3ー1 クルム
俺達は、クルムという町に来ている。とりあえず宿を確保してから三人で街を歩いていると分かったが、周りを見ると首から十字架のような物をさげていたり、手には聖書のような物を持っている人が多い。神に対する信仰心が強い町なんだなと俺が考えていると、こちらに向かって歩いてくる明らかに身なりが何かの教祖様のような人がいた。その男は、俺にある程度近づいた所で俺に向かって叫びだした。
「そっ、そこの男!なっ、何という邪悪な力を放っている!さては、お前は悪魔だな!」
俺は、戸惑いながら説明しようとする。
「違う。俺は勇者だ!これは、堕天使に無理矢理契約させられて・・」
だが、その男は言い放った。
「神に愛されている勇者が堕天使と契約をする筈がない!正体を現せ悪魔め!」
すると周りも騒ぎだす。ラナとエフィも必死に弁明してくれた。
「ハヤトは、間違いなく勇者です!私は、この人が勇者のお墓で倒れているを見ました!」
すると教祖の様な人は言った。
「それは、倒れていただけで実際に転生した所を見たわけではあるまい!お前達、二人も怪しいぞ!」
エフィもすかさず弁明する。
「お願いです。皆さん、信じて下さい。この方、ハヤトさんは勇者様です!こんな優しい人が悪魔であるはずがありません。」
エフィが泣き出したので、このままでは大ごとになると思い俺は、宿屋に戻ろうと二人に提案した。しかし、その時、教祖の様な男は、俺に石を投げて言い放った。
「逃げるのか!この悪魔め!お前など勇者ではない!」
すると、周りにいた人達も俺達に石を投げつけて言ってきた。勇者を語る、悪魔め!と。
俺はラナとエフィに石が当たらない様に、必死に二人をかばいながら宿屋に帰った。そして、俺は自分の部屋に戻る前に二人に言った。
「すまない。俺のせいでこんな、惨めな思いを二人にさせてしまって。」
すると二人は、泣きそうな顔で言ってくれた。
「私は、周りが何と言おうと貴方が勇者であることを信じているわ。だから、ハヤトもあまり考え過ぎないようにね。悲しくても辛くても、いつでも私達がいることを忘れないでね。」
「私は、悔しいです。ハヤトさんはこんなにも優しい人なのに、わっ、私は本当に悔しいです。」
俺は、エフィの頭を撫でながら二人に言った。
「ありがとう、二人共。今夜は、ここに泊まって明日には出よう。噂は、すぐに広まると思うから、早くこの町から去った方がいいだろう。」
俺は、そう二人に言って自分の部屋に戻ってもらった。
アースガルド帝国にいた時も一部の人から怯えるような目で見られることがあったが、あれはアランが近くにいたり、王様の後ろ盾があったから、まだ大丈夫だったんだと俺は思った。
俺は、今回の件で改めて思った。堕天使の契約魔法を早く、どうにかしなければと。