第七話
「改変・・・ですか?・・・まさか、洗脳!?」
「せ、洗脳!?違う!違うわよ!?ああ、もう、怖いこと言わないでよね!?」
こちらの言葉に手をわたわたとさせて慌てる玲奈さん。いやー、美人さんが慌てる姿ってなんか妙に可愛いんだよね。
いや、まぁ、違うだろうなぁってのは分かってはいましたけれどもね。なんだか、言わずにはいられませんでしたよ、はい。
登場キャラクターの性格がゲームと違うからこの世界はゲームの世界ではない。ってことなのかな?でも、そんなのは私や玲奈さんに「中の人」が居る時点で同じことだよね?
「改変ってのはシナリオの方ね、で、勝彰の性格がゲームと違うのがその成果の一つってこと。ゲームやってれば判るんだけどね、アイツのゲームでの性格って幼少期に起きる家庭の問題に大きく影響されてるんだけど、私が─私とアイツがそれを未然に防いだ結果、ゲームとは違った性格に育った訳ね」
「あ、どんな問題だったかは言わないわよ、酷くプライベートなことだし、こっちでは起きなかった出来事だしね。逆に貴女がゲームをプレイしてたらその事を口にしないように釘を刺さないといけなかったから手間が省けたわね。どうしても気になるようだったら勝彰を攻略して直接聞いて頂戴」
「まぁ、勝彰の性格については副産物というかおまけみたいなもので、大事なのはその出来事の方でね。勝彰のルートでかなり大事なポイントを占めるフラグになってるわけよ。超大雑把に説明すると、ずーっとその出来事のことを引きずってた勝彰のことを貴女って言うかヒロインが寄り添ったり励ましたり、叱ったりしながら決着へと直走るの。で、その間になんやかんやあって勝彰と仲を深めてエンディングってシナリオなんだけど」
「玲奈さんが未然に解決しちゃったからフラグどころか成松君のルート自体がシナリオとして成立していない、と」
それは確かにこの世界がゲームとは違うという証明になるね。
「そういうこと、宇都宮玲奈という一登場人物の行動によってシナリオに変更が効くのなら、少なくともこの世界は「キュンパラ」そのものではないわ。それでもまだゲームだと言い張るのならジャンルはフリーシナリオのオンラインゲームね。でもそんなもの当事者にとったら現実と変わらないじゃない?」
フリーシナリオのオンラインか、登場人物全てにプレイヤーが居て選択肢を持っていて、各自が選んだ行動が複雑に絡み合ってシナリオやエンディングが形作られていってって、そんなのはもう現実そのものだもんね。主人公以外の選択肢によってシナリオが変わっていくのなら、それは乙女ゲームというソロ専用のゲームとは別物だよね。
それなら、シナリオによる強制力とか復元力とかそういう不思議パワーでイベントに巻き込まれてゴタゴタすることも無いってことだよね?ね?
やったね!私!これで懸念は消えて大手を振って学園生活を満喫できるってもんよ。
こんな良い情報を教えてくれた玲奈さんには感謝という言葉しかないね、うん。
出来ればこれからお近づきになりたいね、美人さんだし、気さくな感じだし、同じ転生者という誼もあるし。
あれ?そういえば、玲奈さんは如何して私が転生者だっていうことが分かったんだろう?私、別に不審な行動は取ってなかった、よね?
それに、接触を避けようとしてた私を突き飛ばしたのも玲奈さんなんだよね?私のこと転生者かもって疑ってて話しかける切っ掛けを作りたかった?それだけなら、あんな乱暴な方法は取らなくても良い筈だし。
「・・・玲奈さんはどうして私が転生者だって分かったんですか?」
「さあ?貴女から返答があるまで確証なんて無かったわよ?」
「え?でも私に転生者かどうか、私のこと転生者だって判断出来てないのに自分のこと転生者だってバラすようなリスクの高いことしたんですか?」
「私が聞いたのは『キュンパラ』を知ってるかってだけじゃない、知らないなら知らないでそこで終わる話だもの、白を切られるとしても『キュンパラ』の事を知ってる人に私のことが転生者だって知られても不都合なことなんて無いもの。」
・・・そういえば、そうだね。「キュンパラ」のこと知らない人なら知らないって言われるだけだし、知ってる人でも、知ってるって答えるにしても白を切るにしても「私は転生者ですよ、貴方はどうですか?」って意図は伝えることが出来る。白を切られた場合は一方的に転生者だって知られてしまうけれども、そのことを隠す気が無ければデメリットでも何でもないのか。
「貴女─華蓮のこと転生者かどうか疑っていたかっていう話なら最初から疑っていたわね。他のキャラクターはともかく森山華蓮だけは転生者じゃないかって思ってたわ。じゃなかったら、あんな行動は取らなかったわよ」
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