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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
二章 嵐の中の来訪者
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こぼれ話 ピクシーと歌

本編の更新は本日19時です

 ラプンツェルが来てまだ三ヶ月ほど。

 俺が家のリビングのソファで寝そべっている時のことだ。

 同じくリビングに居るラプンツェルの美しい歌声が俺の耳を撫でたので、俺はTo-Doリストから頭を上げた。


「gn a syy rya mas hery n gne win niki〜♪」


 最近、森での生活に慣れてきたのか。

 ラプンツェルがこうして一人で歌うことが増えた。


 歌うことに慣れているのだろう。ハキハキした彼女の声は声量があり、同じ階に居なくてもたまに聴こえてくるほどだ。


 ただ……ラプンツェルがなんと歌っているか全然分からんのだが?


 そういや、この世界の言葉と地球の言葉は同じなのだろうか。俺はずっと日本語を話しているつもりなのだが、ラプンツェルと会話ができている。


「gni ad rya s m vej ed sed fd rd y v ne i〜♪」

「それは、何語なんだ?」


 俺がラプンツェルに話しかけると、彼女はその朗らかな声を止めてこちらを見た。


「cy? ああ、歌謡言語って言ってね。五百年前にペクセィ大陸で考案された、詩歌のための言語よ」

「…………ん? えっ、日常会話と歌で、別の言語を使ってるのか?」

「そりゃあ、詩歌の繊細なニュアンスを表現するには、普段使いの言葉は向かないでしょう。かといって日常会話で詩的表現をするのは、なんというか、大げさじゃない?」


 だから、日常言語はより効率的な情報伝達を求め。

 だから、歌謡言語はより芸術的な言語機構を求め。


 ピクシーの歴史の中で日常言語から敬語は消え表現は直接的になり、歌謡言語は普通に文を作るだけで韻を踏むことができるという。


 つまり、ピクシーは詩歌のために言語を新しく作っちまったのか?


「とんだソングジャンキーじゃねえか」

「ソングジャンキーなのよ、ピクシーは」


 朝起きて歌う。飯食って歌う。仕事中は歌って効率アップ。帰りは歌いながら。酒は歌いながら。そして子守唄で眠る。……いや、さすがにそれは脚色してるだろ。脚色してる、んだよな?


 俺は歌が下手だからな、その気持ちはよく分からないぜ。


 だが、元々ゲームの世界だった名残なのか、ピクシー日常言語は、全種族に共通する世界共通語なる都合の良い言語が元になっている。よって、長らく鎖国しているとはいえ一応ピクシー日常言語は他種族になんとか通じるらしい。


 これはペクセィ大陸にたまに流れ着く他種族と意思疎通が取れることから実証されている。


「ラプンツェルよ」

「何?」

「How would you like to have a cup of tea for a change together?」

「あら、良いわね。わたしが準備しようかしら?」

「……いや、俺がやるよ」


 とりあえず、英語も通じるらしい。しかもラプンツェルの様子を見ると、俺の言語が急に切り替わったことに違和感を感じていないようだ。

 となると俺の喋った言葉が自動で異世界語に翻訳されているのか? そして、ラプンツェルの言葉は日本語に翻訳される、と。

 でも、歌謡言語は翻訳されなかったよな。どうしてだ?


 あくまでも、地球の言語を世界共通語に、世界共通語を日本語に翻訳するシステムなのだろうか。そして、世界共通語を祖とするピクシー族の日常言語にも一応世界のシステムが対応できている、と。


 だが、ピクシー歌謡言語はピクシー族の完全オリジナルなので、システムの適応外となる言語、ということか?


 はてさて、これはこの世界の謎を解き明かすピースとなり得るのか。

 俺は思考を巡らせながら、ハーブ茶を淹れるためにソファから立ち上がるのであった。

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