第三三話 俺の無茶振りはいつものことでしょ?
翌朝。俺の目覚めは最悪だった。
痛む横っ腹を抑えながら、俺は憎々し気な視線を布団へと注ぐ。そこには幸せそうな緩んだ表情で眠る白焔龍の姿が。
「コイツ、いつの間に……」
昨夜は大天守での初めての夜ということもあって、高級布団を新調した俺。ふっかふかの布団に身を包まれ、穏やかに眠ったはずだ。……ちゃんと一人で。
宴会で飲み過ぎ、酔いが回った白焔龍は、確かにシシリア達が客間へと運んだはず。そう俺は記憶している。
だから、何故ここに白焔龍がいるのか判らない。コイツには魔道エレベーターは使えないはずだし……。
《マスターが就寝中の深夜に、窓から侵入した白焔龍を確認しております》
白焔龍が眠っているからか、ヒイロが俺の疑問に答えてくれたんだが……まさか窓の外からとは……。
何故、俺の私室に侵入してきたのか。その理由は全く判らないが、コイツのせいで俺の安眠が妨げられてしまったのは間違いない。更に、痛む横っ腹からも判るように、どうやら俺は蹴飛ばされたらしいのだ。マジ、フザケルナヨ。
「おい、てめぇ! いい加減に――」
文句を言いながら、バサッと強引に布団を剥ぎ取り――言葉を失ってしまった。
幸せそうに眠る白焔龍の乱れた浴衣。辛うじて大事な部分は隠されているが、大いに肌を露出していた。
俺を蹴飛ばしたと思われる細い脚は、柔らかそうな太腿まで浴衣からはみ出し。大きく開いた浴衣の胸元からは、今にも形の良い豊かな果実が零れ落ちそうに――って、何しっかり解説しているんだよ、俺は!?
俺は慌ててバサッと掛布団を白焔龍に放り掛け、ふぅ~と深く息を吐き出す。
《マスターの変態度指数が急上昇しました》
うっ。へ、変態とちゃうわ! 完全に事故だったし! 俺に非は無いはずだっ!
《と、犯人はこのような意味不明な供述をしており――》
やめてぇ~! それ以上は、俺の心が持たないから!
はぁ~……マジで最悪な目覚めだわ。ホント、朝から憂鬱。
事故とは言え、乙女のあられもない姿を見てしまった事に、ちょっぴり罪悪感を抱く紳士な――ここ重要! ――俺。何だかさっきまでの苛立ちが霧散してしまった。
「はぁ~……とりあえず起こすか」
朝っぱらから精神的に疲れてしまった。俺は嘆息しつつ、幸せそうに眠る白焔龍を優しく起こすのだった。
………
……
…
「むにゃむにゃむにゃ……」
「ええぃ! いつまで寝てやがるッ! さっさと起きろやッ!」
「ぎゃふんっ!?」
声を掛けても起きず。優しく身体を揺すっても起きず。ペチペチと軽く頬を叩いても起きず。
全く起きない白焔龍に、堪忍袋の緒が切れた俺が、思いっきり蹴飛ばしで起こすのに、そう長くは掛からなかった。
◇ ◇ ◇
「おぬしは、まっこと鬼畜野郎じゃのう」
「うっせ! テメェがいつまでも起きないからだろうが!」
朝食後。俺は白焔龍を伴って、第三階層へとやって来ていた。
朝食時は目を輝かせて『美味いのじゃ!』と、食事に夢中だった白焔龍は本当に静かなものだった。だが、食事を終え、一度満足すれば、ずっとこうやってネチネチ文句を言ってくるのである。
どうやら朝の一件を根に持っているようで、やれ『優しく起こせ』だの、やれ『おなごを足蹴にするなど正しく鬼の所業じゃのう』だの、やれ『妾のような美女が添い寝してやったのだから、感謝してもよいのだぞ? ん?』だの……何故か俺の隣に張り付いて、ずっとブツブツ文句を言ってくるのだ。
マ・ジ・で! うざったい事この上ないんだが。何故か俺から離れようとしないし、腕を組み、そっぽを向いて妾は怒っているアピールしてくるし。お前は構ってちゃんかと、こっちが文句を言いたくなる。
BGMがうるさいし、俺から離れないしで、仕方無く白焔龍を第三階層へと連れて来たわけだ。コイツの興味を他に移さないと、今日一日ずっと隣でブツブツ文句を言ってくること間違いなしだしな。
「長閑じゃのう」
白焔龍は辺りを興味深そうにキョロキョロと見渡している。よし、どうにか俺の思惑通りに、興味が他に移ったようだ。
「まぁな。まだまだ住民は少ないし、寂れた印象になるのも仕方がないと思う」
「ふむふむ。ということはつまり、この侘しさはおぬしの落ち度ということじゃな」
ニヤニヤと意地汚い笑みを浮かべる白焔龍。
テメェは、俺を事あるごとにディスらないと死んでしまう病気にでも罹ってんのか? ホント、根に持ちすぎだろ……。
「はいはい、そうですね。俺の怠慢です。もっと頑張らさせて頂きます」
とにかく、コイツの相手は真面目にしてはいけない。へいへいと軽くあしらうのが正解だ。
「む。おぬし、妾の相手を面倒がってないか?」
「ソンナコトナイデスヨ」
す、鋭いねぇ……。
白焔龍と他愛もない会話をしつつ歩いていると、もうすぐ公民館へ着く。
この辺りになってくると、住民である亜人達の姿がちらほら。これから農作業へと向かう者、洗濯物を抱えて水場に向かう者と色々だ。
「あ、シャン様だぁ!」
そんな住民達を観察しながら歩いていると、元気な声が聞こえて来た。そちらに目を向ければ、数人の子ども達が俺を見つけ、トタトタと駆け寄って来る。
「おはようさん。朝から元気そうだな」
「「「おはようございます、シャン様!」」」
俺が朝の挨拶をすると、声を揃えて一斉に挨拶を返してくる子ども達に、自然と微笑が浮かぶ。
この子ども達の年齢はバラバラだ。上は一二歳から下は三歳までと幅広い。
「今からお前らも公民館に行くのか?」
「うん! いまからおべんきょーなの!」
「こらっ。違うだろ? シャン様には、ちゃんとした言葉遣いをしないとダメって、昨日シシリア様にそう教わっただろ?」
「あ! そっか! えっと、えと……はい。これからおべんきょーです!」
何と心癒される光景なのだろうか。一番小さな子の言葉遣いを年長者が窘め、精一杯の敬語を使おうとするその健気さが微笑ましい。
子どもは素直だし、純真無垢で可愛いよなぁ。どっかの誰かさんとは大違いだわ。
「……何やら言いたげな目じゃのう」
「いやぁ~、別にぃ~?」
「ふんっ! まぁよい。それよりも妾を小童共に紹介せぬか」
「へいへい。お前ら、このお姉さんは昨日このダンジョンに来た白焔龍だ。ダンジョンを見学したいらしいから連れて来たんだ」
「うむ! 妾こそが、この世の頂点たる災龍が一柱、〝白焔龍〟である!」
ドドンと、効果音が付きそうな感じで、白焔龍は腰に手を当て、大仰に胸を張った。
そんな白焔龍の挨拶に、ポカ~ンとする子ども達。
「はくえんりゅう様ぁ~?」
「りゅうって、ドラゴンのことぉ~?」
「む! 貴様! 災龍とドラゴンは――」
「おいおい、落ち着けよ。こんな小さな子に怒るなって。嫌われるぞ?」
災龍とドラゴンは、人と猿並みに違いがある。多分災龍にとって、ドラゴンと同列に語られるのは許容できない話なのだろう。瞬間沸騰器のように怒る白焔龍を俺は宥めた。
「お前らもいいか? 災龍とドラゴンは、お前達亜人と獣程の違いがあるんだ。獣と同じ扱いは嫌だろ?」
「うん、それはイヤ~」
「だろ? だからこのお姉さんにごめんなさいしないとな」
「うん、わかったシャン様! おねえさん、ごめんなさい」
災龍の事をドラゴンと言った子どもが、素直に白焔龍へと謝った。頭を下げる幼子に、さしもの白焔龍でも、怒りを継続させることは不可能だったようで。
「むぅ~……仕方がないのう。貴様の謝罪を受け入れようぞ。ただし、今後は間違えてはならんぞ?」
白焔龍が苦々しい表情ながらも、嘆息しつつ矛を収めた。まぁしっかり釘を刺すのが、コイツらしいか。
行先は同じ公民館ということで、子ども達を連れ添って一緒に向かう事に。
その道中、すっかり機嫌が元通りになった白焔龍は、幼子達に囲まれて楽しそうに微笑んでいた。こういう所があるから、天災級モンスターとはいえ、何だが憎めないんだよね。
余談だが、この異世界の成人年齢は国家毎に違うらしい。一二歳から大人として認める国家があれば、違う国家では満一八歳が成人年齢だったりと様々らしい。凡その国家では一五歳から成人らしく、我がダンジョンでもそれを採用している。
とはいえ、日本のような義務教育制度があるはずも無く、成人年齢など有って無いようなものだ。
シシリア曰く『貴族の子弟や、大商人の子らには、成人までに多額の資金を使って教育を受けさせますが、日々を生き抜くことに必死である平民の子どもでは、お金のかかる教育を施すことはありません。幼子であれども働き手として家業を手伝わせるらしく、平民の子が教育を受ける余裕が無いのが現状です』とのこと。
貧富の差によって教育が受けられないらしく、当時、この話してくれたシシリアが、暗い表情をしていたのが強く印象に残っている。
そこで、俺のダンジョンでは満一二歳になるまでの労働を禁止と定めた。満一二歳になるまで、教育を施すことにしたのである。まぁ教育と言っても、文字の読み書きや、簡単な計算くらいだけどね。
本当は未成年の労働を禁止し、義務教育化を進めたいのだが、時期尚早だ。人口が増え、人手不足が解消されてからじゃないと、至る所で問題が発生する事間違いなしだしね。
子ども達には、公民館の一室を利用して、午前中と午後の一時間だけ、勉学に励む時間を設けた。ざっと四時間くらいかな。短めなのは教師を務める人材不足もあるが、一番の理由は、子ども頃は遊んでなんぼだと思うからだ。その遊びが子ども達にとっては、財産にもなると思うしね。
それはともかくとして。
公民館に着くと、これから勉学に励む子ども達とは別れ、俺と白焔龍はミリルの執務室へと向かう。
「どのような生物であれ、幼子は愛いものよのう」
「まぁな。子は宝っていうし」
「カカッ。全くもっておぬしの申す通りじゃ」
子ども達とのふれあいで、白焔龍は大層上機嫌の御様子。もしかして子ども好きなのかね?
フロア長の執務室に入れば、奥のデスクで執務にあたっているミリルだけが居た。
「あっ、シャン様。ようこそおいで下さいました?」
「なんでそこで疑問形? まぁいいけど。ミリル、お仕事ご苦労さん。で、エリーは?」
小首を傾げながら出迎えてくれたミリルに、気になっていたことを訊ねると。
「エリーさんは、子ども達に文字の読み書きを教えてもらっていますよ」
とのこと。あれ? おかしいな。確か子ども達の勉強は、犬人族のおばあちゃんが見てくれるはずだったんだけど……。
「エリーさんには、カリラおばあちゃんの代役をお願いしたんです。カリラおばあちゃん、ちょっと体調を崩しちゃったみたいで」
疑問顔の俺に気付き、ミリルが理由を教えてくれた。
なるほどね。エリーは代役だったわけか。あぁ~、こんな所でも人材不足が浮き彫りに……。
「ど、どうしました、シャン様?」
「あいや、何でもない。人手が足りないのはいつもの事だしな」
「あぁ~そういうことですか」
ミリルは納得したようで、それはそれはもう大きく頷いていた。多分ミリルが一番人手不足なのを理解し、その煽りを受けている被害者だろう。苦労を掛けます、フロア長殿。
ミリルに対して、申し訳なさを募らせていると、コンコンとノック音が聞こえた。
「誰でしょう?」
「イリスです。入ってもよろしいでしょうか」
イリス? 誰だ、それは。
俺にはイリスという者が何者なのかは全く判らないが、ミリルには判っているようで、俺に視線で入れてもいいかと問うてくる。ミリルの様子から察しても、別に招かれざる客というわけでは無さそうなのでミリルに頷いた。
「どうぞ。入って下さい」
「失礼しま――って、えぇ!? シャ、シャ、シャ!?」
入室してきたのは、茶髪ショートヘアの若い猫人族の女性だった。その猫人族の女性――イリスは、礼儀正しく一礼してから入室。そして頭を上げると、俺と視線が合い、瞳をまん丸にして驚いている。
「落ち着いて、イリス。深呼吸よ、深呼吸」
ミリルが苦笑しつつ、落ち着かせるように言うと、イリスは胸に手を当て「すぅ~、はぁ~」と深呼吸を繰り返す。
最後に息を大きく吐き出し、何とか落ち着きを取り戻したイリスが、俺に向かって礼儀正しく頭を下げ、挨拶してくる。
「は、はじめまして、シャン様! わ、私はイリスという者で、ミリルさんのお仕事を手伝っています! まさかシャン様がお越しになられているとは露知らず、御無礼を致しました! えっとえと、こ、この度はシャン様の御尊顔を拝する機会に恵まれ、わ、私イリスは天にも昇るような幸福を――」
あ、うん。全然落ち着いてなかったのね。何だか挨拶が支離滅裂になっているし、めちゃくちゃ緊張しているみたいだわ。
「ストップ! ストップよ、イリス! あなた、緊張し過ぎて何を言っているのか判らなくなっているでしょ!」
「――はっ! も、申し訳御座いません、シャン様! 取り乱してしまいましたでございます!」
目をぐるぐると回していたイリスがミリルの声にハッと我に返った……のか? 語尾が怪しいし、まだ冷静になれてはいなさそうだ。
「はは。まぁいいさ。つーか、勝手に来たのは俺だしな。イリス」
「はいっ!」
元気よく返事し、直立不動になるイリスに苦笑してしまう俺。
「今後もちょくちょく来ると思うから、よろしく頼むな」
「ははぁ~!」
……大袈裟だ。この子、キャラ濃すぎない?
一応解析鑑定してみると、年は一四歳とシシリアと同い年であるらしい。同い年でも落ち着きは雲泥の差だな。
その後、白焔龍が「妾もはよ紹介せぬか」と急かし、イリスに紹介すると、案の定テンパってしまうイリス。またもやテンパり過ぎて目を回し始めたので、ミリルが見ていられないとばかりに、堪らずイリスを下げたのだった。ホント、見ていて楽しい子だと思う。
ここのところ俺は忙しく、公民館に訪れる機会が減っていた為に、イリスとは初対面だった。ミリルに話を聞くと、あのイリスに仕事を手伝ってもらっているらしい。多分、仕事量に耐え兼ねて人材を確保したんだろうな。すまん、ミリルよ。
緊張しいのイリスに、ミリルの手伝いが務まるのかと少し心配になったが、どうやらイリスは優秀らしく、大層助かっているのだと。人は見かけによらないねぇ。
「それで、シャン様はどのような用事だったんですか?」
「あぁ、それは……」
俺は言葉を濁し、隣に座る白焔龍を見た。その視線で色々と悟ったミリルが曖昧な笑みを浮かべて頷いた。
「何じゃ? 二人揃って、妾を見よって」
「いや、何でもない」
不思議そうな白焔龍に、何でもないと首を横に振ってから、ミリルに向き合う。
「まぁそれだけが理由じゃないんだけどな」
そう言いながら、俺は懐から一枚の白紙を取り出し、ミリルに手渡した。
「これは?」
受け取ったミリルは、何も書かれていない白紙に訝し気に眉を顰める。
ミリルの疑問には答えず、俺は次に鉛筆を、消しゴム、定規……等々、図面を書くのに必要な道具を取り出し並べていく。うん、こんなもんかな。
「えっと……絵でも書くんですか?」
「おおっ! 流石ミリル、よく判ったな」
「いえ、あの……何故?」
「何故って、そりゃ必要だろ? 図面に起こさないと、都市建設なんて出来ないだろ?」
「はぇ!? と、都市建設!? ど、どういうことですか!?」
あれ? なんでミリルは驚いているんだろう? このダンジョンに街を造るっていう話はしてなかったか?
こういう時に頼りになるヒイロは、白焔龍を警戒して沈黙を貫いているので、自分で自分の記憶を掘り起こす。……なんだか言葉が変になった。
そんなどうでもいい事を思いながらも、記憶を掘り起こす……と、思い出した。確かこのダンジョンに街を造るという話をした時、ミリルは不在だった気がする。
「あぁ、すまんすまん。勘違いしてたわ」
「そ、そうなんですか? よかったぁ、てっきり私がその役目を負うのかと思っちゃいましたよ。あはは」
「あ~その、安心しているところ悪いんだけどさ。その役目はミリルにお願いするつもりだから」
「そうですよねぇ。私が――って、えぇぇぇぇぇ!?」
「うぉ!? 妾は居眠りなんてしておらんぞ!?」
ミリルの大絶叫が執務室に響き渡った。俺はこうなるだろうと予想していたので、しっかりと耳を塞いで防衛。そんで白焔龍よ。語るに落ちているのでは? つーか、この一瞬でよく眠れたな……。
「むむむ無理ですよ! そんな大役、私には出来ませんって! これ以上仕事量を増やさないで下さいッ!」
あ。ミリルの本音が飛び出したわ。すまん、やっぱり慣れない仕事に心労が溜まっているんだな。
「まぁまぁ、落ち着けって。な?」
「『な?』じゃありませんよっ! 落ち着ける訳ないですよ! 私には出来ません! 無理です! 拒否します!」
あ~らら……ご立腹のミリルさんに拒否されちゃったよ。まぁ気持ちは判らんでもないけど。
「そう言わんでくれよ、ミリル。お前だけが頼りなんだ」
「うっ」
「それにシシリアにも手伝ってもらう予定だし」
「シシリアさんも、ですか?」
「そうそう。何もミリル一人だけで考えろなんて言わないさ。俺も手伝うし」
「うぅ~……判りました」
俺がどうにかこうにか宥めつつお願いすると、最終的にミリルが溜息をつきながらも折れてくれた。ふぅ~、よかったよかった。
「それで、この紙は? 図面を書けばいいんですか?」
「そうそう。シシリアと相談しつつ、何が必要で、どういった配置にするのか。今から考えて欲しいんだ。この第三階層をまとめているミリルなら、多少想像しやすいだろ?」
「いえ、全然想像できません」
ミリルがキッパリと真顔で否定した。あれ? お、おかしいな?
「村と街では、あらゆる面で規模が違います。広さも人も何もかも」
「そりゃそうだけど」
「なので、レイラ様に手伝ってもらうわけにはいけませんか?」
「レイラに?」
「はい。正しくはレイラ様の部下である紫影の皆さんですが。紫影の皆さんに近隣の都市の詳細な地図を手に入れてもらいたいんです」
なるほど。他都市を参考にする訳か。多種多様な街並みを比較して、よりよき計画を立てる為に。
「判った。俺からレイラに頼んでおく」
「ありがとうございます」
その後、俺とミリルは、どのような街を造るのか、何が必要なのかを箇条書きで出していき、軽く打ち合わせを続けていく。無理だ、嫌だと拒否していた割には、ミリルとの話は弾む。
何だかんだ言って、案外乗り気だったんだろうな。これを作りましょうと、意見を述べるミリルはとてもいい笑顔を浮かべていた。
いつの間にかミリルとの話し合いは白熱し、お昼になってシシリア達がやってくるまで続けられるのであった。
……因みに、白焔龍はというと。
「スゥスゥ……」
穏やかな寝息を立てて、幸せそうに居眠りをしていたのだった。
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