1ー1 出会い
あれからどれくらい意識を失っていたのだろうか酷い頭痛とともに意識が戻る。鳥の囀る音がする。森の中だろうか。正直、このままこうして寝ていたいがそういうわけにもいくまい。俺はゆっくりと目をあけた。
するとそこには俺を心配しているのか、覗きこんでいる人の姿があった。いや、それよりも俺は言葉を失った。まず真紅の長い髪で風にサラサラと靡くの印象的だった。目も透き通るような赤色で見つめていると吸い込まれそうな感じだ。顔つきも少し気が強そうだか綺麗で可愛らしいかった。
しばらく、俺が彼女に見とれていると何かに気づいたような反応をしたあと俺に話しかけてきた。
「なっ、何を見てるのよ。・・貴方、ずっとここで寝てたみたいだけど全然動かないから、死んでるかと思ったわ。」
俺は呆けていたが、彼女の言葉で意識を取り戻し返事をした。
「いやっ実は堕天使がっ・・」
そう、言いかけた時だ。現状の異常さに俺は気づいた。あれっ?俺は会社帰りの途中だったよな、というか鞄は?スーツ姿でもない。それ以前にここは森ですか?そう混乱しなが自分で顔を触ってみる。これは俺の顔じゃない。どちらかといえば例えばWorld Creationでの俺のゲームキャラであるハヤトに近いかもしれない。そんな現状を確認する俺の行動を見て彼女が言った。
「え〜っと。貴方、本当に大丈夫?」
俺は、呆けた顔で答えた。
「大丈夫か、大丈夫でないかと言われると大丈夫でない気がする。」
彼女は、無邪気な顔で笑って言った。
「ぷっ。何それ。貴方、面白い人ね。」
「でも俺、多分そうじゃないかと思っていることがある。」
彼女は、笑顔で問いかけてきた。
「何々?教えて?」
そして、俺は思いついた、ある可能性を答えた。
「多分、俺・・・異世界転生しました。」
「えっ?」
しばらく俺と彼女の間に沈黙の時間が流れたのは言うまでもあるまい。
俺と彼女は、まるで石像のように固まった時間の中で俺は彼女に元の世界の話をするべきか、それとも黙っていた方がいいのか困惑していたが、その後、彼女は何かを思い出したかのような感じで言った。
「あっ!あ〜 あ〜 思い出したわ。貴方、この世界でプレイヤーって呼ばれてる存在でしょう?」
「多分、確証はないがそうだと思う。」
「そうだとしたら、凄い!私が始めてかもしれない。転生直後のプレイヤーに会ったの♪」
「そう・・なんだ。」
喜んでいる彼女には悪いが正直、俺はまだ気が動転してる。いくら今まで異世界転生する時が来るかもしれないからといって、心の準備をしてたとはいえ本当に転生してしまうとは思わなかった。
それに転生前に会った、あの堕天使は何だ?!あれのせいで俺は転生したのか?!それに額の魔法陣はなんなんだ?!などと考えいると俺は思いだした。あっ、そうだ彼女をこのまま放ったらかしにするのも悪い。そう思い彼女に視線を向ける。
「ん?!あ〜多分、色々と現状を確認してるんでしょ。私にお構いなく。どうぞ。どうぞ。」
「・・・じゃあ、遠慮なく。」
俺は気を取り直して、まずはステータスを何処かで見れないか確認した。ん?この視界の端にあるアイコンがそうかな?そう思い、俺はそれを押すと画面が現れる。そして、その中からステータスのボタンを押して確認した。
LV1
職業:剣士
種族:人間
力:10
速さ:6
防御力:7
魅力:5
賢さ:5
運:4
HP:10
MP:4
ギフト:無し
ええ〜!レベル1で人間!竜人じゃない上に人間って。ハヤトと同じキャラじゃないのこれ?!これじゃ、異世界無双出来ないじゃん。そう思って俺が険しい顔をしていると彼女が視界に映る。どうやらクスクスと笑われているようだ。おそらく今、珍しい動物を観察してる気分なんだろう。俺は次に転生した場所を確認した。周りを見渡すと木が多く、そして沢山の墓が並んでいた。ここは墓地だろうか。その中で目立つ物は俺のすぐ近くにある白く古い感じの大きな墓だ。気になった俺は彼女に尋ねる。
「これは、誰かの墓か何かなのか?」
「これ?!あ〜この墓は勇者の墓らしいわよ。なんでも大昔のことだから記録や文献が残ってないらしいわ。」
俺は、その話を聞いて石碑に近づいて確認した。それにはお墓の名前にこう記載されていた。
〈勇者×××の墓〉
勇者の後が人の手で消されたようになってよく見えなかった。俺は彼女に尋ねた。
「勇者の後の文字がよく見えないんだけど何か知ってる?」
「あ〜それね。私も昔気になって調べたりしたけど何も分からなかったわ。」
俺は、どいうことかは分からないが今、転生して来た自分が考えても仕方ないと思った。
おっと、そういえば確認してる途中だった。アイテムが何か入ってないか確認しなければいけない。俺は再び視界に映るアイコンを操作して確認する。あ〜、まぁ予想はしていたが何にも入ってない、そう俺が思っていると一つだけ何かが入っていた。×××のペンダントと書かれていた。何だこれは、バグってるのかと思い画面をタップして見ると、それは俺の手元に現れた。赤い宝石が埋め込まれたペンダントだ。俺が不思議そうに眺めていると彼女が言ってきた。
「あれ?!なんで私と同じペンダント持ってるの?」
そう言うと彼女は胸元のペンダントを出して見せてきた。
「あれ、本当だ。なんで転生したばかりの俺が君と一緒の物を持ってるんだ?」
二人で首を傾げる。
「ちなみに君のやつはどういう経緯で手に入れたんだ?」
「これ?!これは、お婆ちゃんの形見なの。どんなペンダントかは詳しく教えてくれなかったけど、なんでも不思議な力があるらしいわよ。私も今日はお婆ちゃんのお墓参りにきたの。」
「へ〜、それじゃあ、俺たちは何かお互い繋がりがあるかも知れないな。」
「貴方は今、こっちに転生して来たのに?」
「それもそうか。ふっふふ」
「あははは。」
俺たちはしばらく一緒笑った。
そして、俺は彼女に自己紹介した。
「そうそう、気が動転しててすっかり忘れていたけど、向こうの名前は水木 智也。こっちではハヤトって名前で行こうと思ってる。」
「変わった自己紹介ね。ふふっ。私はラナよ。よろしくね。ハヤトってなんか面白いから、しばらく着いて行きたいんだけどいいかな?」
「もちろん。」
「じゃあ、始めはあっちの賢者の森を超えたところにある街に行きましょう。」
「了解!」
こうして、俺たちは出会った。そして、ここから俺たちの旅は始まる。