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第2話 ヴァンパイア襲来

 悪い夢であってくれ。

 そして夢から醒めてくれ。


 願いもむなしく虚空に消え、やがて現実が訪れる。



 翌朝、ベッドから起き上がり周囲を見回したが、未だ悪い夢が続いてるようだ。

 組紐だけが手首に残り、肝心なソフィアは側にいない。


 何とか考えを整理しようとするが、思考が全く進まない。

 この間にも、彼女はあのサトルと共に、刻一刻と俺から遠ざかっている……。


 どうしてこうなった?

 俺はどこで間違えた?

 何故、一生守ると約束した彼女達は、俺の側からいなくなってしまったのか。

 修行を続けたこの7年間は無意味だったのか。


 現実逃避したい気持ちと今すぐ助けに行きたい思いの間で葛藤しながら、未だにベッドから出られないでいる。



 気づくと、妙に玄関が騒がしくなり、俺の部屋の扉がノックされる。


 「ユーリ、起きなさい。久しぶりにリリーちゃんが来てくれたわよー」

 母の言葉が終わらないうちに、いきなり扉が開いて、すごい勢いでリリーが俺に向かってきた。


 「ユーリー、会いたかったよー!!」

 ドフッ!!

 

 ベッドの俺に向かって容赦なく飛び込むリリー。

 吹っ飛ばされないようにベッドにつかまり、間一髪リリーを受け止める俺。


 「どうしたんだよ、リリー!?」

 「パパがね、ソフィアと離れ離れになってユーリが悲しがってるから急いで慰めて来いって!!」

 「師匠が!? なんでそれを知ってるの!?」

 「パパは何でもお見通しなんだよー。えへん!」

 「いや、お前が威張るなよ。それより久しぶりだね。何だかリリー、とても奇麗になったよ!」


 実際、3年ぶりに会ったリリーは、より女性的でスタイル抜群に成長していて、こうやって抱き付いて来ると2つの柔らかい塊が押し付けられて、何だがたまらん気持ちになってくる。

 転生前の俺だったら間違いなく襲ってる。

 どうやら悪い夢だけじゃないようだ。

 

 仏の悟りを発動させた俺は、ひとまずリリーを落ち着かせ、現状を確認する。


 「離れてた3年間、リリーはどうしてた?」

 「それよりユーリ、大事な話があるの!」

 「あれ? どうした?」

 何だかドキドキしてしまう。


 「あのね、教えて? 何があっても私を嫌いにならない?」

 この娘は何をいきなり聞いてくるのか。


 「あの日の誓いは忘れないし、俺はリリーのこと、大好きだよ」

 「本当に、本当?」

 「当たり前! リリーはリリーだろ」


 「嬉しーー、ユーリ! カプして良い?」

 「もちろん良いよ!」

 抱き付く腕に力を更に込め、リリーは俺の首筋に甘噛みしようとする。


 「私の初めて、ユーリにあげるね! これでユーリは私のパートナーだからね!」

 ガブリ!!

 いてぇ!

 

 チューチューチュー。

 ん?

 んん?

 んんん?


 何だか思いっきり噛まれた上に吸われてるぞ。

 そして何だかぼーっといい気持になってきた。

 一体何か起こっているんだ?

 

 意識は混濁し遠くなり、気づくと俺は再びベッドの中で泥のように眠りに落ちていた……。




 『ユーリ、起きて!』


 もにゅもにゅ。

 何だか柔らかくて、とても気持ち良い。

 『あん。ちょっといつまで触ってるのよ』


 もにゅもにゅもにゅ。

 『ちょっとぉ、変な気持ちになっちゃうよ』

 カプリ!


 「いてぇ!」

 マジで痛い。


 目が覚めると、身体の上にリリーが被さり、またもや首筋に噛みついている。


 「あ、起きた!」 

 「そりゃ噛まれたら起きるよ、リリー」

 「だってユーリが変なとこいっぱい触るから」

 「何だか凄く柔らかくて気持ち良かった気が……」

 「もう知らない!!」

 リリーは抱き付いて、キスの雨を降らせてくる。

 「どうしたのさ?」

 笑いながら俺はリリーを抱きしめる。

 何だか久しぶりの感覚だ。

 

 「ユーリ、元気出てきた?」

 「うん。リリーに会えたら元気出てきたよ」

 「やったぁ。男を奮い立たせるのはいい女の条件だってママが教えてくれたの!」

 リリーがさらに強く抱き付いて来る。

 「まさにリリーの事だね」

 「嬉しー」

 「それでさ、なんで俺は急に意識が遠くなったのかな?」

 「ごめんなさい。初めてだったから加減が出来なくて」


 謝るリリーの背中から、何やら黒いものが生えている。

 これは……!?

 「羽!? それに尻尾もある!」

 「てへ。とうとうバレちゃった」

 「リリー、一体どうしたのさ?」


 「実は私ね、ヴァンパイアなの。大好きなユーリの血を初めて吸ったら、ドキドキして元の姿に戻っちゃったの」


 これがリリー本来の姿なのか。

 全然怖くないし、吸血鬼というより可愛い女の子がコスプレしてるだけのような。

 コスプレじゃないよな、これ。

 でもリリーから物凄い魔力の圧を感じる。

 俺や師匠とは比較にならないくらいだ。


 「ちょっと!! 難しい顔して尻尾掴まないで! もっと優しくして。お願い」

 「ああ、ごめん。すべすべしてて良い手触りだね。何時まででも触っていられるよ」

 「何時までも触ってたらおかしくなっちゃう。でもユーリならいいの。私のご主人様だから」

 リリーの様子が明らかにおかしい。

 目がうるうるしてるし。

 とりあえず嫌がっては無いな。


 「それにしても、凄い魔力だな」

 「あっ、ごめんね。ヴァンパイアって、人の血を吸って初めて一人前で、真の力を発揮できるんだって。私はまだ慣れてないから安定してなくて」

 「なるほどね」

 「化け物みたいで私のこと嫌いになった?」

 「そんな目で見るなよ。大好きに決まってるだろ」 ぎゅっと抱きしめ、リリーを安心させる。


 さて、そろそろベッドから降りて、リリーの話を聞かなきゃな。

 いつまでもくよくよしてられない。


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