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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
二章 嵐の中の来訪者
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蜂のように撃つ

四千字程度に納めることを考えすぎていたような気がするので、三千〜五千くらいの幅でゆるく更新しようと思います。


今日の分はちょうど四千字くらいなんですけどね

「これが、畑……の残骸」

「おお、本当に畑……の残骸ね」


 畑の残骸以外の何物でもないぜ。


 俺はラプンツェルを連れて森を案内していた。


 休ませると言っても、彼女を一日中家に置いておくのは良くない。人は生産的行動をしないと――正確にはやりがいを感じないと十分な休息が取れないのである。

 というわけで、今日からしばらくは俺とラプンツェルで協力してスローライフをすることにした。


 俺の畑は初期の頃と比べて随分と様変わりした。


 まずかすみ網が設置されている。霞網というのは、鳥を捕まえるために空中に張っておく少し弛んだ網罠のことだ。


 霞網に鳥がぶつかると糸が絡みついて、鳥がもがくほど解けなくなってゆく。アリジコクの鳥版だな。


 ただこの霞網は、あえて網目を大きくしてある。つまり、小さな鳥が罠に引っかかりにくいようにしているのだ。

 小鳥を捕まえても利は低いのと、鳥が獲れすぎても扱いに困るというのが理由だ。


 しかもこの霞網は、鳥が引っかかると俺のところに知らせが来る魔法がかけられている。鳥が無駄に衰弱することのない安心設計である。


 そして、畑もだいぶ広くなっている。

 最初はタマニオンとコロキャッサバと、少数の果樹しか育てていなかった畑は、単純な面積だけでも五倍以上に拡張されている。

 さらに新しく畑を五つ増やし、定期的に畑を休ませる輪作を実行中だ。まだ試験的にやってる段階だが、そのうちマニュアル化したいものである。

 旅に出ると決めた以上、もはや輪作のマニュアルなんて必要ないかもしれんが……。


 新しく育てているのは小麦、亜麻、大根、ホウレン草、トマト、シトロン、栗の木、柚の木などなど。もはや季節感無視の作物のるつぼと化していた。

 まあ、多少季節からズレてても成長促進の魔法で育てることができるからな。……自然の有り様を魔法で歪めるピクシーとか、自然を愛する種族としてどうなんだと我ながら思うが。


 小麦や亜麻は地球のと同じ種族みたいだが、ホウレン草や柚は異世界原産の似た植物である。正式にはそれぞれ、スピニッチ草、アカユズと言う。


 重要な作物は、まあ全部重要なんだが、小麦と亜麻とトマトがとりわけ貴重だろう。


 小麦は言わずもがな、亜麻は糸や油が取れる。トマトはこんなツラして作物の中でも旨味成分が豊富で、トマトソースはもちろん旨味調味料も作れる。


 ただ小麦と、特にトマトは発見したばかりでまだまだ数が少なく、コイツらは使い道が多いだけに歯痒い。


「でも、嵐のせいでぼろぼろね」

「うーむ。急にやってきた嵐だったから、風除けの結界とか張ってなかったんだよな」


 準備期間さえあれば一日かけてでも結界を創り上げたのだが。予備の苗を残してあるのが幸いである。

 とは言え、修復は三日もあればできると思うが、ただでさえ貴重なトマトがほとんど吹っ飛んだのは痛すぎる。


 霞網もイチから作るのか……面倒なんだよなあ、アレ。


「それで、私は何をしようかしら」

「んー。そういえば俺たち、お互いの能力を全然把握していなかったな。逆に聞くけど、何ができる?」

「そうねえ……研究用の魔法植物を育てたことはあるけれど、こういう大掛かりな農業の経験は無いの。あっ、あの鳥用の網なら多分作れるわ」

「ああ、霞網ね。……チマチマチマチマと亜麻から採った繊維を紡いで編んでゆく、どちゃくそツマラン作業だぞ?」


 俺はそう警告したが、ラプンツェルは大丈夫だと笑って言った。


「こう見えてファッション科の出身なのよ。服飾系の教養として紡績や機織りも一通り勉強したわ。網罠は機織りとはまた勝手が違うでしょうけど、仕組みさえ教えてくれればすぐ作るわよ」

「へえ。ファッション科。……えっ、魔法植物の研究うんぬんは?」

「そっちは趣味の研究。本業はファッションデザイナーなの」


 おお、すげー。多才な美女とかスペック高すぎない?

 俺の存在感が霞になってしまうぞ。


 ……ん? ファッションデザイナー?


「もしかして、君。服が作れるのか?」

「糸と布があれば。できれば道具も。でも道具は無くても裁縫魔法を習ったから何とかなるわ。何? 作って欲しいの?」

「ぜひ頼む! 俺、この一着しか服を持ってないんだ! 二年間もずっと使い続けてるせいでもうヨレヨレでところどころ穴が空いてて困ってるんだよ」

「それは、ある種とても危機的な状況ね……。分かったわ、私は帰って網とあなたの服を作っておくから、後でサイズと網の仕組みを教えてちょうだい」

「よしきた。霞網なら、設計図を書いてあるから、それを渡すよ」


 俺はラプンツェルに糸の材料となる亜麻と霞網の設計図を預けた。


 服の新調に関しては、ずっと忘れていたというか、考えないようにしていた。

 だって、考えても俺には服の作り方が分からないんだもの。パッと想像できるような単純な方法ではあるまい。

 やり方を思いついたとしても、技術を身につけるのにまた何年かかるか……それならいつか人里へ出た時に買えば良いじゃないかというはなしである。


 というわけで、俺は服がダメにならないことを祈りつつこの二年大切に扱ってきたのであった。

 いやあ、よく保ってくれた。ありがたい限りである。


「あっ、服が出来上がるのにどれくらいかかるの?」

「うーん……糸から作って、全身でしょ? 一ヶ月じゃ絶対足らないわね……しかも、その一着しかないなら、着替え用に何着か欲しいじゃない。だとすればどれだけ早くても、半年は要るわね」


 だろうな。オーダーメイドのスーツがだいたい一ヶ月前後だもの。

 うむむ。半年は長いな。しかも、旅に出てしまうと服を作るどころではなくなるだろう。てことは、旅に出るのは少なくとも半年以上先になるのか?


 なんか俺の異世界冒険活劇がどんどん遠ざかってゆく気がするのだが。いやいや、確実に近づいているはずだ。必要な準備を一つ一つ進めているのだから。


 ちなみに、準備をするだけならグリンダの街へ行って買い物をすれば良いという考え方もある。今となっては魔石や糸や多様な作物など、お金を稼げそうなものもたくさん増えたことだし。


 ただ、それをラプンツェルに伝えたら、安易に街へ行くのはやめたほうが良いとのこと。


 どうしてかを聞くと、ラプンツェルは困った顔をしていた。どうやらペクセィ大陸が鎖国をしている理由と関係があるらしく、詳しい理由は教えられないとのこと。

 しかし、よく考えたら長らく他の人類との交流を閉ざしているピクシーがいきなり街へ行っても、驚かれるだろう。むしろ彼らはピクシーを見たことがない可能性が高く、魔物と間違われて攻撃されたら危険である。……ラプンツェルの言う危険とは、そういうことではなさそうだが。


「それじゃあ、私はこれで……あら?」

「ん?」


 手を振って大樹に戻ろうとしたラプンツェルは、俺の背後の空を見て声を上げた。

 そちらを見ると、大振りの鳥が一羽、嵐の去ったこの清々しい空を我が物顔で飛んでいたのである。


「あー、ぼんぼん鳥か。旨いんだよな、アレ」


 白い身体にグレーの尾羽。野鳥にしてはぷくっと太っていて旨そうで、実際美味しい。肉質は少し硬いがなんと言っても脂の質が良いのである。

 クチバシは鋭いので注意は必要だが、魔物ではないので必要以上の警戒は無用だ。


 いつもならあっさり霞網にかかってバタついているのだが、嵐のせいで霞網も破けたり飛ばされてる今ではその光景も見られない。


 だが、俺には追尾式の攻撃魔法がある。

 せっかくなので今夜の夕飯にしようかと考えた、その時である。


 カチッ、と俺の後ろから音が鳴ったので、反射的に振り返った。すると、なんとラプンツェルがいつの間にか拳銃のようなものを握り、その銃口を真っ直ぐぼんぼん鳥へ向けていたのであった。

 ……亜空間収納から出したんだろうが、女スパイみたいな手際の良さだ。


 ラプンツェルが引き金に手をかけると、銃口に小さな魔法陣が現れた。

 魔法陣は術式を図形に変換したもので、ものすごくざっくり言うと、魔法陣を使うと魔力をコンピュータのように正確に変調させられるのである。

 もちろん弱点や欠点はあるが、説明すると長いのでまたの機会に。とにかくその正確な変調から魔道具など安定した発動を求められるものには魔法陣が応用されることが多い。


 つまり、彼女の銃はただの銃ではなく、魔法の銃ということだろう。


「美味しいのよね?」


 一瞬の後、ラプンツェルは引き金を引いて、パァンと銃弾……のような何かを撃った。うむ、銃を撃つ仕草すら美しいな。蝶のように舞い、蜂のように撃つ女といったところか。

 彼女の正確な射撃はぼんぼん鳥の左の手羽元を見事吹っ飛ばし、奴の飛行能力を奪った。


「……君、銃とか使えるんだ」


 そういや、この世界にも銃があったな。

 ゲームでは攻撃魔法みたいな爆発力が無いため影は薄かった。しかし、速射と命中に優れ燃費が良く、爆音で注意を引いたり照明弾で目くらましができたりとなかなか多芸な武器だ。

 サブウェポンに一丁は持っておくと便利なんだな、これが。


 まあ、ゲームはゲームだ。ここはゲームによく似てはいるが現実であることを忘れてはならない。


「そんなに珍しいかしら。身体の小さいピクシーでもそれなりの威力が出るのは魅力的だと思うけれど。私が回収しに行ってくるから、あなたは畑の修復をしていて良いわよ」


 そう告げて今度こそラプンツェルは俺の元から去っていった。

 さて……何から始めますかね。そこらじゅうくずだらけの泥だらけなんだが。とりあえずゴミを畑の外へ出してしまおう。


 俺はストレージにホイホイと木片や石を放り込み、畑の外で中身をドサドサと出してを繰り返した。

 これ人力でやったら近所一丸となってやるレベルだよなあ……ストレージがあって助かったぜ。

「おっ良いんじゃないの?」と思ったらブックマーク、評価などよろしくお願いします。

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