せ』『も似有絵』『五矢ぬ根麺流』……だ。よく見ろ、『せ』と『も』、『絵』と『五』の間にスキマがあるだろう。そこが単語の切れ目を表しているんだ」


 なるほど。つまり占い結果は、『か緑せ』『も似有絵』『五矢ぬ根麺流』『札臨本毛無』『ゆ己』『今現市様田』『森氏男く白血真』『派波葉歯羽』…………。


 いやちょっと待て。画用紙サイズの紙にこんな意味不明な単語が精神をやりそうなほどビッシリ書き込まれているんだが。

 えっ、この膨大な文字の中から正しい単語になってるものを探すの?


 ルーニーはインク壺と人数分のペンを用意すると、意味を成さない『北げ魔枠』をぴっと消した。

 ラプンツェルも筆を受け取ると、こちらにぐっと頭を寄せて紙を覗きこんだ。右のほうにあった『心ね具素津』をぴっと消した。


 美女の顔が近くにあるのは嬉しいが、全く心がドキドキしないのは目の前にSAN値を酷使できそうなくらい大量の文字があるからだろうか……。

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