第一九話 ミリルとレリル
俺たちが兵士を蹂躙し尽くすのに、それほど時間は掛からなかった。
俺は蒼炎と炎鎧を使って、片っ端から焼却処分していったし、レイラは『悪夢』を振り撒いて鮮血の雨を降らせ続けた。
初めて人を手に掛けてしまったわけだが……やはり何も感じなかった。魔物を狩る時と感じ方が何ら変わりはない。これも悪魔化の影響だろう。まぁこの異世界で生きていくためには、この方が都合がいいんだけれど。
そして今、目の前にいる醜く太った男――多分、指揮官だろう――と、強大な殺気を浴びせて気絶させた二人の側付きだけしか生き残りはいない。
レイラに殲滅すると言ったのに、何故この男たちだけは殺さなかったのか。その理由は簡単。情報を得る為に残しておいたのだ。メリットが無ければ、既に蒼炎で焼き殺している。
「ありえないありえないありえない……なんなんだこれは……夢でもみているのか……いやきっと夢に違いない……」
頭を抱え、何やらブツブツと言っている太った指揮官。元は指揮官に相応しい煌びやかな甲冑だったのだろうが、血汚れ土汚れと、今では無残な印象しか感じられない。
「夢でも妄想でもねぇよ」
俺が淡々と告げると、指揮官は「ヒィッ!?」と悲鳴を上げ、ますます小さくなって震え出す。
怯え蹲る指揮官を容赦なく蹴り飛ばし、強制的に顔を上げさせる。
「お前に訊きたいことがある」
無様に尻餅をつく指揮官にそう尋ねるが……。
「あ、あ、悪魔……やはりアルメニアは魔族と……」
眼を剝き、蒼褪めたままそう独り言を繰り返すだけだった。
ん? 悪魔?
《普段隠されている角と翼が出現しています》
あぁ今気付いたけど、いつの間にか普段隠している翼と角が出ちゃっているな。まぁいいけど。今更隠しても意味無いし。
「おい。お前、聞いているのか?」
「ヒィッ!?」
俺の声に悲鳴を上げる指揮官。限界を超えたのだろう、指揮官の股間がモワァと濡れる。
この様子じゃあ、しばらく尋問も出来そうにない。精神がぶっ壊れてしまえば、こっちが知りたい情報を喋らせることが出来なくなっちまう。さて、どうするか……。
《尋問はレイラに任せるのがよろしいかと》
あぁそうだな。その為にレイラを連れて来たんだった。
「シャン様、只今戻りました。逃げ出した者は全て始末しましたわ」
逃走者の後始末を命じていたレイラがいいタイミングで帰って来た。
「お疲れ。つーか、いいタイミングで戻って来たな、レイラ」
「はい? 如何致しましたか?」
「悪いんだけど、コイツらを尋問して情報を聞き出してくれないか? どうにも俺に怯えちゃって、話も碌に出来そうにもないんだわ」
俺は物凄く怯える指揮官を指差して示す。
レイラはチラッと一瞬だけ視線を向けて確認すると、直ぐに俺に向き直った。
「この者から何を聞き出せば宜しいでしょうか?」
「一番は所属国家と部隊の情報だな。まぁ十中八九カトレア王国軍だと思うけど」
残念ながら俺はこの世界の情勢には疎い。シシリアにある程度教えて貰ってはいるが、兵装を見ただけで所属国家を判別することは出来ない。
「所属国家と部隊の情報で御座いますね。お任せ下さいませ」
「おう、頼むな。出来る限り情報を搾り出してくれ。あ、そうそう、出来れば生かしておいてくれよ。コイツらにはまだ利用価値があるし。ただ……圧倒的な恐怖心は刻み付けろ」
「恐怖心……でございますか?」
「あぁ。具体的な情報は与えず、ただただ俺に恐怖するように仕向けて欲しい。出来ればこちらの言う事を聞く駒にしたい」
「仰せのままに。シャン様のご希望に添えるよう尽力致しますわ」
「任せた」
今でも充分俺に恐怖心を抱いているだろうが、鉄は熱いうちに打てって言うし、絶対に逆らえないように仕向け、こちらの駒として使いたい。まぁレイラが訊き出した情報次第では、即座に始末するかもしれないけどな。
早速尋問を始めるようで、レイラは指揮官たちの腕を掴んで引き摺り、一件の家屋へと消えていく。
レイラに任せておけばきっと色々訊き出してくれるに違いない。勝手に家を使っているけど……まぁ問題ないか。
さて。俺はどうすっかな。レイラが尋問を終えるまで多少は時間が掛かるだろうし。魔物でも狩って時間を潰すかね。
《それよりもまずは、あちらの処理をすべきかと》
ヒイロに言われて振り向けば、そこには見覚えのある若い女性と少女が真っ直ぐ俺を見詰めていた。
「もう起きて大丈夫なのか?」
この若い女性は、俺がエリクサーを使って助けた人だ。エリクサーを使ったので、死ぬことは無いと思っていたが……傷は治っても、精神的疲労までは拭えない。シシリアに使った時には、シシリアが目覚めるまでに数日掛かったぐらいだし。
もう起きて大丈夫なのかと、少し驚いたが、よく見れば顔は蒼褪め、少女に支えられて何とか立っているという感じだった。
「……何故ですか?」
俺の問いには答えず、その若い女性はそう訊いてきた。
「何故って、何が?」
「何故、私は生きているのでしょうか?」
「何故って……そりゃあ俺がポーションを使ったからだな」
エリクサーを使ったなんては言わない。エリクサーは国宝級の代物だし、簡単に使えることが他に漏れれば、無用な面倒事に巻き込まれるからね。まぁエリクサーもポーションの一種だし、嘘は言っていない。
「ですから、何故です?」
体調不良で蒼褪めているものの、その瞳は真っ直ぐで真剣だった。
「何故、私は生きているのですか? 私は……私の命を差し出したはずです」
「うん、そうだな。そういう契約で俺はお前の願いを叶えてやった」
「はい。ですから……私は死んでいるはずで……」
「死にたかったわけじゃねぇだろ?」
「それは……そうですが……」
「ならいいじゃねぇか」
何も問題は無いと言い切ってやるが……若い女性は納得出来てないのだろう、眉をハの字にして困惑しているようだった。
「あの……貴方様は、その……悪魔……なんですよね?」
「あぁ、見た通りだ」
俺はまだ翼を出したままだった。そっちの方が色々と都合がいいかと思ったしね。敢えて出したままにしてある。
「貴方様は仰ってました。『悪魔は契約を守る』と。貴方様は私との約束を守って、妹を助けてくれました。いや、妹だけじゃありませんね。村の人たちも貴方様に助けて貰いました」
妹? あぁ、若い女性を支えている小さな女の子が妹なのか。つーか、その妹さん、ずっと無表情で俺を見詰めているんだが……。
「対価は私の命だったはずです。けど……私はこの通り生きています。貴方様に助けられて……私はどうしたらいいのでしょうか?」
不安げに俺を見てくる若い女性。あぁ、そうか。契約の対価を払っていない事を不安がっているのか。このまま何も対価を払わずにいると、妹を守れないとでも思っているに違いない。
まぁ俺としては、別に対価なんて要らないんだけどね。ましてや命なんて要らない。
「あの時、対価として命を差し出せと言ったのは、ちょっとした試しだ。自分の命を捨ててでも、本当に妹を助けたかったのか、その意思を確認しただけ。だから気にするな」
まぁどっちにしろ、あのまま傷を負った状態だったら遅かれ早かれ死んでいただろうけど。
「しかし……」
納得出来ないといった感じだ。律儀というか、真面目というか……まぁその真っ直ぐな心だったからこそ、俺は彼女の願いを叶えたいと思ったんだけどね。
もう一度、気にするなと口に出そうとしたその時。
「奴隷になればいい」
不意に聞こえた抑揚の薄い声。その声の主は、無表情の妹だった。
「奴隷になって、命の限り尽くせばいい。お姉はそうすべき」
おいおいおい、そこの無表情娘ッ! お前を助ける為にお姉ちゃんは命を懸けたんだぞ! そんな姉に向かって、奴隷になれとは酷いではないかッ!
少女の発言に驚き、心の中で盛大にツッコむ俺。つーか、女性の方もビックリして妹を見ているし。
「大丈夫。奴隷になっても、ベッドの上では優しくしてくれると思う」
「え、えっと……そうかな?」
お~い! 何言っているのかな? そこの無表情娘。つーか、そこ! お姉さんもポッと頬を染めて、満更でもないような雰囲気出さないッ!
というか、魔族って世界的に見ても悪の存在じゃないのか? なぁ~んか、そんなに怖がっている風には見えないんだよな。てか、魔族じゃなくてもさっきまで虐殺の限りを尽くしていたんだぞ? 普通、怖がらないか?
《偉大なマスターのお姿を拝見すれば、全人類は即座にひれ伏すでしょう》
……おいおいおい、なんじゃそら。俺は何か? 神か何かなのか?
「お姉、美人だから大丈夫。レリルも美人だから大丈夫」
「レ、レリル? 何言っているの?」
「レリルも奴隷になる。お姉と一緒」
……は? 何故そうなる?
「そ、そうね。ずっと一緒よね。なら大丈夫かしら」
お~い! 大丈夫じゃねぇぞ~。妹のトンでも理論に惑わされるなぁ~。
「うんっ! やっぱりそれくらいしないといけないわね。レリルだけじゃなく、私まで助けて頂いたんだから」
可愛く拳を作って、うんと頷くと。
「あ、あの……よろしくお願いします。私はミリルと言います」
ペコリと俺に頭を下げる女性――ミリル。あ、うん……もう確定事項になっちゃったのか……。
「レリルはレリル。よろしく、ご主人」
無表情娘――レリルもちょこんと頭を下げた。
はぁ……まぁいいか。この子らを使って、色々しようとは思ってたしな。
《い、色々っ!? は、破廉恥な――》
あ、言っておくけど、色々って言うのはエロいことじゃねぇからッ! 幼いレリルは対象外です。
「対価としては充分か」
俺はポツリと呟くと、姉妹に近付き、両手を頭の上に置くと奴隷術を行使した。
姉妹の首元に刻まれる赤と黒の紋章を確認してから、口を開く。
「俺はシャンだ。奴隷として受け入れてやるが、色々こき使うからそのつもりでな」
「わ、判りました」
「任せて」
おずおずと言う姉のミリルと、尊大な口調のレリル。姉妹でも全然性格が違うみたい。まぁ性格は正反対でもその容姿はよく似ている。
姉のミリルは、大きな茶色の瞳に、優しそうな雰囲気の美少女だ。村娘っぽい素朴な雰囲気だが、着飾れば十分に令嬢として見られるだろう。
そして、何と言っても一番の特徴は、頭に生える垂れた犬耳とフサフサの尻尾だ。どうやらこの姉妹は犬人族という種族で犬系の獣人族らしい。
妹のレリルも端正な顔立ちだが、無表情でなおかつ眠そうなのが少し残念だ。可愛いからもっと笑えばいいのに。勿論、レリルにも犬耳と尻尾が生えている。
一応、ステータスでも見ておくか。
名前:ミリル LV4
種族:犬人族
称号:シャンの奴隷
性別:女性
年齢:一六歳
髪:赤茶 瞳:茶 肌:白
技能:「家事」「簿記」
魔法:―
耐性:―
名前:レリル LV2
種族:犬人族
称号:シャンの奴隷
性別:女性
年齢:一二歳
髪:赤茶 瞳:茶 肌:白
技能:―
魔法:―
耐性:―
どちらも村娘らしいステータスだ。全然期待はしていなかったが、ミリルにはスキル「簿記」があるし、他の配下に是非とも伝授してもらいたいな。……シュヴァートとグリューには無理か。
つーか、レリルって十二歳なんだな……。それにしてはどこもかしこも小さい。一番幼いココより小さいかも。
「ご主人が見ている。悩殺された?」
「されてませんッ!」
即座にキッパリと言い切っておく。つーか、俺の周りが段々とロリロリしくなってきてやしないか……? リーシャに、ココ、ショタート、そしてレリル……うん、考えないでおこう。
《やはりマスターはロリコン紳士――ふぎゃっ!?》
ヒイロが大変不名誉な称号を付けようとしてきたので、脳内イメージで強く頭を叩いて黙らせておく。
さて。この姉妹はもういいだろう。問題は遠くから俺たちをジッと静かに見つめて来る村人たちだ。
「ミリル……いや、レリルの方がいいか。ミリルはまだ本調子じゃないだろうし、レリルに頼むか」
「何、ご主人」
「村の人たちを集めてくれ。少し話がある」
「お姉は?」
レリルが眠た気な様子ながらも、自分が心配そうに支えているミリルを見た。
「ミリルは休ませる」
「わ、私は大丈夫です。レリルと一緒に行きます」
そう気丈にミリルは言うが……ポーションを使っても精神的な疲労は拭えない。少し休養が必要だ。
「まぁまぁ、いいから休んでろ。ミリルは見ておいてやるから、レリル頼む」
「……判った」
少し逡巡していたレリルだったが、うんと頷いた。そして何故かミリルを俺の方へと差し出す。
「……何だ?」
「お姉、疲れて立てない。ご主人が抱きかかえるべき」
「ちょ、ちょっとレリル!?」
慌てるミリルを無視して、ジッと俺を見詰めるレリル。こりゃ、受け取らないと動かないだろうな……。
俺は溜息を吐き出し、ミリルを受け取った。ミリルを抱えてやると、ミリルは瞬時にあわあわと赤面し、レリルは満足そうに頷いた。
《う、羨ましくなんてないですからねっ!》
それってツンデレになるのか……?
「行って来る」
「おう、はよ行け」
うんと頷き、トコトコと走っていくレリル。と、不意に立ち止まり、くるりと振り返ると、ミリルに近寄って耳打ちする。
「お姉ちゃん、チャンス。ご主人、悩殺しておいて」
「レ、レリルっ!?」
お~い! 聞こえているぞぉ~。つーか、レリル……わざと俺に聞こえるように言ってやがるな。
赤面しながら怒るミリルから逃げるようにレリルは走っていく。
レリルが村人を集め終えるのには、少し時間が掛かるだろう。その間ずっとミリルを抱えておく訳にはいかない。
俺は影空間から適当に外套を取り出し、地面に敷くと、そこにミリルを下ろしてやる。
「す、すみません、シャン様。奴隷の分際なのに……」
「まぁ気にするな。体調が戻ったらこき使う予定だからな。今は休んでおけ」
恐縮するミリルに言い聞かせ、休ませておく。
俺は全く疲れていないけれど、ミリルを放置して魔物狩りになんて行けない。なので、シシリアに書き出して貰った魔の森周辺国家の資料を再確認しておくことにする。
暫くパラパラと資料を見ていると、村人を集め終わったのか、レリルが戻って来た。
「ご主人」
レイラの声に、資料から顔を上げる。レイラの後ろには数十人の村人たちの姿が。
「これで全員か?」
「……ん」
レリルの返答に少し間があった。無表情ながらもほんの少し辛そうな表情のレリル。多分、レリルは見てしまったのだろう。村人たちの多くの遺体を。
ちょっと失敗したかもしれない。まだ幼いレリルに呼びに行かせるべきでは無かったか……。
少し反省しつつ、レリルを労い、頭を撫でてやった。
「レリル、妖艶な大人。子供扱いしない」
あ、さいですか……。
まぁそれでもレリルは多少気分を持ち直したのだろう、辛そうな表情は無くなったので、良しとしようか。
それはともかく。俺はレリルが集めて来た村人に視線を向ける。
兵士に襲われたのだろう、怪我している者が多く、誰もが一様に憔悴した表情を浮かべていた。
ん? あれは……。
《個体名「エリー」。シシリアの話で出て来た護衛騎士のようですね》
なるほど。てっきり死んでしまったと思っていたけれど、生きていたんだな。
ショートカットの茶髪にスラッとしたモデル体型。キリッとした目許が印象的なクールビューティーさんだ。
だが、至る所に生々しい傷跡があり、その表情には昏い影が差しているようだった。
この美人さんとは、後で個別に話し合う必要があるな。
「見ていたと思うが、お前らを襲った兵士は皆殺しにした」
俺が言葉を発すると、村人たちの視線が集中したのが判った。というか、誰もがジッと静かに耳を傾けている。
「だから今のところ、これ以上襲われる心配は無い」
安堵の息が微かに聞こえた。やっぱり不安だったのだろう。ホッとした表情を浮かべる者が多い。
「さて。俺は結果的にお前たちを守ったわけだが……この中に村長はいるか?」
俺が問い掛けるが、村人たちから名乗り出る者は居なかった。
まさか俺にビビって出て来ないんじゃないだろうなと、眉を顰めると。
「シャン様、父――村長はもう……」
すぐ近くから聞こえたのは、ミリルの辛そうな声だった。
なるほど。もう既に亡くなっているのか。てか、やっぱりミリルは村長の娘だったわけね。
「そうか……悪いな」
「いえ、お気になさらないで下さい」
俺を気遣うように微笑みを浮かべるミリル。辛いはずなのに……やっぱりこの子は強い。
村長が居れば、村長に話せばよかったんだけど……まぁ仕方がない。この際、村人全員に向かって話すとしよう。
「さて。お前らには三つの選択肢がある。一つ、この村に残って生きていく事」
正直、この村で生活するのは難しいと思う。兵士に破壊の限りを尽くされた村は、修復可能レベルを超えているしな。
「二つ、違う村に向かって、そこで生きていく事」
この選択肢は、まだ希望があるだろう。まだ兵士が来ていない村なら生きていけるはずだし。まぁいつ兵士が来て、地獄が再現されるか判らないけど。
「そして、三つ、俺に付いて、新天地で生きていく事」
新天地とは、勿論俺のダンジョンの事だ。二階層にある草原地帯で生活してもらおうと思っている。俺としては、この選択肢を選んでもらいたいところだ。DP収入源になるしね。
「以上、三つ。好きに選べ」
俺は一方的にそう告げた。後は個々の判断に任せよう。
命令して連れて行くことも出来たが……俺はそうしなかった。やっぱり自分の意志で決めたという事が必要だと思うしね。
「あの……いいのですか?」
ミリルが遠慮がちに訊いてくる。
「ん? 何が?」
「えっと……私たちはシャン様に助けてもらったので……その、報酬とかは……」
「報酬とか別に要らねぇよ。つーか、俺がこの村を助けた対価は、ミリルからもう既に貰っているし」
「そ、そうですか……重ね重ね、ありがとうございます」
ミリルはそう言って、俺に頭を下げた。てか、自分は奴隷落ちしているっていうのに……そんな状況なのに、他人の心配をするなんてちょっと優しすぎないか? あいや、村長の娘としての責任感かもしれないな。
「まぁそういうことだから、お前らの財産を没収とかしないから安心しておけ。何を選ぶとしても俺は関与しない。まぁ三つ目の選択肢は俺に付いて来るってことだから、関与しまくりだけどな。もう判っていると思うが、俺は悪魔族――所謂魔族だ。その事を念頭に置いてよく考えてくれ。ミリル、俺は少し休むから村人たちの相談に乗ってやれ」
「判りました。頑張ります」
ミリルにそう指示しておく。ミリルには第三の選択肢を選んだ奴らのまとめ役になってもらう予定だしな。
「シャン様、どれぐらい時間を頂けますか?」
「ん~そうだな……明後日に聞かせてもらうか」
現在、レイラが尋問を行っている為、時間が必要だ。それに遺体の処理もあるだろうし、明後日で問題は無いだろう。
「明後日ですね、判りました」
「おう、任せた。あぁそれとどこか部屋を貸してくれないか? 野宿は勘弁して欲しいし」
今日はこの村に滞在することになる。なので一部屋貸してもらうようミリルに頼むと。
「それでしたら、うちを使って下さい。レリル、シャン様をご案内して」
「ん。お任せ」
レリルが平たい胸を張った。平面だ……どこまでも続く平野のようだ。
さて、レリルに案内してもらって、早速退散することにしよう。サッサと話し合いを始めたいだろうしな。
レリルがこっちこっちと外套を引っ張るので、俺は苦笑を浮かべながら後に付いていくのだった。
*ここまでご覧下さって、誠にありがとうございます。
*次回更新日は、2019/9/27 16:00の予定。
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