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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
二章 嵐の中の来訪者
33/63

地球から来たドリア

昨日初めて誤字報告をいただき、大変嬉しく思いました。

最近はあまり時間が取れず、作者が細部まで確認しきれていないので非常にありがたいです。

初めてブックマーク付いた時より嬉しかったですね。



※以下駄文

ラプンツェルが夕食のことを「おゆはん」と言った台詞を「お夕飯」と直してくださった方がいましたが、悩んだ末「おゆはん」としました。

詳細は活動報告にて……。

 えーと。固まってしまったぞ。

 ラプンツェルは何て言った? いや、よく聞こえた。俺が地球人かと聞いたんだ。


「知っ……てるの? 地球のこと」


 俺は声を絞るようにそう言った。


「あー、当たりかあ。ほぼほぼ憶測だったのだけれど」

「お、おう。その通りだよ。でも何で?」


 うーん、何でかあ、とラプンツェルは右肘を左手で支えながら、頬杖をついた。


「そうねえ、最初に引っかかったのは乳首かしら」

「ち、乳首?」

「私が夜這いしようとした夜のこと。ドリア、あなた私を見て『ヘソや乳首が無いのか』って言ったでしょう」

「あー。うん」


 確かに言った。ラプンツェルはブラジャーを着けていなかったから、確認は簡単だった。そもそもおっぱいが無いから着ける必要も無いということも推測できた。

 俺もそうだが、やはりこの世界の人には乳房やヘソが無いのだと、不思議に思いつつもそういうものだと納得したのだった。

 ……それがどうしたと言うのだろうか?


「何処かで聞いた言葉だなって思っていたのだけれど。翌朝思い出したの。確か哺乳動物に存在する器官の一つだって。そうなると、あなたの発言は、まるでピクシーのことを哺乳類だと思ってる人の発言じゃない?」

「……えっ、違うの!?」

「ピクシーは精霊の一種。乳で子を育てたりはしないわ」


 精霊の一種……そういやストーリー中にそんな設定がチラッと出てきていたような、いなかったような……。

 ん、じゃあ精霊って哺乳類じゃないのか!


 ……そりゃそうか。人型に獣型にエレメントのような奴まで、様々な見た目してるからな、『ペンタングル』の精霊。


「次に変な奴だと思ったのは、夜這いから一夜明けた食事の後」

「……何かしたっけ」

「したというか、言ってたわよ。『人間はそんなに高等な生きものじゃない』って。コレ、まるで自分のことを人間だと勘違いしてる人みたいじゃない」


 ……そんなこと言ったか? 全然覚えてない。

 いや、そういや性に厳粛であるのが好きじゃないとか色々言ったなあ。詳しい内容はともかく、少なくともピクシーが自分のことを指して『人間』なんて言うのはあまりにも不自然だ。


「そういえば、人間も哺乳類だったなって、学校の授業を思い出して。もしかしてこのドリアという男は、もともと人間だったんじゃないかって思うようになったの」


 ペクセィ大陸を知らなかったのも、ドリアが元人間なら当たり前のことだし。ラプンツェルは何てことないようにそう言った。


「君、頭良すぎない?」

「そこで『私、頭良い!』って言えるほど私は自信家じゃないのだけれど……でもクリエイティブな仕事をしているから、常に頭を柔らかくするようには心がけてる」


 いや、一般ピーポーとしては十分すぎるほどの推理力だぞ。


「まあ、信じがたいことではあるけれど。元人間ってことは間違いないんだろうなーとは思っていたわ」

「なるほど。でもどうして俺が地球から来たと?」


 これに対して、ラプンツェルは根拠はそんなに多くないと言った。


「整合性と常識、あと神話」

「はい?」

「あなたの話に整合性のない部分があったから。あと、あなたはあまりにも『この世界の』常識が無さすぎる。それと、この世界の神話を組み合わせると、うまい具合にあなたが元人間だって情報と合致するの」

「……うん。一つずつゆっくり解説して」


 俺がそう頼むと、ラプンツェルはまず地球の下りは最後に説明すると前置きして話し出した。


「まあ、常識が無い云々は言わずもがなよね。不躾にもいきなりステータスを聞き出す人だし。羽の使い方も我流で、ちゃんと教わった形跡が無い」

「うむむ、申し訳ないです」

「良いのよ」


 常識が無いことはピクシーとして大した問題じゃないから、とラプンツェルは俺を擁護した。

 彼女にとって問題のあるピクシーってどんな奴だろう。できれば俺みたいなピクシーであって欲しくはないが。


「あなた、レベル上げが好きなのよね?」

「好きというか、義務? まあ、確かに好きなのは間違いないかな」

「ゴブリン五千匹に、オドロシコウモリが……三百? あなたそれ、二年間の成果だったのよね」

「うむ」

「あなた、二十五歳になるまで魔物を倒してこなかったの?」

「……あっ」

「あなたみたいなハイペースで、例えば十歳の時から魔物を狩り続けたら、いくらゴブリンばかりでもとっくにニンフへの進化条件を満たしているはず。てことは、あなたは二年前から急にレベル上げにのめり込んだという計算になる」


 確かに、地球にはリアルの魔物はいなかったので、レベルを上げようにも倒しようがなかった。


「まあ、これについては別にどうとでも理由が付けられるんだけどね。この森に飛ばされて娯楽に飢えていたから、レベル上げに楽しみを見つけた、とか」

「う、うむ」

「本当に整合性がないのはその後の発言なのよ」

「まだあるのかよ!」


 さすがにもっとしっかりした根拠くらいある、とラプンツェルは呆れた。


「ええ、それがあなたの言う『メニュー』ってやつ」

「……全く心当たりが無い」

「その力、二年前に森へ来たときに授かったって言ってたじゃない」

「あー、それは言った……あっ、さすがにこれはおかしいな」


 俺はようやくラプンツェルの言う整合性の無い――矛盾した発言に気づいた。


 二年前にメニューが開けるようになったということは、それまで俺は普通のピクシー、あるいは人間として暮らしていたはずだ。

 つまり、この世界に本来メニューなんてシステムが無いことを知っていないとおかしいのだ。


 それなのに、俺はラプンツェルがメニューを知らないことを不思議がった。


「俺が元人間なのは気づいてたんだよな。メニューが、人間族に固有の能力だとは思わなかったのか? ペクセィ大陸は、鎖国をしているんだろ?」

「鎖国してるとは言ったけど、大陸から流れ着いた他種族がいるとも言ったはずよ。私の知り合いにも人間は一人いるけど、メニューなんて聞いたこともないわ」


 メニューは俺の固有の能力だが、俺自身にその自覚が無い。生まれつきの力ならともかく二年前急に授かった能力なのだ。25年もこの世界で普通に暮らしていたなら自覚が無いなんておかしな話だ。


「この矛盾ばっかりはねえ、いくら考えても答えが出なかったのよ。さっきまでは」

「じゃあ、俺と地球がラプンツェルの中で結びついたのはついさっきってことか」


 ふむ。よく良く考えたら、ラプンツェルが見せた例の奇妙な表情。あれは俺が整合性の無い発言をした時に見せた顔だった。灰色の脳細胞を全力で働かせたせいで表情筋を動かすのを忘れてしまっていたのだろう。


「むむっ、じゃあさっきの質問は」

「いや、それは単なる確認事項や純粋な疑問。でも四つ目の質問の答えを聞いた時、まさかとは思った」


 四つ目の質問……ああ、魔法はどこで習ったのかって話か。


「この家にあった『魔法大全』で勉強したって言ったな。よくよく考えたらこれも変か」

「この森に来るまで魔法を勉強したことがないって、どんな生活をしてたのって話よ」


 ピクシーは羽に大量の魔力を溜め込んでいるが、ピクシーのおよそ八割が魔力の溜め過ぎを引き起こし得る体質だそうだ。

 そのため、一年に最低一度、定期的に魔法を使って消費しないと羽にどんどん魔力が溜まって体調が悪くなるそうだ。


「ピクシーは五歳までにみんな魔法を教わるの。それをしなかったってことは、ああ、この人は確実に元人間だったんだなって思って。でも、もう一つの可能性がよぎったのよね」


 それが、この世界で伝えられている神話との関連。


「かつて創造主は、地球という世界に居た、とされてるわ。地球は魔物のいない平和な世界で、魔法が存在せず、科学という神々の御業によって豊かな暮らしが保たれていた、と」

「うん、まあ、すっごい誇張入ってるけど。だいたい合ってるかな」


 ある日創造主は、地球の外に巨大なエネルギーの塊を見つけた。創造主はそれを使い、この世界を創造したと言われているらしい。

 そして、神話の時代には地球から多くの人々がこの世界へ来訪していたそうだ。


「地球人は自らの種族を様々に変えることができたとされてるわ。それなら、あなたが元人間だったことも別におかしくないなって。というか、それくらいしか説明のつく理由が無いのよ。種族の転換なんて。魔物のいない地球から来たなら、二年前までレベルを上げてこなかったのも納得できるし」


 魔法の無い地球から来たのであれば、ここに来るまで魔法の勉強をしてこなかったのも当然の話だ。

 俺が地球人だと仮定して矛盾する事実も無い。


「でも、だからって俺が地球人かもしれないだなんて。少し発想が飛びすぎじゃないか? 地球の存在は君たちにとって神話の世界の話なんだろう? 俺が地球人だって言う根拠や証拠に乏しいと思うが」

「はあ? あのねえ、根拠は今ので全部。証拠なんてあるわけないじゃない」


 ラプンツェルは俺の批判的な言葉を意味が分からないとばかりに切り捨てた。


「だから、聞いた・・・んじゃない。あなたは地球から来たのかって。まさか私も肯定が返ってくるなんて思ってなかったわよ」


 ラプンツェルがそう言い切るのと同時に、彼女の手からモコモコになっていた繊維の塊が消えた。


 どうやら糸作りは、一段落ついたらしい。

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