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第七十話

 一冊目をざっと付箋が付いているページだけを抜き出して読み終えたところで顔を上げて木下君を見る。


 「いろいろと聞きたいことはあるだろうが質問は全部読んだ後にしてくれ」


 「分かった、けれど一つだけ。・・・なんで挿絵付きなの?」


 そう、一冊目を大まかに読み進めただけだけれども、それでも随所に絵が挿しこまれていて正に本人が言っていたように設定資料集や攻略本の様相を呈していた。

 流石にカラーまではついてはいないし荒い線描だけのラフ画だったけれども、原画担当本人の直筆のラフ画というのは通常のゲーム画面を張り付けただけのような挿絵よりはよっぽどか価値があるんじゃなかろうか。


 「絵があった方が俺が思い出しやすかっただけだ。いらんところを気にしてないでさっさと全部読んでしまえ」


 そうは言うけれども、こちとらその原画に惚れこんでパケ買いの衝動に負けた人間なのだからその絵が一番重要なのよ。

 まあ、これ以上グダグダしていても怒られてしまうだけだろうし読み進めていこう。まだ読んでいない先も気になるし。

 書いてある内容としては設定の部分については説明書に書いてあったようなあらすじや舞台設定などをパワーアップさせてより詳しく書かれたもの、共通ルートや個別ルートについてはイベントのおおまかな話の流れと選択肢、選んだ選択による好感度のポイント増減などなど、あとラフ画、これ大事。

 普通に読み物として見ても面白いと思える。設定資料集とか好きな人は特に。プレイ済みの人ならゲーム内容への造詣が深くなるというか考察が捗るだろうし、私みたいに未プレイの人でもざっくりとプレイした気になれると思う。本来ならネタバレ注意というところだろうけれど、もう「キュンパラ」をプレイすることは出来ないのだろうし気にする必要は無いんだろうね。

 正直、全部読んでみたいのだけれども、というか欲しいです。貸してってお願いしたら貸してくれないかな?あとでダメ元でもお願いしてみようか。


 「それにしても、よくこれだけの内容を覚えていられたね?」


 ストーリーなんかはホントにざっくりと要約して書かれてはいるけれど、それでも六冊合わせればかなりの分量になる。未プレイの私にはその中身が間違っているのかは判定できないけれども、それでも記憶を頼りにこれだけの量を書き出せるのってかなり凄いと思う。


 「テストプレイだデバッグだで散々と、それこそ何十週とやらされたからな。今はもうそれほどでは無いが、転生直後は丸暗記レベルだったな」


 「こんな詳細に書き出す必要ってあったのかな、自分のルートだけでもよかったんじゃない?」


 「どこでどんな風に関わってくるか予想できなかったからな。判断の材料は多ければ多いほどいい。現にお前の現状を説明するのに役立っているだろう──そろそろ本題に戻るぞ、一通り目を通してみてどうだ?」


 「えっと、私が清鳳学園に入学してから遭遇した出来事、攻略対象だった人たちとの間の出来事はゲームの・・・『キュンパラ』のイベント、だった?」


 ノートに書かれていた内容はどこかで見覚え・・・というか身に覚えのあるものだらけだったりした。

 出会いイベントから始まって日常イベントやデートイベントなどなど。

 もちろん、全ての内容が一致するわけじゃない。日時にズレがあるものもあるし、シチュエーションは合っているけれど中身は殆ど違うものもあったり、逆にノートの記述と殆ど差異の無いものもあったり。

 殆ど違いの無いものは出会いイベント(稔君除く)とかあとは智也くんとのイベントについては私が覚えている限り那月ちゃんが登場しない分についてはノートに書かれているような内容と殆ど違いは無かったように思う。

 逆に中身が全く違うイベントはというと例としては成松君と図書館で一緒に勉強した日のことだったりかな。

 ノートに書かれていたことによるとゲームの中ではあれはデートイベントに分類されているらしい。

 試験勉強を一緒にしようって話になって、待ち合わせをして連れ立って図書館に。その後の大まかな流れは大体一緒だけれども、もちろん中身は全然違う。デートイベントと銘打つだけあってゲームの中での展開は甘々なものになるらしい。

 でも実際のところ私にも成松君にしたってあの日の出来事をデートだという認識はどちらにも無いだろう。そもそも、私はあの日はエアコンが壊れていなかったら図書館に行きもしなかっただろうし。

 で、それらがどういうことかって言うと──


 「まあ、そうだな。話の中身は違うだろうがシチュエーションを照らしていくのなら順調にイベントをこなしているといえるだろうな。それを踏まえて、薄々わかっているだろうと思うがお前は今、成松のルートを進めていることになっている」


 ──ということらしい。

お読みいただき、ありがとうございます。

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