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第一話 目覚めるとそこは草原だった

新作始めました。よろしくお願いします!


 目が覚めると、どこかの草原に居た。そして、角と翼が生えていた。

 唐突過ぎるが、これが今の俺の現状を端的に表した言葉である。


 あるぇ~? 俺ってただの人間だったよね? いつの間に人間やめていたんだろ……。


 肩甲骨辺りから生えている翼。天使の様な綺麗な翼ではなく……蝙蝠の様な筋張った漆黒。触った感じシルクの様でツルツルとして妙に肌触りがいいのが救いか。


 動くかなぁ……動くよな……? だって俺から生えているんだし。

 折角だしレッツチャレンジ! 翼よ、動け!


「おぉ~! …………おぉ」


 チビチビと動く翼。このまま大空へ! なんて思っていたが……。


 そうは問屋が卸さないってか。スマホのバイブよりも弱い微振動。どう考えてもこのまま羽ばたける筈もなく。俺の興味はもうひとつの変化部位へと移る。


 側頭部から伸びる二本の羊角。こちらは翼と違って、ゴツゴツとした感触。鏡が無いので詳細は判らないけど、俺のイメージだと悪魔の角の様な凶悪な感じだ。

 スコスコ角を触っていると妙に気持ちい――あっ……いや、これ以上はアカンやつや。ダメ、絶対っ! これ以上は十八禁になっちまう。


 とまぁ、翼と角が生えていたんだが、はてさて一体どうしたものか……。


 というか、一体全体何がどうしてこうなったのやら。誰か説明プリーズッ! 誘拐犯とか神様とか居たら返事してッ!


「…………」


 ハァ~……居る訳ないよなぁ~……。俺の周りには誰も居ないし。独りボッチだし。いや、元からボッチだっただろとか、そそそんな、わわわけねーし! 

 ……いや、まぁ社会的かつ多面的に進入角度が斜め右下四十五度の入射角で見れば、ボッチだったわけで。いや、何焦ってんだ。もっと他に焦る場面あっただろうに。


 俺がボッチかどうかは後でじっくりと議論するとして。こんな草原で目覚める前は確か部屋でMMORPG『セブンズフェリアル』毎週恒例のギルド戦をプレイしていたはず。


 あぁそうそう。思い出してきた。今週も危なげなくギルド戦に勝利して、「うぇ~い!」ってなっていた時に、ポンッ! と、ポップアップウィンドウが開いて――。




          ◇   ◇   ◇  




「おしッ! 今週も勝ちぃ~!」


 画面上に彩る「WINNER!!」の文字にガッツポーズをとる。勢い余り過ぎてゲーミングチェアから落ちそうになったのはご愛敬だよ?


 MMORPG『セブンズフェリアル』の毎週恒例イベントであるギルド戦。サービス開始当初からこのイベントにソロプレイヤーで挑み、ランキング上位をキープし続けて来た俺。

 ソロプレイヤーなのにギルド戦? と思ったあなた。この『セブンズフェリアル』は優秀なAIを搭載したNPCを駆使して立ち回ることで、ソロプレイヤーでありながらギルド戦でも十分に活躍できるゲームなのだ。


 とはいえ、優秀なAIを搭載したNPCよりもプレイヤーの方が絶対的には強者である。俺みたいなソロプレイヤーでギルド戦を楽しむ奇特な奴など少数だろう。

 大多数のプレイヤーはどこかしらのギルドに所属してこのイベントを楽しんでいる。ゲーム内の始まりの街である中央都市では常にギルド勧誘チャットが流れて来るほど、どのギルドもプレイヤー獲得に余念がないのだが、俺には関係ない話である。


 とまぁ、勝利の美酒に酔いしれていると、ポンッ! と、突然ポップアップウィンドウが開いた。


「……チッ」


 どうせよくあるアダルトサイトへ誘導するポップアップウィンドウだろうと舌打ち。そのままウィンドウを消そうとマウスを動かし……。


「……ん?」


 流し見で見てみると、どうやらよくある誘導系ではあるらしいのだが……冒頭に『セブンズフェリアル』での俺のキャラクターネームが書かれていた。


「なになに……新しいゲームのベータテスター募集?」


 ボッチだと独り言増えるよね。そんなどうでもいいことを思いながらササッと内容を読んでいく。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 拝啓

 陽春の候、シャン様に置かれましては益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。

 このたび弊社が開発したMMORPG『ユグドラシル(仮)』において、クローズドベータテストの実施をお知らせ致します。

 本日より『ユグドラシル(仮)』のクローズドベータテストにご協力頂くテスターを募集致します。

MMORPG『セブンズフェリアル』にて傑出した成績を収められたシャン様には、是非ともクローズドベータテストへご参加頂きたく、個別にて連絡させて頂きました。

御多忙の中、急なご報告で恐れ入りますが何卒宜しくお願い申し上げます。


敬具

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



 下記に『ユグドラシル(仮)』のホームページへアクセスするURLが掲載されていた。ありきたりなタイトルだね。というか仮称なのかよっ!


 ん~あんまり期待できないけど……チラッ。名指しだしなぁ~……チラッ。ご指名だしなぁ~……チラッ。


 まぁ本格的にプレイする訳じゃないしぃ~、まぁ見るだけ見てやらんこともないこともないかなぁ~……なんてポチッとな。


「…………おぉ。これは予想外だ」


 ベータテストだし、タイトル仮称だし、本当に期待していなかったんだけど……。

画面に表示されたホームページには雄大な大自然が。まるで実写の様に作り込まれており、正直な話、少し感動してしまったくらいだ。


 グラフィックは『セブンズフェリアル』の圧倒的敗ぼ――んんっ! ま、まぁグラだけのゲームかもしれないし? 中身が大事でしょ、ゲームも人間も。


 という事で詳しく見ていくと。


「……世界観も結構しっかりしている」


 グラフィックだけの張り子の虎かと邪推すれば、内容も魅力的だった。

 タイトルから察する様に、ジャンルはファンタジー系みたいだ。剣と魔法のフラグレンス! ……フフッ。


 簡単に内容をまとめてみると……。


『ユグドラシル(仮)』の世界では、魔力が循環することで環境を作っているそうだ。しかし今現在、原因不明の魔力循環不全を引き起こし、世界全体が未曽有の危機に瀕しているらしい。このままだと魔力によって生命活動している生物が死滅、及び世界の崩壊が確定的とのこと。

 この危機に神々――超越存在(デウスデア)が魔力循環装置を創造。来訪者――プレイヤーの事らしい――に魔力循環装置であるダンジョンを託し……という設定のようだ。


 ダンジョン運営要素強めって感じか。まぁMMORPGだから他にも色々と楽しめるコンテンツ盛り沢山となっているみたい。他プレイヤーのダンジョンを攻略しまくる冒険者になれたりとか。世界観ガン無視だけど……。


 サッと見た限りでは、まぁ面白そうではある。けど、『セブンズフェリアル』に心血注いじゃっているしなぁ、俺。


 まぁ本格的にやるかは後で決めるとして。直々のご指名だし、さわりだけでもやってみますか!

という事で、早速キャラ作成から始めよう。


 種族は大まかに人族(ヒューム)亜人族(デミヒューム)獣人族(セリアンスロープ)・魔族・魔物の五つに区分されているらしく、その大種族の中から更に種族が選択できるようだ。

 何言っているか判らなくなってきたが……例えば大種族『人族(ヒューム)』を選択すると、更に『人族(ヒューム)・半神半人族……等々』と選択肢が出て来るのだ。


 まぁゲームだし、人族(ヒューム)は無いかなぁ~。魔物が種族として選択できるのはちょっと面白いけど……ずっとそのキャラを見ているのはなぁ……無いよな、うん。


 やっぱ種族は魔族を選択して……吸血鬼も捨て難いけど……あ、やっぱりデメリットあるじゃん……ないわぁ~……。

 ここは奇抜に白髪のメッシュを……イキリトじゃん……やぁ~めた……黒髪が無難だな……。


 数十分、ああでもない、こうでもないと、色々熟考しつつ……。


「自キャラ完成! ふぅ~……」


 ようやく完成した。こう凝り出すと色々やっちゃうんだよね、俺って。それに細部まで色々変えられるし、結構時間掛かっちゃったわ。


 悩んだ末に決めた種族は、『悪魔族(デーモン)』。オーソドックスに魔族だ。奇抜な感じよりも人間ベースの方が親近感湧くしね。ちょっと厨二感出して黒髪紅眼にしてみましたよっと。


 そして、最後にスキル選択のお時間。どうやらスロットが回り決定ボタンを押すとスキルが確定される仕組みらしい。


 適当にクリックしていく。ん~どうやらスキルの数は固定じゃなく、大体二つ~四つくらいを行き来しているようだ。それもレアリティが高いスキルがあると、スキル数は少なくなる傾向にあるみたい。


 それにしても……多っ! めちゃ多っ! ナニコレ、スキルの種類滅茶苦茶多いんだけど。

 基本的なスキルである『剣術』や『槍術』なんてのは良い。『お小遣い』って何だよッ!


「……『お小遣い』は毎日銅貨一枚貰えるのか」


 銅貨って百円くらいだよね? 小学生かッ!


 とりあえず高スキルが出るまでスロット回すかね。そして――


 ――ポチ、ポチ、ポチ、ポチ、ポチポチ、ポチポチポチ、ポチチチチチチチチ……あぁっ‼ ……クッ。ハァ~……よしっ! ポチチチチチチチチ……。


「ふわっはっはっはぁ~! やったぞっ! 俺は遂にやり遂げたんだッ!」


 俺は天高く拳を突き上げた。今こそ勝利の美酒をッ!


 あれからクリックすること無・量・大・数ッ‼ ……なんてわけは無いんだけど、約二時間は掛かった気がする。途中、めちゃくちゃいいスキルを引き当てたんだけど、ゲシュタルト崩壊中につき、気付いた時にはもはやクリックの後……。その後一息入れて、ちゃんと確認しながらポチポチしましたよと、トホホ……。


 頑張った甲斐あって、「これはッ‼」っていうスキルを見事引き当てることが出来ました。ありがとう、みんなっ! 愛してるっ!


 俺が決めたスキルは三つ。そのどれもがゲームやラノベでは必須スキルとして描かれている物だ。

 一つ目のスキルは〈分析〉。定番中の定番である鑑定系スキルである。

 ゲームなのに何故か鑑定スキルがあったのだ。これはシステム的に判別できないアイテムがある証拠だろうから、必須スキルだと思い、序盤から目を付けていた。



〈分析〉……アイテムの詳細をほぼ認識可能。



 スキル詳細を見る限り判ると思うが、ほぼ(・・)認識可能である。という事はつまり分析出来ないものもあるということ。一応〈分析〉は特殊能力(エクストラスキル)なんだが……。


 あ、今更ながらにして説明しておくが、スキルにも等級があるようで、能力(スキル)特殊能力(エクストラスキル)固有能力(ユニークスキル)という順に強力なスキルとなっていく。

 備考には「更なる上位スキルも……!?」なんて書かれていたから、固有能力(ユニークスキル)の上位スキルもある可能性が高いが、現時点ではいくらスロットを回しても固有能力(ユニークスキル)以上は確認出来なかった。ゲームを進めていく内に出てくるのだろうな。期待しておこう。


 話を戻して……二つ目のスキルは〈炎威〉。これも特殊能力(エクストラスキル)だが、中々高性能だったので採用。



〈炎威〉……上級火魔術以下及び火魔法を取得。火属性魔術及び魔法の威力大上昇・消費魔力大減少・詠唱破棄。



 数ある戦闘系スキルの中で俺が選んだのは、火属性魔法特化の特殊能力(エクストラスキル)〈炎威〉。


 俺は『セブンズフェリアル』でも後衛の魔法職を選択している。その中でも特に使用頻度が高かったのが火属性魔法。やっぱり火魔法に関しては愛着じみたものがあるんだなぁと、スキルを決定した時に思ったものだ。


 どうやら魔法と魔術の二体系のスキルがあるようだ。どういった違いがあるのかは良く判らないけど。


 そしてそして……皆様お待たせしました。俺が悩みに悩み、苦労に苦労を重ねて、最後の三つ目に選んだのが――こちらッ! ババンッ!



『支配者』……〈魔物調教〉、〈奴隷術〉を行使可能。配下のステータス値大上昇、成長率大上昇。配下の能力値に応じて自身のステータス値増加。配下スキル還元。



 出ました、固有能力(ユニークスキル)。現時点で選択可能な最上位スキルである固有能力(ユニークスキル)。百ポチで一回出るか出ないかの確率だったんだよ。まぁ~大変でした、ホント。


 俺が確認出来た固有能力(ユニークスキル)はたったの七種類だけ。まぁ検証したわけじゃないからまだまだ種類はあるだろうが、検証する元気はありませんでしたよ。

 確認出来た七種類の中でこれだッ! って思ったのがこの『支配者』。やっぱり『セブンズフェリアル』ギルド戦でNPCを駆使してソロプレイしていた俺としては、この『支配者』は絶対に欲しいスキルだった。この『支配者』を軸にして他のスキルを選んだくらいだしね。


 それに『ユグドラシル(仮)』の世界設定にもマッチするスキルだと個人的にはすごく思っている。何せダンジョンがあるんだし、これしかないっしょって感じだわ。


 とまぁ、初めは何となく始めたキャラ作成だったのだが、気が付けばスキルガチャに熱中し、精も根も尽き果てた俺は……。


「ふわぁ~、眠ぃ~。あ~……もう夜中の三時か。……寝よ」


 ちょっとした達成感、満足感を得ながら決定ボタンをポチッと。そのまま画面を見ることも無く、ベッドへとダイブし、の〇太くんも驚く速さで眠りに落ちていき……。


 そして――


「……………………………………………………ここ、どこ?」


 ――草原のド真ん中で目覚めるのであった。




更新は三日に一回の予定。十六時更新です。

予定はあくまでも予定ですよ?

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