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第六十五話

 あの日、私の下足箱から上履きが隠され──隠されたというより移動させられた?──てから私への嫌がらせが展開されるようになった。ただまあ、嫌がらせと言っても私への直接的な危害を加えられるようなこともなく、その程度も子供のちょっとした悪戯のような苦笑を浮かべる程度で済むようなお行儀のよいものばかりだった。とはいえ、嫌がらせは嫌がらせで、いくら程度が軽いと言ってもいい気分でいられるほど私の神経は図太くは無かったみたい。


 「集中できないのなら今日はもう帰ったらどうだ?」


 美術部の活動に参加中、隣に座る人物からの呆れたように放たれた言葉が刺さる。 出来るだけ心情を表に出さない様に気を付けていたつもりだったのだけれども、ただの「つもり」だっただけで簡単に見通せるようなものだったみたいだ。無意識にため息でも漏れ出ていたのかもしれない。

 

 「あっと、ごめん。気を付けるよ」


 「俺に謝るようなことじゃないし責めているわけでもない。だが、そんな気の抜けた様子で活動したところでいい作品は生まれないし身に成るものも無い。今日はいいが、日によっては危険だってありうる。だったら初めから参加しない方がマシだ」


 本人が言うように言葉面は厳しいものの、その声音にはこちらを責めるような色は無い。でも、逆にそれが突き放されているようでつらいって感じてしまうのは多分に今の心理状態が影響しているんだろう。

 ただ、言われたことは本当に注意しないといけないと思う。美術部の活動は基本的には座っていて、大きく動くようなことはないのだけれども、それでも危険と全くの無縁というわけにはいかない。刃物を扱うことだってあるし、時には換気が必要な薬剤を使うことだってある。そんな時にさっきまでのような精神状態でいたらどんな事故を引き起こすかなんて容易に想像がつく。


 「大方、噂のことを気にしているんだろうが、ああいうものは気にしたところで無駄だ」


 「木下君も噂のこと知っていたんだ・・・」


 「あれだけ騒がれていればな、聞く気が無かろうといやでも耳に入ってくる」


 他人の噂なんて微塵も興味無さそうな木下君でも知ってるなんて一年生の間で相当に浸透しているんだろうな。噂を聞いた時、木下君はどう思ったのかな・・・噂のこと本当だとおもってるのか、嘘だとおもってるのかどっちだろう?・・・できれば木下君には噂のことは知らないままで居て欲しかったかな。

 でも、噂のことは知っていたけれど嫌がらせのことは知らないみたいだね。まあ、昇降口での件をはじめ、嫌がらせとも言えないような嫌がらせの数々は目撃者も殆どいないし話題に上がるようなこともないしね。昇降口の件で言えば知っているのは私と由美と、あとは犯人くらいかな。上履きを見た人は他にもいるだろうけれど、あれが私の上履きだと知っているのはそれくらいだろうね。

 犯人も今のところ誰が、というのは全く分からない。一人が全部やっているのか、複数人がそれぞれ別々にやっているのか。噂が発端なんだと私は思っているのだけれども、それすら本当のことなのかは分からない。もしかしたら全然別のところで何か恨みのようなものを持たれているのかもしれない。


 「もしかして噂だけではないのか?」


 ピクリと片眉を上げて問われた言葉にドキリとする。・・・もう一度言うけれど、本当に・・・ホンットウに!悟られない様にしていたつもりなんだけれどもなあ。ポーカーフェイスが出来るなんて自惚れるつもりはないけれども、分かりやすすぎかもしれないよ、私よ。

 

 「えっと、うん。実は・・・」


 今回のことに全然関りの無い木下君を巻き込みたくなくて──噂のことを知られたくなくて──事情を話したり相談したりするつもりは無かったのだけれども、いろいろと見透かされちゃっているのなら仕方ないよね。なんて、自分に言い訳をしてこれまでのことを説明した。もちろん、噂にあるような事実は無いことも含めて。

 噂のことはともかく、嫌がらせの方は今のところ誰かに相談したりするつもりは無かった。まだ被害らしい被害を受けているわけでもないし、それなのに誰かを巻き込んで、ことを大きくして騒ぎ立てたりするのはどうだろうかと思ったから。私が大騒ぎをすればするほど嫌がらせを仕掛けてきた相手を喜ばせるだけだとも思った。それでも、不安なものは不安で、正直誰かに頼りたくてしょうがなかった。

 

 「それらが起こったのは何時ごろからだ?」


 「え?えっと、噂の方は私はよく分からなくって、学園祭から一週間くらい・・・かな?嫌がらせの方は・・・」


 一通りの事情の説明をしたところで木下君が聞いてきたのは噂と嫌がらせの発生時期で、何か気になることでもあるのかな?

お読みいただき、ありがとうございます。

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