第二七話 ヒイロによる魔改造
【第二章:魔森集結編】開始です!
――ロードスティン王国、とある一室にて。
精緻な装飾が施された赤の長ソファーに優雅に腰掛け、ワイングラスを片手に高級ワインを嗜む美青年。
ロードスティン王国第一王子がその人、ラディウス・フォン・ロードスティンである。
馥郁たる芳醇なワインの香りを楽しみ、唇を濡らす。その何気ない仕草でさえ、世の女性を虜にするだろう洗練された所作であった。
「中々美味であるな」
「それはそれは重畳で御座いまっせ」
ラディウスが簡潔に高級ワインの感想を述べると、媚びへつらったような声が聞こえた。
ラディウスの対面に座する丸々と太った商人風の男性だ。ラディウスのご機嫌を窺うかのように揉み手をしながらヘラヘラと謙った笑みを浮かべている。
「ほんに感心するぞ、ルノー。そこまで本格的に御用商人を演じるとはな」
「へへ~、これがワイの本業ですからな」
適当な事を宣いやがってと、ラディウスは内心で謗るが、口には出さない。言ってものらりくらりと躱されることがこれまでの経験で判っているからだ。
ラディウスにとってルノーという人物は、一応は協力者である。だが、その正体は未だ不明。
他人を全く信用しないラディウスが、この正体不明であるルノーの事を探らないはずはない。だが、どれ程ルノーの正体を探っても、その尻尾さえ掴めない状況だった。
そんな得体の知れない人物をラディウスが重用しているのは、偏にその能力の高さにある。
隠蔽能力に始まって、高い情報収集能力に、小細工の数々。その能力は凄まじく高く、信用は出来ないが、ビジネスパートナーとしては有用な人物であった。
「……で、本題は? ただ珍しいワインを届けに来ただけではないだろう?」
くいっとワインを呷った後、ラディウスが鋭く問い掛けた。
「ラディウスはんは、せっかちですな。折角の上物のワインやねんから、ゆっくりと楽しめば宜しいでしょうに」
そんなラディウスの剣呑な視線を飄々と受け流して、ルノーは空になったグラスにワインを注ぐ。
「俺もそう暇じゃない。用が無いならすぐに帰――」
「どうやらワイの工作が上手くいきよったみたいですわ」
「――何?」
ワインを注ぎながらラディウスの言葉を遮って、淡々とルノーは話した。
それはラディウスにとっては聞き捨てならない重大事だ。ルノーを真っ直ぐに見詰め、話の続きを促す。
「案の定、カトレア王国はアルメニア王国に宣戦布告しましたわ。開戦日時は約三か月後ですな」
「ほう。予定通りだな」
「えぇ。ワイが偽造した密書が上手く役立ってくれましたな」
「偽造した密書だと?」
「あぁ、ラディウスはん、そう心配せんでも足はつきよらんて、安心して下さいな」
「フンッ。貴様がそんなへまをするとは考えておらん。その密書の内容を教えろ」
「おぉ! ラディウスはんに褒めて頂けるとはっ! ワイも頑張った甲斐がありやしたな」
「……」
両手を広げ、大袈裟に喜ぶルノー。そんなルノーに対してラディウスの視線は極寒の如く冷たい。
「ハァ~。ラディウスはんはノリが悪いでっせな。そんなんじゃ、愛しのシシリアはんに愛想尽かされまっせ?」
「……いいから早く教えろ」
ラディウスの美しい容貌に青筋がピクピクと浮き上がる。
「おぉ怖い怖い。では、ラディウスはんが本格的に怒り出す前に、答えときましょか。内容は簡単なもんですわ。カトレアの王族暗殺の首謀者がアルメニア王国の軍部の重鎮。そして暗殺の実行者が魔族だと記しただけでっせ」
「魔族だと? ……なるほどな」
ルノーに偽装密書の内容を聞き、ラディウスは腕を組み、黙考した。
「この情報は使えるでっしゃろ? ラディウスはんにとってはこの戦争に介入するいい口実が出来たってことですわ」
「確かに、魔族関連ならば俺が介入しても問題あるまい」
魔族関連で騒動があったロードスティン王国だからこそ、諸外国に向けて魔族に対して徹底抗戦の意思表示が出来る。勿論、多少避難や嫌疑がかけられる可能性もあるが……。
「お前の事だから何か手を打っているのだろう?」
ラディウスが問い掛けると、ルノーはニイタァ~リと嗤った。
「それは勿論でっせ。ただ――」
「何が望みだ?」
「ふふん、流石ラディウスはん。やっぱり話が早いですな。ラディウスはんはこの戦争に介入するつもりなんでっしゃろ?」
「まぁな。カトレアに与し、アルメニアの領土を掠めとる絶好の機会だからな」
「ふむふむ。ならば、その戦争介入の際、ワイにも同行させて下さいませんか? それと亜人を出来る限り多く頂きたいのですわ」
「同行は構わん。俺の部隊であれば問題は無いだろう。しかし、亜人? その理由は――」
「おっと。それは流石にラディウスはんにも教えられんで」
理由を問い質そうとしたラディウスだったが、その前にルノーが断って来た。
ラディウスはルノーの本来の目的が判るかもしれないと思ったものの、ルノーの秘密と領土欲を天秤に掛け、後者に大きく傾いた為、それ以上は問い質さなかった。
「ふん、まぁいいだろう。畜生共は貴様にくれてやる。それで仕込みは?」
「おおきに。仕込みはバッチリでっせ。なにせ既にアルメニア王国に野良の魔族を潜入させてますからな」
流石に仕事が早いと、ラディウスは思った。と、同時に、この提案をラディウスが受け入れるとルノーに読まれていた事に思い至り、多少の敗北感を味わう。
内心で苦々しく思いながらも、決して表情には出さない。表情に出してしまえばルノーを調子付かせることになってしまうからだ。
「では早急に部隊を編成し、アルメニア王国に進軍しなければな。カトレア王国にも使者を遣わそう」
「うんうん。それがええでっしゃろ。あと、これはサービスにしときますが、アスカ神聖法皇国を動かしておきましょ。ラディウスはんの軍事行動に正当性を持たせる為に」
「何ッ!? アスカ神聖法皇国だとッ!?」
これにはラディウスも驚きを隠せない。ガタッと立ち上がって思わず声を大きくしてしまう。
アスカ神聖法皇国。
遥か昔、聖と魔が入り乱れる混迷期に、人類の守護者として人々を魔の手から救済した神聖人アスカが建国の祖とされる宗教国家。
神聖正教会の総本山であり、人類の守護者である神聖騎士団を有する国家として知られている。
人類と決して相容れない存在である魔に属する者を徹底排除し、人類の共栄圏を守護する役目を担う国家として知らぬ者はいない。ロードスティン王国が如何に大国とはいえ、その存在は無視でき得ない。
「彼の国の発言力は、我が国を以てしても無視でき得ないのだぞ!? 余計な事を……」
ラディウスは頭痛の種を抱え、額に手を当て思わず唸ってしまった。
「いやいや、ラディウスはん。アスカ神聖法皇国が介入するからこそ、ラディウスはんの思惑通りに進むんでっしゃろ」
「……どういうことだ?」
「あの国は魔に連なる者に対して一切容赦しない国でっしゃろ? そないな国が、魔族を擁しているっちゅうか、ワイが仕込んだんやけど……魔族がいるアルメニア王国に対してどういった姿勢を見せるか、容易に想像出来るやろ?」
「……ふむ。確かにアスカ神聖法皇国であれば、アルメニア王国に対して強硬姿勢を取ることになるだろう。つまり、魔族を擁しているアルメニアと戦争中にあるカトレアを擁護する可能性が高いな」
「そうそう。そこで魔族に翻弄された国としてロードスティン王国を率いるラディウスはんが参戦。アスカ神聖法皇国との繋がりも強化されるし、カトレア王国と共同戦線を張っても問題なしや。アスカ神聖法皇国が軍事行動に太鼓判を押してくれるし、大義名分もこっちのもんや」
事が順調に運び、楽しくて楽しくて仕方がないといった風にルノーは話す。
「しかし、問題が無い訳では無いぞ? 我が国に魔族がいたという真実は今更覆せない」
「確かにラディウスはんの言う通りかもしれんけどな。それは真実であって事実とちゃう」
「どういうことだ?」
ラディウスはルノーの発言の意図が掴めず、眉を顰め訝しむ。
「ロードスティン王国の貴族に魔族がおった。これが真実や。けどな、事実としてはな。『アルメニア王国の陰謀によって、ロードスティン王国に魔族が潜んでいた。これを第一王子であるラディウス殿下が、国民に被害が及ぶ前に魔族の企みを阻止。今なお逃亡中の魔族を捜索し続けており、王国民に害する者として処断する姿勢』っていう風に、もう既に噂を流しておるで」
ルノーの説明を訊いて、ラディウスは「ほう」と感嘆の息を吐く。
この事実が噂として広まれば、ロードスティン王国に非は無くなる。魔族に付け込まれたとして多少の評価が落ちるが、それは些細な事だ。ラディウスは問題なしと判断した。
更に、この噂の良点は、アルメニア―カトレア間の戦争に介入する口実にもなる事だろう。
「流石はルノーだな。ここまでお膳立てされているとは恐れ入る。今後ともいい関係を築いていきたいものだ」
「ほっほっほ。ワイの方としても、ラディウスはんは良い顧客様やし、その申し出はとても有難いでっせ。ただ……報酬の方がよろしく頼んますよってに」
「あぁ。報酬は約束しようとも」
ラディウスはいつになく上機嫌で頷き、少し温くなったワインを飲み干すのであった。
◇ ◇ ◇
ハンクメン伯爵軍との戦が終わり、その後の宴に、褒美としての名付けを行ってから数日。
珍しく俺は一人きりの執務室で、システムウィンドウを眺めていた。
今回、ハンクメン伯爵軍をダンジョンに誘き寄せ、大量のDPを獲得したわけだが、その使い道を考えているところである。
未だかつてないほどの大量のDPに、ニマニマが止まらない。良かった、今は俺一人だけで。こんな緩んだ表情は誰にも見せられないぜ。
《マスターのニヤけ顔を拝見出来て、私は満足です》
……チッ。そう言えば一人(?)いたわ。まぁヒイロだけは仕方がない。何せ魂の回廊とやらで常時繋がっているんだから。
《そうです。私とマスターは一心同体ですから。ポッ》
いや、確かにヒイロの言う通りだけど……『ポッ』って何だよッ、『ポッ』ってッ!
取り敢えず、脳内イメージで照れている桃髪美少女にチョップをして黙らしておく。
《いたっ! マスター、何するんですかっ!》
「うるせぇ! ちょっと黙ってろ! 今、俺は色々考え事があって忙しいのっ!」
シュボ~ンとするヒイロを無視して、俺は何にDPを使おうかと考える。
色々と欲しい設備もあるし、そろそろダンジョンも拡張したいしな。何から手を付けていくのがいいだろうか……。
現在のダンジョン階層は、たったの三階層だ。いや、表層部である零階層を合わせれば四階層になるのかな?
第零階層……草原地帯、ダンジョンの出入り口の洞窟。
第一階層……侵入者防衛用迷路。
第二階層……農業・鉱山地区。村人達の住居、公民館、公衆便所、農地、水源、駐屯所、魔物軍兵舎、訓練場、鉱山。
第三階層……迷路、闘技場、俺の居住スペース(各私室、執務室、会議室、謁見の間、食堂、厨房、風呂場、トイレ、鍛冶場)。
以上が、現在のダンジョンの全貌だ。こうして表してみると、色々と詰め込んだ感があるなぁ~。やっぱりここは階層を増やして、色々と設備を増設しよう。
まずは階層を増やして~――と、早速ダンジョンの改造に取り掛かろうとした俺に、ヒイロが思わぬ報告をしてきた。
《累計DP獲得量が規定値を更新しました。迷宮核の一部権能が解放。サポート疑似人格:ヒイロの能力が解放されました》
ふぇ? 何々? いきなり何なの?
《累計DP獲得量が規定値を更新しました。迷宮核の一部権――》
いやいや、聞こえなかったわけじゃないからッ! 二度も同じ事を言わんでよろしいッ!
とにかく、良く判らんがまだまだ迷宮核には隠された能力があるようだ。今回のハンクメン伯爵軍のおかげ(?)で、累計DP獲得量が規定値を更新したみたい。まぁ七〇〇名分のDPを獲得したからね。今まで一番の大量獲得だったし。
それによって、迷宮核の一部権能が解放されたようだ。もしかすると他にも隠し要素があったりするんじゃなかろうか。そこんとこどうなの? ヒイロさん。
《申し訳御座いません。その質問に対する明確な回答は持ち合わせておりません》
ん~どうやらヒイロにも判らないみたいだ。けっ、サポート人格なのに使えない奴だ。
《ももも申し訳ごごご御座いませんッ! 此度の失敗は疑似人格の破壊に免じて――》
ストォ~~~~~ップ! ストップだ、ヒイロッ! そんな武士のように切腹なんてせんでよろしいッ! 判らないならそれでいいからッ! ねっ、ねっ?
《ありがとうございますぅ~~~! マスターはやっぱり優しくて、寛大で、尊敬出来て――》
ふぅ~。どうやらヒイロの自決を止めることが出来たようだ。ちょっと揶揄っただけで自害とかシャレにならんわ。
ん? 待てよ? もしかしてヒイロだけじゃなく、俺の眷属たちもちょっとしたことでヤバ目な行動を取るかもしれん。いや、その可能性は高いな。これからは発言に注意しよう。
さて。ヒイロが落ち着いたところで――何やらずっと感謝の言葉を述べていたが、それは右から左に聞き流していた――、解放された権能などについて説明してもらう。
《今回解放された権能は、物質召喚の強化です。マスターの記憶情報を元に、私が演算処理をして具現化することが可能となりました》
……マジでか。つーことは、今までの物質召喚での条件である『俺が直接触れた物』以外でも、記憶にある物であれば、具現化することが出来るって事だよな。
《その通りです。マスターが気になっていた銃器類なども物質召喚可能です》
はぇ~。それは素晴らしいな。銃器とかロマンがあるし、早速物質召喚してみようかな。
リボルバーなんて良いじゃないか。腰に差したリボルバーをササッと抜き放って、敵の眉間を撃ち抜いたりなんかしちゃって。銃口から漂う硝煙をフーっと吹き消して、目を細めちゃったりしちゃって。うん、カッコいい。
「……なんて思ってたんですよ」
がっくしと項垂れる俺。カッコいい未来予想図は儚くも散ってしまった。
どうやら俺の記憶から具現化した物質を召喚するには、直接触れた物質よりも何倍ものDPを消費するようで、とてもではないが、趣味の為だけにリボルバーは物質召喚出来そうにない。
それと生物等は以前と変わらず召喚出来ないみたいだ。乳牛とか欲しかったんだけど、どうやらヒイロ曰く、《魂が存在している物質は直接召喚不可》らしい。
牛肉やら牛乳やらを召喚するのも一々コストがかかるから、直に乳牛を召喚し、家畜として育てれば、DPの節約になると思ったんだけどなぁ。そうは上手くいかないみたいだ。
まぁ今後次第では、隠された権能が解放され、物質召喚の制限が緩和される可能性もある。
つーことはよ? ハンクメン伯爵軍のようにダンジョンへと上手い事誘き寄せれば……なんてな。前回は上手くいったが、次も上手くいくとは限らない。
「それに、ちょっと人をDP源としてしか考えられないのは、流石にヤバいよな」
思わず危険思想に染まりかけた思考を、頭を振って消去した。
物質召喚の強化以外にも、確かヒイロの能力が解放されたんだっけ。具体的にはどんな能力なんだ?
《具体的に言えば、演算領域の拡大。それに伴っての演算処理能力の向上。あと、スキルの統廃合が可能となりました》
ふむふむ。PCで例えるなら、CPUがアップグレードしたってことか。
《正確には多少違いますが、概ねマスターの考えで合っています》
あ、多少違うんだ。まぁ詳しく説明されても俺には判らないだろうし、その認識でいいのだろう。
それよりもスキルの統廃合?
《私又はマスターとの魂の回廊を構築した者に限り、スキルの統廃合が可能となりました。》
ヒイロ、もしくは俺と魂の回廊を構築した者に限って、か。つまり、現状は俺のスキルしか統廃合とやらが出来ないってことだな。
まぁ今の俺のステータスは、配下から還元されたスキルがめちゃくちゃあって、見辛いなぁと思ってたんだよ。
ヒイロに任せれば、整理整頓してくれるのかね?
《お任せ下さい、マスター。スキルの統廃合を実行しますか? YES/NO》
スキルの統廃合をしたくて堪らないのか、ヒイロがウズウズしている感じだ。ここでNOを選択して意地悪するのは、何だか後々厄介な事になりそうな予感……。
ヒイロの能力も強化されたみたいだし、試してみるか。まぁ悪い事にはならんだろう。
という事で、YES! ヒイロ、頼んだぞ!
《対象者の許可を得ました。これよりスキルの統廃合を実行します……特殊能力〈炎威〉、〈炎鎧〉、魔法スキル「火魔法(上級)」を統合……失敗。耐性スキル「火耐性」「熱耐性」を生贄に捧げ、スキル統合を再実行……成功しました。固有能力『炎帝』を獲得。付随して耐性スキル「炎熱無効」を獲得しました》
ちょ、ちょっと待てぇぇえええ! 固有能力だと!?
驚く俺をよそに、ヒイロのスキル統廃合は続く。
《特殊能力〈分析〉、〈鬼ノ眼〉、〈鉱物鑑定〉、コモンスキル「魔力視」、「気配察知」、「算術」、「簿記」、「異世界言語」、「魔力操作」を統合……失敗。コモンスキル「逃走」、「悪路走行」、「俊足」、「疾駆」、「礼儀作法」、「家事」を生贄に捧げ、スキル統合を再実行……成功しました。固有能力『炯眼』を獲得しました。固有能力『炯眼』を統合獲得した際に用いたコモンスキル「魔力視」、「気配察知」、「魔力操作」の情報を元に新スキルの取得を開始……成功しました。特殊能力〈魔力感知〉を取得しました》
はぁ!? また固有能力かよ!? どんだけだよ……。
はっちゃけたヒイロの快進撃はまだまだ止まらない。
《固有能力『悪夢』に、特殊能力〈影移動〉、〈影操作〉、〈精吸〉、コモンスキル「尋問」、魔法スキル「闇魔法(影)(精神)」を統合……成功しました。複数のスキルの統合により、固有能力『悪夢』は、固有能力『闇影者』に統合進化しました》
あは、あははは……もはや乾いた笑いしか出ないよ。ヒイロさん、張り切り過ぎじゃね?
《特殊能力〈狼牙拳〉、コモンスキル「剣術」、「身体強化」、「頑丈」、「剛力」、「盾術」、「体術」を統合……成功しました。特殊能力〈武芸百般〉を獲得しました。耐性スキル「暗闇耐性」、「精神耐性」、「毒耐性」を統合……成功しました。耐性スキル「状態異常耐性」、「精神攻撃耐性」を獲得しました。ダンジョンの権能「念話」を解析……成功しました。コモンスキル「思念伝達」を取得しました。以上でスキルの統廃合は完了しました》
ふぅ……やっと終わったか。それにしてもヤバヤバな結果になってしまったな、ハハ……。
《煩雑だったスキル群が整理され、とてもスッキリしましたね、マスター》
あぁ、うん。スキル統廃合出来て、ヒイロは上機嫌だ。もしかしてずっと気になっていたのかもしれないな。
とにかく、ヒイロによる魔改造――スキルの統廃合の結果を見てみようか。
種族:悪魔族(上位悪魔)
称号:迷宮の支配者
性別:男性型
年齢:一七歳
髪:黒 瞳:紅 肌:白
補助人格:ヒイロ……統廃合・解析鑑定・思考加速・高速演算
固有能力:『支配者』……魔物調教・奴隷術・配下強化・能力還元
『炎帝』……火炎支配・獄炎操作・高速詠唱・炎鎧
『炯眼』……解析鑑定・思考加速・言語理解・超感覚
『闇影者』……闇影支配・精神操作
特殊能力:〈魔力感知〉〈武芸百般〉
技能:「思念伝達」
魔法: 「火炎魔法」「獄炎魔術」「闇魔法」
耐性:「炎熱無効」「打撃耐性」「状態異常耐性」、「精神攻撃耐性」
あはは……これまた見事にスッキリしましたな。あれだけあったスキルが綺麗さっぱり統合されちゃったね。
それに今気づいたけど、称号までしっかり整理されて『迷宮の支配者』だけになっているわ。つーか、ちゃっかり補助人格としてヒイロが自己主張してやがるぜ……。
というか、ヒイロよ。お前、ちゃっかり俺のスキルから色々と取得しただろ。
《そのような事実は確認されていません》
嘘だぁ~、絶対嘘ついていやがる。昔のような淡々とした声音の時は、何か答えたくないことがあるときだからな。俺は知っているぞ。
《……》
ぐうの音も出ないってか。フッ、俺の完全勝利だな。
けどまぁ別にいいんだけどな。そんな小さな事で別に怒ったりはしない。俺のサポートとして、ヒイロが強化されたのなら、実質俺の力が強化されたってことだしね。
《流石はマスターです》
ほら、やっぱりコソコソ隠れて自己強化したんじゃん。まぁいいけど。
それはともかく、固有能力が四つも増えちゃったよ。ヒイロによって魔改造された気分だ。
あと、折角自力取得した〈炎鎧〉が残っていた事に、ちょっとホッとした。多分、ヒイロが俺に気を利かせて残してくれたんだと思う。
ヒイロの報告には無かったけど、魔法も色々取得しているな。ちょっと楽しみだ。
想像以上の結果となってしまったが、これは色々と後で検証しないとな。いくら固有能力が強力だとは言え、使いこなせなければ無意味である。
スキルを統廃合したヒイロならば、各スキルについてしっかりと理解しているはずだ。検証の際には手伝ってもらうからな? よろしく頼むぞ、ヒイロ。
《お任せ下さい、マスター》
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*次回更新日は、2019/10/21 16:00の予定。
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