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【改稿中】地球から来た妖精  作者: 妖精さんのリボン
一章 森と家と遺跡
17/63

畑作り

「よっ」


 ドドドドド!


「よっ」


 ゴゴゴゴゴ!


「ふう」


 どうも、畑作りに興じております。ドリアです。


 ここは候補地の一つ、傾いているのと真っ平なのがあったが、真っ平な方だ。

 たった今、木を切って動物から畑を守る土壁を建設したところだ。

 マジックエインセルになって、俺の魔法は目に見えて技術が上がった。今なら畑の一つや二つ作れるんじゃないかと、こうして見繕っておいた土地に手を入れているのだ。


 いや、手を入れてるっていうか、もはや遠慮無しに魔法をぶち込んでいるんだが……。


 詳しく描写をすれば。まず俺は魔法で生成した氷で円盤を作り、それを高速回転させる。次に、円盤を猛スピードで木に衝突させる。すると、ドドドドド、と木が倒れてゆくのだ。


 本当は風の刃とか真空波みたいなやつでスパーンッとやりたかったが、上手くいかなかった。

 ウォーターガンみたいに水を勢いよくぶつけて切ることも案に上がったが、必要な水量が多すぎてMPが枯れると気づいた。


 やはり固形物を何とかするには、固形物をぶつけるのが一番効率が良いのかもしれない。ということで、氷をチェーンソーの代わりにすることにしたのだ。


 切った木はストレージへ。地面に残った草や切り株は、ひとまず放置。


 次に、畑をぐるりと囲む一メートルの土壁を建設。

 あんまり高いと日光を遮るし、加減が難しいんだが……壁は後で撤廃することもできるのであまり気にしなくても良いだろう。

 土はたくさんあるので、魔法でちょいちょいちょいっとしてゴゴゴゴゴ、というわけだ。


 木製の柵じゃないのかと思うかもしれんが、実は次の作業で土壁が必要なんでな。


 その作業というのが、地面に残った切り株と草の処理。

 植物を除去するのに一番手っ取り早い方法は、まあ、お分かりだろう。


「でっかい火の玉!」


 俺の前にある空気が急激に熱を帯び、やがて発火。火の勢いはぐんぐん強くなり、直径一メートル大の火の玉が完成した。


 さっきのふざけたフレーズは、一応俺が考えた魔法の呪文であり、詠唱である。呪文というのは決まった型やフレーズはあまり存在せず、術者が割と自由に決めても良いのだ。

 重要なのは呪文を唱えることで魔法に意味づけをすることである。今の呪文は、自分がどんな魔法を使おうとしているのかを明言することで頭の中のイメージを固め、魔力操作の負担を減らす『簡易化呪文』と呼ばれるものだ。


 巨大な火の玉を生成した俺は、それを大地にぶつけてあたりの植物を焼き払った。

 先の土壁は森へ炎が広がらないようにするための防火壁でもあるのだ。


 ボボボボボ、と次々に火が燃え移ってゆく様は少し怖いくらい壮観である。……自分で撃っといてなんだが、火力強くね?


 こうやって切り株を燃やしているのは、焼畑を参考にしているという面もある。

 地球では環境破壊だと問題になっている焼畑だが、俺個人がやるだけなら星への影響は少ないだろう。

 そもそも焼畑自体が保護すべき伝統的な文化だからな。それを国や企業が大規模に行っているのがアウトなのだ。


 別にこの森を全て畑に変えるわけではないし。そんなに畑作っても管理しきれない上に食材だって余るからな。


「うむうむ、こんなもんで良いだろう」


 俺は土壁の囲いに屋根を増築し、畑を五方から密閉した。こうすればそのうち酸素が無くなって、勝手に火は消えるだろう。


 ここで一旦MPの残量を確認した。残りは88、かなり減ってはいるが、仕上げの作業には足りるだろう。


 頃合いを見て俺は土の屋根を取っ払い、土壁の中で火が消えていることを確認した。

 ここまで来れば、下地はほぼできたようなものだ。


 俺は上空から地面に降りて、まだ熱い焼け跡に少し水をかけて冷ます。覚ました焼け跡に手を触れ、魔力を一気に注ぎ込んで魔法を起動した。


「はああっ!」


 ガガガガガ!

 畑の土が一斉に掘り返され、だいたいクワで耕したのと同じ状態になった……と思う。この魔法を試し撃ちした時はいい感じにフカフカの土になっていたのだ。

 別に複雑な魔法ではない。地面から地下二〇センチまでの土を雑に掘り返すだけの魔法だ。


 もっと細かく耕した方が良いのだろうか? いやでも、あまり土が細かいと水や空気が入る隙間が無くなりそうだよな。


 あとは土壁を作る要領で、魔法で土を十センチほど格子状に盛り上げて畑を区切ってゆけば。


「よし、完成だな」


 完成したのはサッカーコート半分くらいの畑だ。田んぼで言えば三反くらい。素人の農業技術でも、これだけあれば一年分の作物は取れるんじゃなかろうか。


 これで俺も一人前のアースマイトになれることだろう。さっそく記憶を失くしてこなければ。


 明日の朝には焼け跡も冷え切っているはずだし、作物を植えるのは明日からにする。

 種や苗はストレージの中に仕舞ってあるから大丈夫だ。


 そういえば、一つ不思議なことがある。


 ストレージに生きものは入らない。死体を除いては。

 ところが植物だって生きものだろうに、俺のストレージは収穫したばかりの木の実やタマニオンを入れることができる。これはおかしな事だ。

 収穫直後の植物は死んでいないはずだ。地面から引っこ抜いたばかりの草は、すぐに地面に植えればまた育つのだから。


 つまり、俺のストレージは植物を生きものとして見做していないと思われる。なんか生きものと生きもの以外の基準がもう分かんねえなコレ。


 まあ、使い方さえ分かってればあまり気にする必要は無いんだがな。


「この辺りはキャッサバで、この辺りはタマネギだな」


 俺は出来上がった畑に異常が無いことを確認した。あとは土壁をこのまま使うか否かだが……。


「端っこに植物を植えなければ、問題はないか」


 所詮は一メートルの壁なので、大して日は遮っていない。

 だが、この土壁は動物の侵入を防ぐためのものなのだ。一メートルの土壁なんて、野生動物は軽々飛び越えてしまうだろう。そんな意味のない壁なら無い方が良い気がする。

 とは言え、これ以上壁を高くするならやはり陽当たりへの影響は無視できない。


 壁を格子状にすれば多少はマシになるのか?


「……はっ。イイじゃん、このままで!」


 俺は閃いた。

 そもそもこの森は動物がいる痕跡はあるのに、俺の前には警戒しているのか出てこないのだ。

 動物のほうから畑にやって来るのであれば、罠を仕掛けて捕まえることができるのではなかろうか?


 私欲だが、異世界に来て二ヶ月。そろそろお肉が食べたい。


 動物の身体からは脂が取れるし、肉だってストレージに入れとけば腐らないから余すところなく食える。皮は……なめし方とか知らないから、ストレージの肥やしにしておく。

 鳥が捕まれば卵も採れるかもしれない。霞網かすみあみでも張ってみようか。


「なんか、ピクシーのイメージからはけっこう外れる気がするが……」


 ピクシーってもっと、森の動物たちとキャッキャウフフしているイメージだったんだがな。ここに罠を張って動物を食おうとしているピクシーがいるぞ。


 いや、俺も動物たちが友好的なら、捕まえるのを躊躇ためらったかもしれんよ?

 でもアイツら全然近寄ってこないじゃん! 向こうから拒否されているのなら、動物と分かり合うことはちょっと難しそうだ。


 俺はその気になれば虫も食える人間なので、別に肉が無くても良いっちゃ良いんだが。

 俺、菜食じゃないんでね。さすがにこの先ずっと木の実と野菜だけで生きてゆくつもりは無いぞ。


「うーむ、とは言え不必要に痛めつけるのは主義に反する。スネアとか戸板落としは遠慮したい。箱罠は、そこら中に作物エサが埋まってるのにわざわざ怪しい箱に入る動物はいないよな? 入ってきた動物が出れないような構造を考えるか……」


 例えば土壁の上に返しをつけて、内側から登れないようにしたりとか。そのくらいの加工なら魔法ですぐできるし、その程度の罠で良い。

 だって、あんまり賢い罠を作ってもな。俺一人しかいないんだから、獲れすぎても困るじゃん。


 言い方は悪いが、ちょっと愚図な動物が一、二月あたり一匹掛かってくれるだけで十分なのだ。それ以外の奴は好きに畑に来て食事して帰ってくれても構わん。

 別に農業で稼ぐわけでもないので、作物が食われても無事な部分だけ切り取って食えば良い。


 むしろウチでフンをしてくれたら肥料になるし。あんまり被害がひどいようなら、その時はまた考えれば良いのだ。

 森を間借りして、さらに狩猟をしようと言うのだから。森に住む動物に少しは還元するのが筋というものだろう。


「……あ、魔法があるんなら、結界とか再現できるんじゃね? 肉が欲しい時だけ罠を張って、要らない時は結界で侵入を防いでさ。……うむうむ、やはり人間はこうやって知恵を働かせないとな」


 思考の道筋は曲がりくねったが、結論は出た。罠を張って動物を待ちつつ、結界魔法を開発しよう。侵入を完全に防ぐとなるとMPへの負担は大きそうだが、何となく近寄り難くなる程度の弱い結界なら畑にかけっぱなしにしてても大丈夫かもしれないし。


「とりあえずMPも無いし、今日は帰るか」


 一度に全てをやる必要はないのだ。

 俺はふよふよと飛んで帰宅し、明日からの作業に備えてしっかり食ってしっかり風呂に入ってしっかり寝た。


 次の日になると、MPは完全に回復していた。MPの回復が速くなるマジックエインセルの特性のおかげなのか、はたまた寝ると全回復する仕様なのか。ゲーム内ではもちろん後者だったんだが。


 今まで500もMPを使うことなんて無かったんでな……回復率とか全然検証してないんだわ。そのうち検証しよう。


 その日は、午前中は南に傾いているほうの候補地を畑にした。少し手間は掛かったが、畑を一列単位で高さを変え、階段状にしたことで管理がしやすいよう設計した。


 午後は前日に作った畑に種まきだ。コロキャッサバの茎をぶっ刺し、タマニオンのタネをぶち埋め、あとは食った木の実のタネを適当にぶち撒いた。


 あ、タマニオンのタネはネギ坊主の中にちゃんとあったぞ。


「ふう。とりあえず一番最初に育つのはキャッサバかな?」


 地球の植物と異世界の植物では成長速度はもちろん違うだろうけど。


 ……というか、季節とか何も考えずに植えちゃったけど。タマネギって冬を越して春に収穫する野菜だよな。

 今って、春なのか? 秋なのか?


 まあ、いっか。タネはまだたくさんストレージにあるし。失敗したらまた育てれば良いさ。


 俺は良い汗をかいたことに満足し、軽やかなステップで……じゃなかった。アクロバティックな飛行で帰宅したのである。

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