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閑話8

 この世界はゲームの影響を受けている。

 いえ、この世界はゲームの世界()()()()だ。

 一度はソレを否定した、それは何故?

 私自身の行動で証明したからだ。シナリオの前提となる設定を自身の選択・・行動・・で覆したからだ。私のエゴによる選択は一つの家族の不和を防ぎ、私の疑念を払拭した。

 私だけでは無い。伝手を使い、専門の人間による調査の結果からもその確信を強く、固いものにした。

 私以外にも複数の私と同じような境遇にさらされた存在、その存在の意志によるものかただの偶然か、ただ──多寡に関わらず──その存在の影響があるのは間違いない。

 ある少女の性質によりライバルになる筈の少女はライバルとはなり得なくなり、ある少年の選択によりライバルとなる予定だった人物との接点は無くなり、死ぬはずであった女性は死なず攻略対象が攻略の対象とならず、ある少女は生まれから既にゲームとはかけ離れた存在として生まれてきた。

 ここまでゲームのシナリオとかけ離れてしまえば残るは舞台設定程度にしか面影もなく、ここまで条件が揃ってなおこの世界がゲームの中の世界だと主張するのなら、それは何も考えることをしない(できない)人間か余程に自己の都合を優先する人間くらいなものだろう。

 ずっと、そう思っていた。自身の選択による結果を得てからシナリオが開始されるとされていた日まで、彼女に出会うその日まで。



 入試の直前までやらせていた調査の結果では「転生者」の可能性は低いと判断していたので彼女と会った時に彼女がそうであることには驚いたが、「恋愛ゲームの主人公」に転生してきた人物像の想定と違い彼女が適度な良識と常識を持っていることには警戒が強かった分、安心させられた。

 彼女自身はこの世界のモデルとなったゲームのことを存在は知っているが未プレイのため中身までは知らないと言う。特にウソを言っているようには見えなかったし、疑ったところで意味のないことなので本当なのだろうとすることにした。

 この世界がゲームに似た世界であっても違う世界であること、その根拠となる出来事を説明すればすんなりと信じたようだった。



 疑念を持ったのはいつ頃からだろうか・・・。つい最近になってからのような気もするが、最初の頃から漠然と抱えていたのかもしれない。

 初対面の際に連絡先を交換し、相談を受けたりただの雑談だったりと頻繁に連絡をとり合うようになって、それとなく彼女の周辺にあった出来事に水を向けて聞きだしてみたりもしていた。

 最初の内はただの好奇心によるものだった。もしこの世界がゲームのものであったのなら主人公であった彼女は様々なイベントに遭遇したことだろう。ならゲームの世界では無いこの世界で彼女の学園生活はどんなものになるのだろうかと。ゲームの主人公という称号に恥じないトラブル体質を背負ってゆくのか、それともただただ一般の学園生として埋没した日常を送ってゆくのか、どちらにしても日常の退屈を紛らわすよいアクセントとなるだろうと期待していただけに過ぎない。

 いつ頃からだろうか、ふと思うようになった。「彼女はイベントに遭遇しすぎている」。もし、彼女にゲーム内容の知識があったのなら意図的に起こしている、遭遇するようにしていると勘ぐってしまうほどに。流石にゲームのイベントそのもの、という訳ではないがそれはあのイベントだったのでは?と思うような出来事をよく聞くようになった。

 ゲームの中身は知らないと言ったあの言葉はウソだったのだろうかと疑いもしたが、日常に起きた出来事として電話越しに話す彼女にそれがゲームのイベントだという認識は無いように感じた。あれらが彼女の演技だとしたら私から見破ることは出来ないだろうと思う。

 


 攻略対象となっていた四人と順調に出会いゲーム内のイベントとしか思えないような出来事に遭遇してゆく──最後の一人とも出会ってはいるが既に妻帯者となっている彼との間にイベントは起きていないようだ──彼女を見ているとこの世界がゲームとは違う世界なのだろうかと疑念が湧いてくる。

 いっその事、彼女にゲーム知識があり、彼らの内の誰かを攻略するために意図的にイベントに似た出来事を起こしてくれていた方がどんなに良かっただろうか。

 だが、私から見る限り彼女にゲーム内の知識など無く、彼女の意志とは関係なくイベントは起きている。彼女とそれをとりまく日常はまさに「キュンパラ」というゲームを傍から見ているようだった。

 こうなれば確信は崩れ、疑念は新たな確信に成り代わっていく。

 「キュンパラ」に逆ハーレムルートは存在しないがルートが確定するまでは同時攻略は可能だ。ゲームの通りに進行するとしたのなら今のところ順調にフラグを回収している彼女は最終的に二人の内どちらかのルートに入るのだろう。もう一人とも仲良くなっているようだが夏休みでの反応を見るにそのルートに入るにはフラグが足りていないようだった。

 出会ってすぐの頃、彼女が語っていたことを考えるに彼のルートに入るのだろうと思う。そうなれば遠くない時期に私と彼女は対決することになる。

 ・・・そして私は敗れることになるだろう、彼の幸せの為に。

お読みいただき、ありがとうございます。

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