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閑話7

那月視点でプールからの帰りの話です。


 「─当に────った──すか?先に──くへお送り───ても」


 「は─、流石にこ─体──ら動──ら起こしちゃ───ですし。二人ともとても元気に動き回ってましたし疲れたんですね、よく寝ていますし起こしちゃったら可哀想ですから。あ、でも田辺さんには申し訳ないですね、二度手間になってしまいますし」


 「ああ、いえ。私の事はお気になさらずとも、これが私の務めですので。それに、お坊ちゃまとお嬢様がお世話にっているご友人をお送りすることは手間などではありませんよ」


 ふと、話し声に微睡みに沈んでいた意識が浮上してきた感覚を覚えました。ぼんやりとした意識では分かりにくいですがこの声は運転手の田辺さんと・・・華蓮お姉様?

 少しだけはっきりとしてきたことで思い出しました。今日は私と智也と華蓮お姉様と玲奈お姉様の四人でプールで遊んで──結局、玲奈お姉様はプールサイドから動きませんでしたけど──、車で華蓮お姉様のお家までお送りする途中で寝ちゃったみたいですね。

 今日は華蓮お姉様がプール遊びに応じてくださったことが嬉しくていつもよりもはしゃいでしまった自覚はありますが、それでもお姉様をご自宅までお送りする途中で寝てしまうなんて不覚です。

 意識は大分はっきりとしてきましたが疲れからでしょうか、体の方はまだ起きれていないのか動けなさそうですね。横倒しに寝ていたみたいですけど、頭の側面に感じる車のシートとは違う感触はもしかしてお姉様が膝枕をしてくださっているのでしょうか。

 それと、二人の会話から察するに今は行先を変更して先に私たちの自宅へと向かっている所でしょうか。

 本当なら起きたことを伝えるべきなんでしょうけど、頭を優しく撫でてくれるお姉様の手が髪の毛の間を梳いてゆく感覚が温かくて、なんだかまた意識がフワフワとしてきました。



 次にまた起きた時にはもう直ぐに家に着くというところでした。

 結局、家に着いた今でも頬に受けるお姉様のももの柔らかさや頭を撫でてくださる手から離れがたくて起きたことを伝える機会の逃し続けて眠ったフリを続けてしまっています。

 自宅に着いても智也の方はまだ本当に眠り続けているみたいで田辺さんに抱えられて家の中にすぐ連れて行ってもらっていました。

 私の方はというと本当はもう起きているのですが、結局眠ったフリをやめるタイミングがつかめずに今はお父さんに抱えられています。

 

 「今日は二人の相手をしてくれてありがとう。どうかな、二人は迷惑をかけていないかい?今日も急な招待だったみたいだし」


 「あ、いえ。予定もなく何をしようかと迷っていたところでしたので、迷惑だなんてとんでもありません。それに二人とも可愛らしくて智也くんや那月ちゃんと遊んでいると弟や妹が出来たみたいで嬉しんです。私、一人っ子ですので兄弟に憧れていましたので」


 田辺さんが戻ってくるまで挨拶がしたいとのことでお父さんはすぐには家の中に戻らずにお姉様とお話をするみたいです。

 華蓮お姉様が私の事を妹のようだと言ってくれてとても嬉しいです、私だけの一方通行じゃないんだなって思えます。でも、智也の方はどうでしょうか、もしかしたら弟だと思われることに不満を覚えるかもしれないですね。


 「そういえば森山さんは今年から学園に入学したんだって?今日も一緒のようだったみたいだし宇都宮の御嬢さんとは親しいのかい?」


 「え?あっと、はい、そうですね。ちょっとした縁がありまして、同じクラスでもありますので親しくしてもらっている方ではないかと」


 少しの間当たり障りのない世間話を挟んでお父さんが急に声音を真剣なものに変えました。でも、どうしてここで玲奈お姉様のことが出てくるのでしょうか、お父さんの意図がわかりません。


 「不躾で申し訳ないね。ただ・・・そうだな、那月の事情については話を聞いているかい?」


 「えっと・・・それは那月ちゃんが生まれる前のことについての?・・・でしたら、那月ちゃん本人から少し」


 「そうか・・・なら、唐突で申し訳ないんだがそのことは以降、話題にしないようにしてもらえないだろうか。それと、そのことを君の方からも宇都宮の御嬢さんにも伝えてほしい、私からもお願いしたことがあるのだが彼女は私とは意見が違うみたいで聞き届けてはくれなかったが、友人からの言葉なら聞いてくれるかもしれないからね」


 それからすぐに田辺さんが戻ってきたのでお姉様をご自宅まで送ってもらい、私たちは車を見送ったあとに家の中に戻りました。

 

 「なんで華蓮お姉様にあんなことを言ったんですか、お姉様びっくりしてたじゃないですか」


 「おや、起きてたのかい?狸寝入りで盗み聞きとはレディのすることじゃないよ」


 頬を膨らませて怒りを表しているのにこの態度です、お父さんの言葉に反応してつかまっている手にぎゅっと力が入ったりしてましたので絶対に気付いていた筈なのに白々しいことこの上なしです。


 「彼女は外部生なのだろう?学園内の事情には詳しくないみたいだし、彼女自身内心ではどう思っているかは分からない、全く宇都宮のお嬢様にも困ったものだね、あまり軽はずみなことはしてほしくないんだけどね」


 「玲奈お姉様のことを悪く言わないでください!それに華蓮お姉様は他の人とは違います!だって、華蓮お姉様は・・・」


 「失礼な物言いだったことは分かっているよ、ただ親として私はこれ以上、那月に傷ついてほしくはないんだよ」


 「お父さんが私のことを想ってくれていることは分かっています。でも、だからといってお姉様たちのことを悪く言うのは許せません」


 お父さんの気持ちは嬉しいです。でも、お姉様たちの事を悪く言ったお父さんのことは嫌いです、許してあげません、三日間は口をきいてあげません。

お読みいただき、ありがとうございます。

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