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第一話 終幕

天才騎士のリベンジロード~復讐神のスキル無双~【外伝】

アナザーロード始まります。

不定期更新ですがよろしくお願いします!




「はあはあ…」


 自分の呼吸の音と心臓の鼓動が鼓膜に響き続ける。


 口に広がる血の味を感じながら、朦朧とする意識の中、俺は目の前の脅威から目を離さない。


 …守らなければならない。


 俺が倒れてしまえばそれで終わりだ。


 クリス、ユール、シン…


 流れ者の俺を仲間にしてくれて、共に命を懸けて戦ってきた仲間達。



『アンタがどこから来たおかしな奴でも、仲間なの!絶対に見捨てない!』

 言葉は悪いが、本当はとても優しい格闘家クリス。


『僕はいずれ世界一の魔法使いになる。その時、君はこう自慢するといい…僕の世界一の友達だって。』

 プライドは高いが誰よりも孤独を恐れる魔法使いユール。


『お前に会ってから本当に退屈しない。爺さんになっても一緒に冒険しようぜ。』

 強者であるからこそ、更なる強さを求め続けていた剣士シン。


 その三人が俺の背後で生死をさまよっている。



『諦めたまえ、冒険者よ。』


 そう言い放つは銀の鎧を纏った禍々しき存在。

 名前は死霊騎士。

 死を受け入れる事が出来ず、霊体となり、この世に留まり、生者を害するモンスター。

 中級冒険者でも手こずる相手だが、俺達なら楽に倒せるモンスターだ。


 だったはずだが…


 クリスの格闘術は簡単にいなされ、ユールの魔法は鎧に弾かれた。


 シンの大剣は正面から受け止められ、俺の剣術も見切られていた。


 俺は何とか立ってはいるが、全員が満身創痍となっている。


「言葉を話す…やはり変異種か。」


 環境や偶然が生み出すモンスターの突然変異。

『変異種』と呼ばれるモンスターに共通している事は二点。

『異常なまでの強さ』と『限界がない事』である。


 予測はしていたが、いざ目の当たりにすると足がすくむ。


 クリスの高速格闘術と俺の剣術を見切る反応、死霊騎士に有効な魔法に体勢を持つ鎧、怪力無双と呼ばれるシンの大剣を片手で受け止める膂力…


 何よりも自我のないモンスターである死霊騎士が言葉を話している。


 …すでに自分達では対処出来ないほどの強さとなっている。


『安心しろ。お前達は私の中で永遠に生き続ける。その苦しみが私に更なる力をもたらすだろう!』


 頭に響く死霊騎士の言葉からか、刀を持つ手が重い。

 今すぐにでも逃げ出したい衝動に駆られる。


「駄目だ、逃げろ…!」


 背後から聞こえたのはシンの声だった。


「頼むから…逃げてくれ…!お前だけでも!」


 あれだけの傷を負いながら、それでもシンは声を絞り出していた。


「そうだよ、逃げて。世界一の…魔法使いは…もういい。友達を守れるなら…!」


「お願い…ここは私達で食い止める…!」


 倒れていた三人が立ち上がった気配を感じた。

 だが、それもただのやせ我慢だ。


 シンに至っては死霊騎士の剣をその身に受けている。

 もうまともに剣すら握れないはずだ。


 次、攻撃を食らえば今度こそ…


「………」


 死霊騎士は殺した人間の魂を喰らう事で更なる力を身につけると聞く。


 四人で立ち向かえば恐らく最後の抵抗は出来るだろう。


 死ぬまでの時間をほんの少し長くするぐらいは。


 だが、それではこの変異種の死霊騎士の情報をギルドに報告出来ない。


 それはこの周辺に暮らす人々が脅かされる事になる。


 …刀を腰の鞘に収め、振り返る。


 三人の目には恐怖はあったが、その決意は変わらないようだ。


「………」


 俺の大事な仲間達…


 …不思議だ。


 さっきまであんなに怖かったのに今はとても穏やかな気持ちだ。


 そうだ。せっかくだし、伝えよう。


「…ありがとうな、シン、ユール、クリス。」


 三人の驚く顔を見て、少し笑ってしまった。


 ああ、最期に良いものを見る事が出来た。


「参る!」


 刀の柄に手をかけたまま、一気に死霊騎士へ走り出す。


「戻れ、戻ってくれ!」


 シンの叫びが聞こえるが、すでに俺の目は死霊騎士に向けられていた。


『見事だ!その心意気しかと受け止めよう!』


 死霊騎士は強者故の余裕の態度のまま、背負った剣を振りかざした。


 …そうか、お礼をちゃんと言ったのは初めてか。


 鞘から刀を引き抜き、死霊騎士の首元へその刃を向ける。


『ぬう!』


 必殺の居合いを死霊騎士が剣で受け止めるが、俺の攻撃は止まらない。片手で抜いた状態からすぐに両手持ちに変え、死霊騎士の剣戟を受け流す。


「行け!ここは俺が止める!」



 俺の声に三人が走り出す音が聞こえた。


『いいだろう、貴様に免じて奴らは貴様を殺してからいただくとしよう。』


「させないっ!」


 あいつらが生き残ればそれでいい。


 三人がギルドに戻れば、すぐに高ランク冒険者達が招集されるはずだ。


 だから、時間を稼ぐ!


 死霊騎士の剣は重く大きく、対する俺の刀は細身で受け止めれば簡単に折れてしまう。だから、攻撃は常に受け流す。死霊騎士も受け流すだけの戦いは未経験のはずだ。

 

 刀が折れれば鞘で、鞘が割れれば、この柄で…!



 一分、一秒、ほんの瞬きでもいい…!


 あいつらが逃げる時間を!



 そんな俺の必死の想いは


『ふむ。飽きたな。』


 死霊騎士の放った一撃で終わりを告げた。


「………え?」


 死霊騎士の剣が俺を刀ごと切り裂いた。

 吹き出る血と折れた刀がゆっくりと宙を舞う姿に、俺は倒れた。


 …駄目だったか。


 血が流れ、体温が下がっていくのを感じる。


 呼吸が細くなり、鼓動も弱々しくなっていく。



 ああ、残念だ。


 もっとあいつらと一緒にいたかった。


『ははは!心配するな、すぐにあの臆病共も私の糧となるのだ。私の中で待っているがいい。』


 …おい。


 俺の仲間を侮辱するな…!


 顔を上げ、目だけで死霊騎士を睨む。


『ほう?貴様、まだ生きて…』


 力が欲しい。

 こいつを倒せる力が!


『…もし、あと数年もすればとても私では倒せない戦士になっていただろうな。』


 だが、それもここまでと死霊騎士が俺へ剣を突き刺そうとする。


 力を!


 俺の命で足りないなら、死後の魂も、何もかもをくれてやる!


 だから、よこせ!


 こいつを斬る力を!


【…いいぜ、お前に決めた。】


 死霊騎士とは違う声が頭に響いた瞬間、世界は真っ暗になった。


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