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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
【改稿中】三章 萌えた大輪の花
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宿が決まった

 事前に落合場所として決めていた役所の前で、ラプンツェルと合流した俺は、宿を求めて街を歩いて回った。

 街の北西部にあった素泊まりの宿はとても清潔であり、俺たちはまず一晩分の料金を払ってそこに泊まることにした。


「部屋数は」


 主人が無愛想なのが玉に瑕だが、聞くところによればとても誠実な人らしい。

 素泊まりとしては少し割高だが、今年の春から秋にかけては一人用心棒を雇っているらしく安全面も高評価だった。多分、三年に一度の演劇祭に合わせてセキュリティを強化しているのだろう。


「二部屋で」

「ん。これが鍵だ」

「部屋の数で料金が増えたりしないのか?」

「繁昌期はな。今はまだ旅人が少ないから、部屋も余ってるんだよ」

「エルトアールの演劇祭ってやつか。夏に開かれるんだとな」

「普段はあまり人が来ないんだがな。その時期だけは信じられないほどの金がこの街に落ちるんだ。だから余所者が心配する必要はない」


 うむうむ、なるほど。そういうことなら。


 俺たちの部屋は隣り合っていた。ドアの錠に鍵を差し込んで開けると、少し縦長の四帖ほどの広さの部屋が俺を出迎えた。


 右側には古びたタンスと、剣や杖を立てかけておく縦長の箱。左の窓際には清潔に整えられたベッドが用意されている。

 床は埃ひとつなく拭かれていて、狭い部屋だというのに圧迫感や息苦しさは感じない。

 ほとんど荷物がない(ように見える)俺は、この広さでも十分なくらいだ。


 俺はストレージから鍋と水瓶を出すと、ハーブティーを淹れるためお湯を準備することにした。


 鍋に水を入れ、火は流石に使えないので加熱魔法で直接温める。これは錬金魔法の基礎中の基礎であり、分子の運動に干渉する魔法のため応用範囲がとても広い。


「今日のお茶は〜、シソにするか。リンゴとベリーのチップスも入れちゃえ」


 レシピは割と適当。うまいものができることもあれば、ちょっと微妙なお茶になることもある。だがそれが良い。


 新鮮なシソ茶を淹れていると、ラプンツェルが部屋を訪ねてきた。彼女から神話について改めて聞くことになっていたからな。

 ついでに、お捻りの具合も聞いてみるか。


 俺はにっこり笑ってドアを開けると、旅装束を少し着崩した彼女を部屋に入れるのだった。


 ――――――


 かつて地球という世界より、創造主ガンダは来訪した。

 地球には魔物も魔法もおらず、科学という神々の神秘が地球を護っていた。


 ガンダはこの地に混沌を見た。それは全ての源であり、世界を形作るものであった。


 ガンダはまず混沌から、生き物以外の全てを創造した。


 まず海を造った。そしてガンダが腕を一振りすると、全ての島と大陸が海から湧き上がった。そして森を造り、山を造り、平野を造った。

 洞窟を造り、砂漠を造り、昼と夜を造った。

ガンダが大地をこつんと叩いた。すると時が流れ、万物は変化し続けるようになった。


(中略)


 そしてガンダは生き物を創造した。

 それは獣が大半であったが、世界の守護者として生み出された生きものたちが居た。


 ガンダは海を護る者としてxxxxを造った。

 森をエルフに護らせ、山をドワーフに、平野をワービーストに護るよう言った。

 昼を護るのは人間、夜を護るのはxxxxx。

 空はドラゴンが護り、生きものを護る者としてxxが造られた。


 そしてxxを護る者として、ピクシーが造られた。


 ガンダは知性を造り、守護者たちに授けた。


(中略)


 ある日、闇の力を取りこんだ獣が現れ、生きものを襲うようになった。それは魔物と呼ばれた。

 ガンダは戦う術として、守護者らに魔法を伝えた。

 そして同時に、魔法は暮らしを豊かにするものであると言った。


 ガンダは己の世界に地球人を招いた。彼らは自在に姿を変えることができた。彼らは地球には無い魔物と魔法にとても驚いた。しかしこの世界の生きもの達を憐れに思い、自らの技術を伝えた。

 それは作物を得る技術、獲物を得る技術、そして建物を作る技術など、多岐にわたる。


 生きる術を手に入れた守護者たちは、魔物への恐怖を克服した。平和を守るために集まって街を作り、やがて国を作った。


 いつしか地球人はこの世界に来なくなったが、守護者らは彼らへの感謝を忘れることは無いだろう。


【ここから先はピクシーにのみ伝わるとされている】


 ピクシー族はかつて、創造主より授かった知性の枠組みを脱した。

 それは知性の進化とも言えた。


 ガンダはピクシー族を讃えた。そしてピクシー族の王を謁見させると、褒美に新たなる大陸を与えた。

 その大陸はペクセィ大陸と名付けられ、ピクシーの王族がこれを厳正に統治すると誓った。


 やがて全てのピクシー族がペクセィ大陸へ移住すると、ガンダは悪しきものから大陸を守る結界を張った。

 ガンダはピクシー族の繁栄を見守るべく、天へと帰っていった。ピクシー族の祖先は、これを恭しく見送ったのである。


【ここから先はピクシーの王族とごく一部のみに伝わるとされている】


 ガンダはピクシー族を讃えると同時に、知性の暴走を懸念した。ガンダは他種族の淘汰を危惧した。そしてピクシー族の時の王に、ピクシーと他種族の関わりを断つように言った。

 時の王はこれを拝命し、然るべき時までこれを厳守すると誓った。そして、全てのピクシーを一つの大陸へ移住させた。


 ガンダは結界の術を時の王に伝えた。ピクシーの王がこれを使うと、大陸が一つ覆い隠されたのだった。

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