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第七十四話

 でも、本当にそんな人の運命みたいなものを操作するような強制力みたいなものなんてあるのかな?

 木下君が言っていたように、私達、ゲームの登場人物が揃って学園に在籍していたり、シナリオに影響を受けてイベントと同じようなシチュエーションに遭遇したりとゲームからの影響を受けていたりするのかもしれない。

 けれども玲奈さんが成松君の一家をゲームとは全く別の運命に導いていたりと、その強制する力というのは弱いのかもしれない。私だってイベントは発生していたみたいだけれどもゲームに用意されていたような選択肢なんて選んだ覚えはないし。

 もしそうならば、たとえクリスマスパーティで私と玲奈さんで対決みたいなことが起こったとしても、ゲームの中みたいに玲奈さんが学園を追い出されたりするような結末以外も選べたりするのかもしれないね。


 「あの、華蓮お姉様」


 こちらがまたちょっと考え事をしちゃっていた間に那月ちゃんの方も何か考え事をしていたのか可愛らしく百面相をしていたのだけれども、意を決したのかこちらに真剣な表情を向けて呼びかけてきた。


 「華蓮お姉様は、その、・・・成松先輩とお付き合いをしているのですか?」


 紅茶を飲んでいるタイミングじゃなくて良かった。もし、紅茶を口に含んでいたとしたら吹き出すとまではいかなくても軽く咽ていたかもしれない。


 「いま、クラスではお二人がお付き合いをしているんじゃないかって噂でもちきりで、もし噂が本当なら華蓮お姉様と玲奈お姉様がケンカされてるんじゃって心配で」


 本気で心配そうな顔色をしているあたり噂のこと信じこんじゃったりしてるんだろうか。

 それにしても、あの噂は中等部のほうまで広まってるのか。一応、付き合っているのか?って疑問形になっているあたり、高等部よりは噂の伝達速度は遅いみたい。高等部ではもう、噂の中では私と成松君が付き合っていることは既定の事実になってしまっているみたいだからね。

 まあ、噂が伝わるのが遅いからと言って良いことなんて全くないんだけれども。むしろ、中等部にまで伝わっているのかって落ち込みそうだよ。

 でもまあ、とりあえずは那月ちゃんの誤解を解くというか安心させるのが先かな。


 「その噂は全くのデタラメだよ。私は成松君と付き合ってなんかいないし、そのつもりも無いし、それは成松君にしたって同じだと思うよ」


 「それは本当ですか!?」


 「うん、ほんとうに」


 「良かったあ、それでしたら華蓮お姉様と玲奈お姉様がケンカしたりなんてことも無いですね」


 「えっ、う、うん、そうだね」


 喧嘩になったりはしないだろうけれども、木下君の予想ではそれに近いというか似た様な状況にはなるかもしれない。でも、今それを正直にいったところで那月ちゃんを余計に心配させるだけだろうし、もしそんな状況になってしまったとしても私が本当の喧嘩にさせなければいいだけの話なのだしね。

 その辺りはまだ先の話だし今はこれでいいんじゃないかな。

 で、私としては中等部に伝わっているっていう噂のことも気になるんだよね。


 「那月ちゃん、その噂って中等部ではどういう風に広まっているの?」


 「どんな風に、ですか?・・・そうですね、華蓮お姉様のお名前と外部生ということと、成松先輩とお付き合いしているらしい、ってことでしょうか。成松先輩に憧れている子は多いですから、みんな熱心に噂していますよ?」


 「成松君と玲奈さんが婚約していることってみんな知っているんだよね?だったら、面白く思ってないんじゃない?婚約者が居る人に粉をかけるなんてとか、外部生がしゃしゃり出てとか」


 「? いいえ、そんなことないですよ?華蓮お姉様のことを見たことある子なんて、お似合いだって言っていましたよ?」


 あ、やっぱり中等部の噂でもそんな状態なんだね。

 不思議なことに噂の中身って、いわば私の略奪愛だとか寝取りだとかいう内容になると思うのだけれども、どうしてか噂をしている人たちや内容に私に対する否定的な感じがしないんだよね。

 ただでさえ、清鳳学園って内部生同士の結束が固いというか、外部生に対してやや排他的ともいう風潮があるというのに、内部生の中でも人気のある二人の婚約者同士のあいだにぽっと出の外部生である私が割り込んでいるという状態で、私に対しての悪感情が蔓延したとしても仕方のない筈なのに。

 まあ、嫌がらせがあるのだから反発は少なからずあるのだろうけれども、不思議なくらいにそれが表に出てこない。あるのは子供の悪戯の延長のような嫌がらせだけ、噂の中身からしたらもっと学園内が険悪な感じになったとしても、それを受け入れられるかは別にして納得はできるとは思うんだけれどね。

お読みいただき、ありがとうございます。

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