表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/26

エピローグ




 とある大学のキャンパス。

 いつもいる学生たちは、今日ここにはいない。代わりに、まだ数えるほどしかこの地に踏み入れたことのない、様々な学校の制服を着た者が大きなボードに貼られた番号の前に集まっている。

 番号を確認すると、見つけたものはガッツポーズを見せ、逆に見いだせなかった者は静かに去っていく。

 一部の者は、胴上げをされたり、その者の両親に祝福された。

 簡単に言えば、大学の合格発表。

 そこに一人の男が入って来た。

 学生服の上にコートを羽織っており、入ってくるとおもむろに合格者発表のボードから番号を見つけ、確認を済ませる。

 坦々とした表情で、自分の顔を入れるようにスマフォで合格発表の画像を残す。

 そのまま、踵を返して大学を去ろうとした時、そのスマフォが振動して着信を知らせると、画面が切り替わる。

 紗英。画面にはそう書かれていた。

 一度深呼吸してから、男は通話を始める。

「どお?」

 紗英。それは女性のようだった。

「どうって、そっちはどう?」

「もしそっちが『あれ』だったら言いずらいじゃない…… じゃあ、同時に言おうか? せーの」

『受かった!』

 二人の声がシンクロした。

 顔がニヤついているのを隠さず、男は言った。

「良かったな、紗英」

「ミヤジなら受かると思ってた。じゃさ、例によって皆さそって、焼肉屋に行かない?」

「ああ、いいよ。今日は発表を見にくる以外、何にもすることなかったんだ」

「うん、じゃあ、私からみんな誘ってみる」

 そう言って通話が切れた。


 その日の夕方、宮地は紗英からメッセージアプリできた連絡の時間に、焼き肉屋に入った。

 店の奥の座敷に案内されて、そこには皆が待っていた。

 紗英が小さく手を振った。

 一人、二人、三人と立ち上がって、宮地に近づいてくる。

「合格おめでとう」

「飯塚、ありがとう」

「この場で言うのもなんだが、あの大学って首相の一声で、格安であの土地を買ったらしいじゃないか」

「まあ、普通に売ったって、ゾンビがいた土地なんか、誰も手を付けなかったろうけどな。飯塚、お前は春から消防署員なんだって?」

「ああ、そうなんだ。ようやくな。けど、仕事の辛い話ばかり聞こえてくるから、気が重いよ。ただ、やっぱり、やりがいはあるよ。確信した」

 飯塚はそう言って笑いながら、横にズレる。

「やったなミヤジ。おめでとう。これで、晴れて大学生か」

「ありがとう。ケン」

 二人はがっしりと握手する。

「それしても、お前は変わっているよ。ワザワザあの街に研究施設を立てた大学に入学するなんて」

「あそこには謎が残ったままだから、行かなきゃいけない、調べなきゃいけないと思っているんだ。ケンは、その後大工の棟梁(とうりょう)とはうまくやってる?」

「うまくやってるも何も、俺しかいなくなっちゃたからな。自然と大切にされてるぜ」

 ケンはブイサインをして横に退く。

「xx大学に受かったんだってな。すごいな。それに、あんな事件で街に戻れなくなったのに、ウイルスを研究したいなんて、やっぱり宮地は変わってるな」

「えっ? ……もしかして」

 宮地は髪の長い男を目の前にして、記憶の奥をたどっていた。いや、髪をみたらわからなくなるぞ。宮地は頭の中で、髪の毛を消した映像を思い浮かべた。

「三田村!」

 給食を食べたあと、具合が悪くなり救急車で運ばれた三田村。

 そうか、と宮地が考えた。入院していたから、あの時のゾンビ事件に巻き込まれなかった、のだ。

「やっと思いだしたか」

 宮地は三田村を指さして言った。

「髪あるじゃん」

 ケンと飯塚が笑った。

「当たり前だろ。あの頃は病気の関係で、わざと髪を剃っていたんだ」

「懐かしいな、いまはどうして……」

 話しが長くなりそうなところを、飯塚が制した。

「その前に話す相手がいるだろう」

 紗英が前に進み出てきた。

「ミヤジ、合格おめでとう」

「ありがとう。紗英も合格おめでとう」

「……」

 無言のまま紗英と宮地が見つめあっていると、急に、ケンが手を叩いた。

「なんだよ、この()は? チューか? チューなのか?」

 宮地はこの場で抱きしめたい気持ちを押さえていた。

 紗英が、パッと両手を上げると、宮地もそれに応えて手をあげ、ハイタッチする。

 思い返せば、ゾンビ事件のころは、自分は紗英よりずっと小さかった、こんな高さで紗英とハイタッチなんて出来ると思ってなかったな。一瞬、そんなことが脳裏によぎる。

 そして、二人の表情は、はちきれんばかりの笑顔に変わって、声を揃えて言った。

『ヤッタネ!』

 そして、二人は祝福の拍手に包まれた。






読んでいただき、ありがとうございました。




はじめて、エピローグを書いてみました。


終わらせ方が、何度読んでもうまくないな、と思っているのですが、何度書き直してもよくなった気がしません。なので、ちょっと納得は出来ていないのですが、これでおしまいです。



掲載して、約1か月と一週間。


書いている期間は2か月と2週間ぐらいでしたでしょうか。長かった……


本作は気に入っていただけましたでしょうか。気に入っていただけたら、自分の他の作品も読んでいただけると嬉しいです。


ではまた、2~3か月、別の小説を書いていきます。ネタはまだ出てないんですけどね。


またお会いしましょう。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ